日本李登輝友の会メールマガジン「日台共栄」より転載
蔡英文氏が講演会で改めて日米安保の重要性とFTA推進に意欲を表明
昨日、東京・新宿区のハイアットリージェンシー東京において、日本蔡英文後援会の主
催により台湾から来日した民進党主席の講演会が開催され、会場は立見もでるほどで400人
以上が「台湾に求められている課題と日本の関係」と題した講演に聞き入った。
午後2時着のJAL便で羽田空港に着いた蔡氏は、先に来日していた許世楷・前駐日台湾
代表夫妻や100人を超える人々の歓声に応えつつ、在日台湾婦女会から歓迎の花束を受け取
り、同行の台湾や日本メディアに「日本との友好関係を確認したい」「台湾コンセンサス
や対中国政策などを説明したい」と話した。
また、謝長廷・元行政院長や張富美・元僑務委員会主任、翁金珠、邱議瑩、頼坤成ら立
法委員などの代表団も同行、民進党主席の来日では最大の同行者数で、同行報道陣も先般9
月の訪米時より多かった。
講演会は郭孫雪娥・在日台湾婦女会名誉会長の「私が長生きしているのは、台湾の独立
を見たいからです」との開会挨拶で冒頭から盛り上がった。
続いての来賓挨拶は、元駐タイ大使で外交評論家の岡崎久彦氏、ジャーナリストの櫻井
よしこ氏、参議院議員の山谷えり子氏の3氏。
岡崎氏は、尊敬する牛場信彦・駐米大使が「死ぬまでに見たいものが二つあり、一つは
ベルリンの壁が崩れること、もう一つは台湾の独立をみること」と言っていたことを紹介
しつつ「私も生きているうちに台湾の独立を見たい」述べた。また、蔡氏が駐米大使に指
名されたことがあったことも披瀝した。
櫻井氏は東日本大震災での台湾からの支援に感謝の意を表しつつ、世界の脅威となって
いる中国の3つの侵略パターンを紹介、最後に「私が台湾人なら全身全霊で蔡英文さんの選
挙を応援したい」と述べた。
山谷氏は、20数年前に『嫁姑戦争』という小説を書いて台湾で翻訳されたとき、台湾か
らは印税を振り込みたいという連絡があったが、中国でも翻訳されたのに「日中友好あり
がとう」との連絡だけで未だに印税の振り込みがないというエピソードを披露、台湾が法
治国家であるかを強調し「強い台湾は日本の最大の利益」と訴えた。
その後、許世楷氏より同行代表団の紹介、郭孫雪娥氏よりの花束贈呈とつづき、いよい
よ蔡氏の講演となった。
蔡氏は薄いグレーの上着に白いTシャツ姿で、主催者が準備したバラの胸章も付けてい
ない。通訳は、前北海道大学教授で、現在は民進党本部の情報部長をつとめる林成蔚氏。
冒頭、日本語で「皆さま、こんばんは。私は蔡英文です」と述べて盛大な拍手を受けつ
つ、岡崎氏が披露した駐米大使のことに触れ、赴任しなかったのはワシントンDCの日本
料理食があまりにもおいしくないからと会場を笑わせつつも、両親の健康状態がよくなか
ったからと断った本当の理由を披瀝した。
講演は通訳を入れて約1時間に及び、現在の台湾には和解と団結が必要と訴え、「対日関
係には台湾認識が存在する」「日米安保はアジア太平洋の安定に最も重要」「日台FTA
を進めていきたい」と述べ、最後に総統選挙に触れ「もちろん勝つ自信はある」と述べに
っこりと笑むと、会場は割れんばかりの拍手が鳴り止まなかった。
講演後の質疑応答では原発問題、教育改革問題、九二共識問題、尖閣諸島問題の4つの質
問に対して応答した。原発問題では、福島と同じ規模の事故が起こったら避難先がない台
湾の現状を説明し、2025年までに原子力発電に依存しない「脱原発」社会を目指す方針を
示すも、極めて難しいテーマだがリーダーの強い決意をもって対応したいと応えた。
下記に講演の模様を伝える毎日新聞の記事を紹介したい。また台湾新聞が羽田空港や講
演会の写真とともに記事を伝えているので併せて紹介したい。
◆台湾新聞ブログ「蔡英文氏、東京へ」
http://taiwannp.mita.minato.tokyo.jp/
—————————————————————————————–
台湾:尖閣問題、共通利益を糸口に…最大野党主席が来日
【毎日新聞:2011年10月3日】
来年1月の台湾の総統選で政権奪還を目指す最大野党、民主進歩党(民進党)の蔡英文主
席が3日、来日した。蔡主席は東京都内で講演し、台湾は与野党とも対日重視の立場だとし
たうえで「日米安保はアジア太平洋地域の安定に最も重要な礎で、日本と共にこの地域の
安保や経済統合などの問題に取り組んでいきたい」と述べた。
台湾が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島(台湾名・釣魚島)については「漁業から話
を始めるのもよい」と指摘、日台間の共通利益を糸口に話し合いで解決したいとの姿勢を
示した。
蔡主席は3日間の滞在期間中、前原誠司民主党政調会長ら与野党の主要政治家と会談。安
保や経済統合、対中政策についての考えを説明する予定だ。【石原聖】