「諸君!」はなぜ酒井論文を掲載してしまったのか[台湾の声編集部]

【3月15日 台湾の声】

「諸君!」はなぜ酒井論文を掲載してしまったのか−「李登輝転向」の訂正を求める

                                 台湾の声編集部

 オピニオン誌「諸君!」4月号(文藝春秋)は、李登輝氏が親中派に転向したと断言す
る酒井亨氏の論文「李登輝は『転向』したのか」を掲載したが、この内容は事実歪曲に基
づいて書かれたものである。なぜ「諸君!」はこのような論文を掲載してしまったのか。

 酒井氏は論文の書き出し部分でこう書いている。

 「李登輝・前総統が、どうやら親中派に路線転向したようだ。……日本では……李登輝
シンパ(日本李登輝友の会など)の間では、『李登輝先生はそれでも台湾の主権独立を強
調し、正名や制憲を主張している。変わっていない』と、しきりに弁護しようとしていた。
しかし……日本の雑誌『SAPIO』(二月二十八日号)でも「台湾は民主的な独立国家。
独立宣言は必要ない」と題するインタビューが掲載され、改めて親中発言が確認されたこ
とから、もはや弁護の余地はなくなりつつある」

 ここの問題点は、

(1)李登輝氏はこのインタビューで、はっきりと正名と制憲の必要性を強調しているの
 だ。「弁護の余地はなくなりつつある」など、どうみても事実と異なる断定だ。

(2)「親中発言が確認された」と書かれているが、本当に「確認」できるのか。酒井氏
 のいう「親中」とは、李登輝氏の「中国との全面的な双方向の交流」の立場を指してい
 るかに見えるが、ここでの文脈から見る限り、更に飛躍して「台湾の主権独立を強調」
 する立場のアンチテーゼとして「親中」を用いている。しかしインタビューで李登輝氏
 は「(台湾は)独立国家だから、中国との貿易もどんどんやればいい」と強調している
 のだ。実は酒井氏はここだけでなく、全文を通じて、李登輝氏が親中=反独立であると
 におわせ、その「転向」をむりやり証明しようとしているが、これはあやまりだ。

 「諸君!」は「SAPIO」のインタビュー記事をチェックした上で、酒井氏の論文を
 掲載したのか。しっかりとチェックしていれば、このような事実歪曲の文章は掲載でき
 なかったはずだ。

 これほど個人を中傷する論文を掲載する前に、「諸君!」は少なくとも「SAPIO」
 と「壱週刊」の原文をチェックすべきであった。この初歩的な検証もせずに掲載したこ
 とは、もはや怠慢というだけでなく、背後に何らかの意図さえあるのではないかと疑わ
 ざるをえなくなる。

 酒井氏は、台日関係者の間では、言い争いを好む人物として知られている。今回の論文
 でも、他人に対する容赦ない罵詈雑言やレッテル貼りなど、日頃のやり口がよく表れて
 いると、実際に大勢の人々が感じている。

 酒井論文のテーマは「李登輝氏」でも、よく読むと非難の矛先は、じっさいには日本李
 登輝友の会など日本の「李登輝シンパ」に向けられているように見える。保守派嫌いの
 酒井氏は、日台交流の中核を担う保守派の「李登輝シンパ」よりも、自分の方に注目し
 てほしいとでも訴えたいのであろうか。李登輝氏への非難は、「李登輝シンパ」を叩く
 ための手段にすぎないかも知れない。非難内容が実証性に欠けていいかげんなのは、そ
 のためではないのか。もしそうなら、「諸君!」は社会に対してほとんど価値のないも
 のを掲載してしまったことになるだろう。

 すでに酒井論文が齎した李登輝氏のマイナスイメージは真実と誤解され、日本国内を一
 人歩きしているはずだ。この悪意の感じられる内容の論文を掲載した「諸君!」は、有
 効なかたちで読者に訂正をおこなうべきである。


※「諸君!」に「李登輝転向」の訂正を求めよう!
【要望先】文藝春秋「諸君!」編集部 shokun@bunshun.co.jp


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