台湾の行政院主計総処が3月22日に発表したところによると、2月の失業率は3.72%で、日本の2.5%やドイツの3.2%よりは高いものの、フランスの8.8%やカナダの5.8%、韓国の4.4%、イギリスの4.0%、米国の3.8%より低い。また、どの国でも若者の失業率は高く、台湾も20歳から24?にいたる失業率は11.94%と高い。
ただ、これまでは働き先を中国に求める台湾の若者たちだったが、最近は台湾企業と同じように東南アジアに向かう傾向が顕著になってきているという。
では、どれくらいの台湾企業が中国離れして台湾回帰に向かっているか、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ:Japan External Trade Organization)が発行する「ビジネス短信」は台湾の経済紙「経済日報」を引用し、4月末までに50社、投資額は1,000億台湾元(約3,600億円)になる見込みだと伝えている。
中国の台湾への様々な圧力が強まる現在、台湾人の84%が92年合意による主権剥奪を拒否するという意思表示をしている。
今後、台湾の企業や人材の中国離れは加速するものと思われ、ジェトロのビジネス短信は台湾回帰企業の業種も挙げているので下記に紹介したい。
—————————————————————————————–中国進出の台湾企業、50社が台湾回帰へ【日本貿易振興機構(ジェトロ)「ビジネス短信」:2019年4月19日】
台湾の行政院(内閣に相当)の蘇貞昌院長は、2019年1月から実施されている「歓迎台商回台投資行動方案」(中国大陸で事業を行う台湾企業の台湾への回帰投資を促進するアクションプログラム、以下プログラム)の実施状況について、既に24社が審査を通過しており、4月末には30社となる見通しを示した。条件を満たせば、台湾域内の投資で優遇を受けられるプログラムで、今後、企業数は50社に達し、台湾における投資額は1,000億台湾元(約3,600億円、1台湾元=約3.6円)、1万1,000の就業機会創出が見込まれる。台湾の経済紙、「経済日報」が4月10日付で伝えた。
◆中国大陸の経営環境変化に加え、米中貿易摩擦が後押し
また本プログラムに関連し、経済部の王美花政務次長は3月25日の立法院(国会に相当)経済委員会において、中国大陸内では人材コストの上昇や環境保護に関する要求の高まりなど経営環境が変化しているのに加えて、米中貿易摩擦の影響で、台湾企業はグローバル戦略の見直しを迫られており、その中で台湾への回帰に至っている、とした。台湾回帰企業の業種としては、電子産業、具体的にはネットワーク通信設備、サーバー、コンピュータ周辺機器などが最も多く、次いで、機械設備、自転車、自動車部品などが続くとし、サーバー・ネットワーク設備や自転車の産業チェーンに関連する企業は、台湾回帰の傾向があるとしている。
本プログラムは、2019年1月1日から2021年12月31日まで実施される予定だ。政策支援を受けるためには、「米中貿易摩擦の影響を受けている」「中国大陸に投資して2年以上経過している」「台湾へ回帰し投資また拡張する工場生産ラインはスマート技術を有する」の3条件を満たし、(1)重点7産業のイノベーション領域に属する、(2)高付加価値製品および中核部品関連産業に属する、(3)国際サプライチェーンの中核の地位にある、(4)自社ブランドの国際展開を行う、(5)台湾で投資する認定プロジェクトが国家重要産業政策と関係する、のいずれか1つを満たす必要がある。
支援分野は、土地、人材、融資、水力・電力供給、税務の5分野で、支援の申請後、2週間以内に審査が終わるスピード感に特徴がある。
融資面では、本プログラムを受けて、台湾の各銀行が融資優遇プランを実行している。台湾銀行が2019年3月1日から、総額1,000億台湾元、融資率最高8割、融資期間最長20年(通常の工場建設融資は10〜15年)、当初3年間の最低利率を1.49%からとする優遇策を打ち出したほか、兆豊銀行、陽信銀行、華南銀行なども融資総額200億台湾元の融資優遇プランをそれぞれ実行している。
(渕田裕介)