昨年の第一回に引き続き、李登輝学校を卒業した皆様が中心となって「台湾出身戦歿者
慰霊祭」を開催されると聞き、大変感銘を深くしております。
かつての大東亜戦争には私も京都大学の学生のときに学徒出陣し、台湾の高雄高射砲部
隊に配属され、その後、内地の千葉県習志野の防空学校に移り、終戦を陸軍見習い士官と
して名古屋で迎えました。
この戦争では二百万人を超える日本人が戦死しており、その中には約三万人の台湾出身
者も含まれております。私の兄の李登欽もその一人です。日本名を岩里武則といった兄は
昭和二十年二月十五日、海軍上等機関兵としてマニラで戦死しています。
海軍に志願し、左営の海軍基地に初年兵として配属されていたとき、私も高雄高射砲部
隊に配属されましたので、二人で高雄の町で会って写真を撮ったのが最後となりました。
私も遺族の一人として、靖国神社に参拝することを念願しておりますが、お国のために
亡くなった英霊を慰霊顕彰するのは、後世の者として当然のことなのです。それが日本で
は武士道の精神や大和魂を大切にする心につながり、また日本を「美しい国」へ導く第一
歩であると確信しております。
本日の慰霊祭には参列すること叶いませんが、台湾の地から英霊の方々に謹んで哀悼の
意を表するとともに、皆様方のお志に感謝申し上げます。
二〇〇六年十二月三日
李 登輝
*李登輝前総統からのメッセージは「台湾出身戦歿者慰霊祭に寄せて」という題でしたが、
本誌掲載にあたり編集部で新たに「英霊の慰霊顕彰は日本を『美しい国』へ導く第一歩」
と付したことをお断りします。