訪米した呉外交部長や顧国家安全会議秘書長が米国政府高官と安全保障会談

 2月21日、訪米した台湾の呉[金リ]燮・外交部長や顧立雄・国家安全会議秘書長らが米国在台湾協会ワシントン総本部において、ウェンディ・シャーマン国務副長官やカート・キャンベルインド太平洋事務協調官など政府高官と安全保障問題について会談したという。会談は非公開で行われ、7時間にも及んだと報じられている。

 会談には、米国側は、ホワイトハウスからジョン・ファイナー主席副国家安全保障顧問、国家安全保障会議のローラ・ローゼンバーガー上級部長、ラッシュ・ドーシ中国担当、国務省からダニエル・クリテンブリンク東アジア・太平洋担当国務次官補、リック・ウォーターズ次官補代理、国防総省からイーライ・ラトナー次官補(インド太平洋の安全保障問題担当)やマイケル・チェイス次官補代理、そして米国在台湾協会台北事務所のサンドラ・オウドカーク所長が参加したという。錚々たる顔触れだ。

 台湾の外交部長がワシントン入りしたのは1979年の米台断交後初のことで、これは2018年3月に米国が制定した「台湾旅行法」で米台双方の政府高官による対面を認めた成果だと言ってよい。

 先般2月17日に英国の「フィナンシャル・タイムズ」はマイケル・チェイス国防次官補代理(中国担当)の訪台を伝えたが、そのチェイス国防次官補代理も会談に加わっていることもさることながら、シャーマン国務副長官、キャンベルインド太平洋事務協調官と安全保障について政府間対話を実施したことには注目せざるを得ない。

 米国と台湾はこれまで安全保障関係の対話としてモントレー対話や米台国防再検討対話など、4つのレベルで対話チャンネルを持っていた。モントレー対話は、米国は国防次官補、台湾は国家安全会議副秘書長による実務級最高レベルの会談だった。

 しかし今回は、国務副長官と外交部長、国家安全保障担当大統領副補佐官も兼任するインド太平洋調整官と国家安全会議秘書長という組み合わせで、格段にクラスを上げた画期的な安全保障の政府間対話とした。米台関係の深化を思わざるを得ない。

 翻って、我が日本はようやく与党間による外交・防衛の2+2が対面で開催できるようになった段階であり、政府間対話が実現するにはまだ時間がかかりそうだ。今回の米台安全保障対話は中国による台湾侵攻が近づいていることを暗に示しているのなら、日本も台湾との政府間対話の実施に向け、本気で取り組むべき時期にきたのかもしれない。

 台湾国際放送が詳しく報道しているので下記にご紹介したい。

—————————————————————————————–台米国安会7時間に及ぶ会談、国務副長官らが出席【台湾国際放送:2023年2月22日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/96630

 外交部の呉[金リ]燮・部長と国家安全会議の顧立雄・秘書長はアメリカ現地時間の21日、アメリカの対台湾窓口機関、アメリカ在台協会(AIT)ワシントン総本部で、アメリカのウェンディ・シャーマン(Wendy Sherman)国務副長官、ホワイトハウスのカート・キャンベル(Kurt Campbell)インド太平洋事務協調官らと国家安全保障問題について会談を行いました。

 呉・部長と顧・秘書長は、21日午前9時30分に蕭美琴・駐米代表の案内で、バージニア州にあるAITワシントン総本部に到着し、アメリカの政府関係者と非公開の会談を行いました。

 キャンベル氏とは午後1時に、シャーマン氏とは午後1時30分にそれぞれ会談を行いました。

 なおイギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズは、アメリカ側の会談相手は、ホワイトハウスのジョン・ファイナー(Jon Finer)主席副国家安全保障顧問と、シャーマン氏であると報じています。

 会談は7時間に及び、午後5時に終了しましたが、双方ともに会談の内容は公の場では発表していませんが、呉・部長と顧・秘書長は会場を離れる際、メディアに手を振り、上機嫌な様子だったとのことです。

 フィナンシャル・タイムズは、このような会談はアメリカと台湾間における特殊な外交対話の一環で「特別なラインである」と、中国を刺激しないよう報じています。

 なお、会談にはアメリカ側からは、国務院のダニエル・クリテンブリンク(Daniel Kritenbrink)東アジア・太平洋担当国務次官補、リック・ウォーターズ(Rick Waters)国務次官補代理、国防部インド太平洋の安全保障問題担当のイーライ・ラトナー(Ely Ratner)次官補、以前、台湾訪問が噂されたマイケル・チェイス(Michael Chase)副次官補、AIT会長就任が噂されている、ホワイトハウス国家安全保障会議のローラ・ローゼンバーガー(Laura Rosenberger)上級部長、ラッシュ・ドーシ(Rush Doshi)中国担当、そしてAIT台北弁事処のサンドラ・オウドカーク(Sandra Oudkirk)処長らが参加しました。

(編集:中野理絵/岩口敬子/王淑卿)

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