【編集長の一言】だから台湾人に嫌われるのだ。
2014.12.8 産経新聞
【北京=矢板明夫】退役後も中国人民解放軍内で大きな影響力を持つ長老、劉精松大将(81)が北京市内で開かれたシンポジウムで「必要があれば、軍事手段で台湾問題を解決することも選択肢だ」と発言したことが波紋を広げている。近年、中国の当局関係者が台湾問題で「武力」という言葉を使うことは極めて異例だ。11月末に行われた統一地方選挙で野党、民主進歩党が圧勝した台湾の“中国離れ”を牽制(けんせい)する思惑があるとみられる。
劉大将は6日、中国共産党の機関紙、人民日報傘下の環球時報が主催するシンポジウムで基調講演を行った。この際「台湾問題は私たちの核心的利益であり早く解決すべきだ」と指摘した上で、ベトナムも領有権を主張する南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島を例に挙げ、「もしも1970年代に(武力で)回収しなかったら、今ごろは私たちのものではなかっただろう」と述べ、武力行使の必要性を強調した。
劉大将は、軍の最高学術機関である軍事科学院院長を務めた軍内の重鎮。退役後も多くの政府、軍系組織に名を連ね、習近平国家主席の周辺とも深い関係があるとされる。
共産党関係者は、「党組織の管理下にある中国要人は“失言”するはずはない。指導部の意向を代弁しているのだろう」と指摘した。
中国の対台湾政策について、毛沢東時代のスローガンは「武力で解放する」だったが、78年に改革開放が始まってから経済交流が始まり、中国の指導者は「平和統一」をよく口にするようになった。
2008年、台湾で馬英九政権が発足すると中台関係はさらに緊密化し、胡錦濤時代の中国当局者は「統一」より「平和発展」を強調した。
しかし、12年11月に習指導部が発足してから、中国の台湾に対する態度は再び厳しくなりつつある。とくに11月の選挙で反中勢力が台頭したことについて、習主席は大きな不快感を覚えたという。
劉大将の発言についてある共産党関係者は「対台湾政策転換のための観測気球だ」と指摘した。