ジョージ・ブロンソン リー 著、田中秀雄訳
以下は本書の前書きより
G・B・リーは、「これだけは無視できない人権、自治、民族自決、人類の進歩という、根本的な原則と価値に基づいて満洲国は堂々と建国されている」と述べている。これを絶対認めなかったのが中国の中華思想である。スティムソンに代表されるアメリカはこの中華思想が理解できず、九か国条約で強い中国が出来上がれば、アメリカの利益になると単純に思っている。しかし統一された強い中国はアメリカの思う通りにはならない。G・B・リーは言う。
「中国がより強くなり、一人の軍事独裁者の下でますます影響力をもつことになったとき、あらゆる外国を心中では属国と見なす外交形式に戻らないという保証はどこにもない」(第一章)
この通りであった。この中華思想の下にチベット、ウイグル、内蒙古、満洲族は呻吟しているのが現状だ。民主国台湾もまた軍事的に解放するつもりであると宣言している。香港を統治していたイギリスは一九五〇年代から何度も普通選挙を実施しようとしたという。しかし中国の強い反対圧力で、実現できなかった。民主的香港、台湾を絶対認めない姿勢は、民主国家満洲国を認めなかった戦前の中国と同じ構図である。
私はこのG・B・リーの本を、中華思想との熾烈な戦いの最前線にいる現代の台湾、香港の若者たちに読んでもらいたいと思う。この本は極めて現代的な予言の書なのであり、満洲国は中国の民主化の最初の試みとして理解されるべきなのである。
田中秀雄
「G・B・リー」とは、著者のジョージ・ブロンソン・リーの省略形。