李登輝前総統が3月20日の記者会見で示した総統選挙への期待と憂慮

台湾の李登輝前総統は総統選挙投票日の2日前(3月20日)に記者会見を開き、ようや
く民進党候補の謝長廷氏支持を発表した。

 しかし、その発言はかなり慎重で「私が見ているのはブルーとかグリーンではなく、
台湾の前途、台湾人全体の利益」とした上で、立法院を中国国民党が絶対多数を占めて
いる現状を「1匹の統制を失った野馬」と喩え、「台湾の民主が後退しかねないだけでは
なく、甚だしきにいたっては民主の崩壊と災難を引き起こし」かねないと憂慮感をあら
わにしている。

 この記者会見では民進党については言及していないが、上に紹介した産経新聞の「グ
ローバルインタビュー」の、特に「民進党について」の発言と併せて読んでみれば、李
前総統の視野の広さがよく分かる。やはり、李登輝氏は元首経験者として台湾の前途を
よくよく考え抜いている真のリーダーであることが分かるのではないだろうか。
                                  (編集部)


李登輝前総統の記者会見
【3月20日 於:群策会】

 各メディアのみなさま、こんにちは。

 本日は台北から淡水までわざわざお越しいただき、はじめにみなさまに歓迎の意を表
したいと思います。

 もう2日も経つと、台湾は第4回目の総統直接選挙を行い、人民の手により直接新しい
総統が選ばれ、台湾を新たな段階へと邁進させていくこととなります。台湾の民主の発
展から見れば、これは喜ばしい大きな出来事であります。

 台湾の民主体制は、全台湾人により多くの困難を克服し、ともに努力して得られた結
果であり、また今日の台湾が国際社会で認められ、支持される理由を得ることができた
所以でもあります。この業績は先進民主国家と比較すると、たしかに改め、進歩させる
必要のある点も多々ありますが、喜びかつ安心に値することは1回1回の総統選挙を経て、
私たちの民主の基礎は深く強固なものを得ています。こうしたことから私たちは、民主
はすでに台湾に根付いた、と言うことができます。

 このたびの総統選挙は2組の候補だけが出馬したことで選挙民を2つに分けることをも
たらし、激しい競争を巻き起こしています。選挙民のなかにはすでに支持の対象を表明
している人ももちろん多く、様子をうかがう態度をとり続けている人も少なくありませ
ん。

 この間にも多くのメデイアの方々は、李登輝は何を考えているのか、誰を応援するの
かを知りたがり、異なる陣営の人は、私の態度および立場をメデイアを通じて、各種の
異なる解釈や推測を作り出しています。ですから鍵となるこの時、私は皆様をお呼びし、
自ら説明することを決めました。

 ある人は李登輝はブルーだと言い、またある人は李登輝はグリーンだと言います。実
際のところ、私が見ているのはブルーとかグリーンではなく、台湾の前途、台湾人全体
の利益なのです。私は以前に申し上げたことはないでしょうか。私に誰を応援するのか
聞かないでくれ。私は自分に「私は何者であるのか」と聞き、台湾の民主化を推し進め
たのはつまり、台湾人が自ら主人公となり、自らの運命の主人公となることを希望して
いたのです。だから私、李登輝はブルー陣営、あるいはグリーン陣営でないことを嬉し
く思います。そして、台湾がどのように歩むのか、その1人の総統候補者こそが台湾に
もっともふさわしい人選なのです。

 選挙が熾烈をきわめていようと、私たちは台湾民主の永遠たる価値を惜しまなくては
なりません。そのため私たちの努力の重心は、どのように台湾の民主を深化させていく
かの過程におかなければなりません。民主政治の基本精神には2つの大きな要件があり
ます。

 第1に、執政者には人民に充分な自由と幸せな生活を享受させる責任があり、あわせ
て国家が末永く発展する目標を兼ね備えていなければなりません。

 第2に、民主政治とは牽制と均衡の政治であります。現在、立法院は国民党が4分の3
の絶対多数を掌握しています。立法院では、台湾の前途および主権に関する重大な議題
に関しても、その他の政党はほとんど牽制と均衡の空間がなく、将来何か事が起こるか
もしれず、誰も知ることができなくなります。

 特に、新しく第1回の立法院が開かれて以来、この種の状況を表現すると、1匹の統制
を失った野馬がいるようであります。これにより、もしも今回の総統に当選した人が同
じ政党の候補者であれば、権力の牽制と均衡の問題はさらに厳しいものとなります。も
しも権力が適当な牽制と均衡を得ることができなければ、台湾の民主が後退しかねない
だけではなく、甚だしきにいたっては民主の崩壊と災難を引き起こし、憂慮しないわけ
にはいきません。

 私は最近、日本で『最高指導者の条件』という本を出しました。そのなかで、私たち
はどのような指導者を必要としているかを提起し、国家の命運は指導者の素質と能力に
より決定する、としました。民主の深化は大きな仕事で、必ず責任ある指導者に依拠し、
推し進めていかなければならず、これはブルー、グリーンの問題ではありません。言葉
を換えて言えば、誰の主張がもっとも台湾の利益に適しているのかということであり、
それはまた選挙民が必ず考慮しなければならない問題でもあります。

 そうでありますから私は、1人の国家指導者たる者は、固い中心となる思想を持ち、
敬虔な宗教への信仰、誠実な人としての態度、開かれた世界観、および自らの国家への
熱い愛情をあわせ持っていることと認識しています。そのなかでも自らの国家への熱い
愛情――それが台湾には最も重要となるのです。

 私たちは以上の民主政治の清新と国家指導者の条件を提起し、2人の候補者をよく見
なければなりません。ここ数ヵ月、私は2人の総統候補者を深く見た結果をここで公に
表明したいと思います。私のこの1票は謝長廷さんに投じることに決めました。最後に
選挙の結果がどうなろうと、私は台湾人民の選択を尊重します。

 各メディアのみなさま、私の報告はこれで終わります。もう一度みなさまがお越しに
なられたことに感謝いたします。ありがとうございました。

                          【翻訳:日本李登輝友の会】



投稿日

カテゴリー:

投稿者: