【読売新聞:2021年9月25日】
台湾が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を申請した。参加国はルールに適合するかどうかで、加入の是非を検討する必要がある。
台湾は、日本にとって輸出と輸入が4番目に多い国・地域で、経済関係が密接だ。
TPPへの加盟を求めた台湾について、茂木外相は「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有している。極めて重要なパートナーだ」と述べ、歓迎の意向を表明した。
台湾は、世界的に不足している半導体の一大製造拠点で、世界のサプライチェーン(供給網)の中で存在感が高まっている。TPPに加わる意義は大きい。
日豪など11か国が参加するTPPは、関税を100%近く撤廃し、知的財産権の保護や自由なデータ流通などで高いレベルの自由化ルールを定めている。台湾も、加入するためには、これらをすべて受け入れることが前提となる。
台湾に先立ち加盟を申請した中国は、中台が一つの国に属するという「一つの中国」原則を理由に台湾の申請に反発している。
ただ、TPPは対象を国に限定しておらず、独立した関税制度や通商ルールを持つ地域も含めている。台湾は世界貿易機関(WTO)に加盟し、シンガポールなどとの自由貿易協定も締結済みだ。
日本政府は今回、「一つの中国」を唱える中国の立場を「十分理解し、尊重する」とした1972年の日中共同声明を踏まえつつ、台湾の参加は可能だとの認識を示している。中国側の主張は、多くの国の理解は得られまい。
中国は、自らが加盟基準をクリアすることが先決であり、TPP参加国に台湾加入への反対を働きかける行為は慎むべきだ。自由貿易の枠組みに中台の政治的対立を持ち込み、加盟国を分断するような行動は避けねばならない。
加入は全参加国の承認が条件となる。今年のTPP議長国の日本は、ルールに基づく論議が行われるよう、指導力を発揮してもらいたい。まずは、先に始めた英国との加盟交渉に注力してほしい。
TPPは、もともと米国が主導し、高水準の貿易ルールを作った上で、中国にそれに沿った行動を促すための枠組みだった。米国が離脱したまま、中国が地域での影響力を高めていくことは、米国としても望ましくないはずだ。
中台の参加申請は、バイデン政権に再考を求める絶好の機会となる。日本が、米国への復帰の働きかけを強めることが重要だ。
※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。