茂木弘道
福島原発事故以来、放射線問題は科学に基づく議論ではなく、放射能恐怖をあおる反核・反放射線ヒステリーに世が席巻されてきた。放射線絶対悪、1ミリシーベルト以下の放射線量でなければならないなどという文字通りの迷信が跋扈してきた。東大教授が涙を流して言おうとどうしようとこれは正真正銘の迷信である。
なぜなら、人はカリウム40という放射性元素を体内に取り込んでいて、4000ベクレルの内部被曝=その外部放射を行っているのだ。その放射線が無くなると生命は死滅する。放射線のおかげで生きている人間が、放射線絶対悪をわめくなどということは造物主への反逆そのものである。
日本を代表する知の巨人というべき渡部昇一教授は、原発事故以来放射線問題に対する探求を幅広い見地から精力的に行い、世の誤った風潮に対する警鐘を鳴らしてきた。
放射線医学の権威である中村仁信元大阪大学教授は、国際放射線学会(ICRP)第3委員会員も務めた専門家である。
本書では、知の巨人と放射線医学の権威が、放射線問題の重要ポイントをあまさず論じている。対談なので非常に分かりやすくなっているが、大事な点については、「解説」コラムで図表、データを示して説明されており、根拠が明確に示されている。「解説」は26に及ぶ。
主な内容は次の通りである。
第1章;原発を止めた放射能恐怖
第2章:広島・長崎のデータを使わない反原発論者
第3章:国連はいっこくも早く「除染をやめよ」と警告している
第4章:これからの原発と代替エネルギー
特に第4章で主張されている広島・長崎のデータのことは重要である。被曝生存者が20万以上おり、その追跡調査が可能なため、多くの内外の学者のよって追跡調査分析が行われてきたのである。その結果が示すものは、瞬間被曝100ミリシーベルト(時間当たりにすれば数倍以上になる)以下の場合、ガンをはじめ様々な障害は、一般人に比べむしろ少ないくらいで、決して多くはないことが確認されているのだ。遺伝への影響にしてもニール博士の詳細な調査によってそれがないことが確証されている。
にも拘らず、1ミリシーベルトの除染だ、年間で50ミリシーベルトにもならないのに子供への影響が心配だとか何とか脅されて未だに福島は避難解除がなされていないのである。
是非この書を多くの方々に読んでいただき、原発事故とその放射線問題の実際がどのようなものか知っていただきたい。それを全ての政治家に伝えていただきたい。マスコミにこの真実を取り上げさせるようにして頂きたいと願うものである。
『原発安全宣言』(渡部昇一・中村仁信著)(遊タイム出版)(定価:1200円)