【産経・主張】習政権発足「矛盾」を外に転嫁するな 日本は屈せず備えを万全に

【産経・主張】習政権発足「矛盾」を外に転嫁するな 日本は屈せず備えを万全に

2013.3.15 産経新聞

 習近平氏が全国人民代表大会で中国国家主席に選ばれた。昨秋の中国共産党大会で就任した総書記兼中央軍事委員会主席と併せて、党・軍・国家の最高権力を握ることになり、胡錦濤氏に代わって今後10年の中国の舵(かじ)取りを担う。

 日本など近隣国をはじめとする国際社会にとり、警戒すべき指導者が登場したというほかない。

 習氏は、日本の尖閣諸島国有化を非難して反日行動を主導し、日本の領海・領空侵犯を常態化させた。習氏主導の富国強兵は国防費の25年連続2桁増(当初予算比)や、政府各部局の海洋管理部門の国家海洋局への統合と機能・権限強化など着々と進んでいる。

 ≪警戒すべき指導者登場≫

 総書記に就いて後、「中華民族の偉大な復興」を掲げて民族主義を鼓吹し、「(領土・領海など安全保障上譲れない)核心的利益を絶対に犠牲にしない」と宣言して富国強兵路線を邁進(まいしん)している。

 胡前政権が格差是正や環境保護によって目指した「和諧(調和のとれた)社会の構築」にあまり言及せず、改革への保守的姿勢が内外の失望感を高めている。

 悪いことに、その「和諧社会」はほとんど進展しなかった。

 共産党・政府幹部と一族が腐敗により手にした富は、1990年代末に「国内総生産(GDP)の13〜17%」(胡鞍鋼・清華大学教授推計)に上り、経済急成長に伴い天文学的規模に達している。

 所得格差指標、ジニ係数は0・61(中国人民銀行・西南財経大学調べ)とアフリカ最貧国並みだ。肺がんなどを引き起こす微粒子状物質PM2・5による大気汚染は国内はおろか日本にまで及ぶ。

 民衆の集団的抗議事件は、2007年の8万件超えを最後に政府公表が停止され、すでに18万件以上との見方が一般的である。

 社会・政治状況が深刻化しているにもかかわらず、習氏がこうした民族復興の夢をふりまき、「富国強軍」を呼びかけるのは、アヘン戦争後の清朝没落で半植民地化した屈辱を晴らし、アジアの盟主に返り咲きたいためだろう。

 周りの国々にとって迷惑この上なく、かつ危険極まりない。

 国民の不満や憤りは、腐敗や貧富格差、社会保障制度の未整備などに向けられているのである。

 習新体制には、国防費を膨らませる代わりに格差解消や、高齢化社会へ待ったなしの社会保障制度づくり、大気汚染の改善に努める「普通の国」を志向し、周辺諸国を安心させてもらいたい。

 だが、現実はその方向に進んでいない。民族主義鼓吹と東シナ海や南シナ海の島嶼(とうしょ)を自国領と唱える習体制の対外膨張路線には、そうした国内の不満や矛盾を解決するのではなく国外に転嫁しようという意図がうかがえるからだ。

 ≪「普通の国」を志向せよ≫

 習氏の政治基盤は、自身その一員である太子党(高級幹部子弟)と習氏を推した江沢民元主席ら上海閥、父の代からつながりが深い人民解放軍の3勢力から成る。

 彼らは、1989年の天安門事件後のトウ小平・江体制期に肥大化した既得権益層であり、胡政権による「和諧社会」構築や平和発展外交を骨抜きにしてきた。

 自由、平等、公正、公平な中国への国内改革こそが良識ある内外の「中華民族の夢」であるべきで、習氏は耳を傾けてほしい。

 日本は中国との軍事衝突という最悪の事態を防ぐ枠組み作りを急ぐとともに、日米同盟を基軸に引き続き、中国周辺国との政治、経済、安全保障の広範な連携を強めていく必要がある。

 東南アジア諸国、インド、モンゴル、ロシア、韓国まで多くの国が中国の理不尽な対外膨張に脅かされている。諸国との連携強化には、東シナ海に投入する中国の力をそぐ効果が期待できる。

 経済分野での対中依存脱却も不可欠だ。日本は中国に傾斜しすぎた貿易、投資、技術交流の向きを他地域に転じ、中国への圧力を強めていかなければならない。

 問題は、中国がなりふり構わず軍拡、覇権主義に走るのに対し、日本は憲法などで防衛の手足を縛られていることだ。日本は、集団的自衛権の行使容認などで過度の自己規制という戦後の殻を破り、結束し、屈することなく「習氏の中国」に対応していくべきだ。

 日中は引っ越しのできないお隣同士の関係だ。その近さは、関係改善と同時に、不測の事態への備えの強化も日本に迫っている。

参考「中国ガン・台湾人医師の処方箋」 

http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%82%AC%E3%83%B3-%E6%9E%97-%E5%BB%BA%E8%89%AF/dp/4890633006/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1356076869&sr=8-2


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