昨日、蔡英文・民進党主席が党主席として初来日し、東京・千代田区のアルカディア市
ヶ谷において250人の参加者を前に「目前の台湾情勢と台日関係」と題して講演した。招
聘したのは在日台湾同郷会(何康夫会長)、本会はじめ在日台湾婦女会などが協賛した。
会場には同行してきた同党所属の[塗の土を省く]醒哲氏ら3人の立法委員、羅福全・元
台湾駐日代表処代表、許世楷前台湾駐日代表処代表ご夫妻、高橋雅二・前交流協会理事長、
池田維・前日本交流協会台北事務所代表(駐台湾大使に相当)、金美齢氏、本会の田久保
忠衛副会長、宮崎正弘氏なども見えていた。
蔡主席は日本語で「こんばんは、蔡英文です」と挨拶。冒頭で大学で3年間、日本語を
勉強したがものにならず米国へ留学したことなどを披露した。
蔡主席は2000年からの民進党政権時代を、2300万人が台湾は主権を有しているというコ
ンセンサスを作り上げたと位置づけ、馬英九政権になってそれが当り前でなくなったと批
判。また、台湾経済も民進党時代には安定していたとし、現在の金融危機もその基礎があ
ったからそれほど大きな影響を受けずにすんでいると強調した。
また、民進党は分裂しておらず、2012年に必ず政権を取り戻すと表明した。
日台関係については、民進党は民主、人権、安全保障という共通の価値観から日台関係
を考えていて、3つを提言した。1つは、経済貿易の推進で、特に日本とのFTA(自由
貿易協定)実現、2つ目は、アジアにおける経済統合で台湾が加わることへの支持、3つ
目は、安全保障をめぐる日本との協力体制の構築を挙げ、実現に努めたいとした。
なお、質疑応答では「政権を取ったら国名を台湾に変えるのか、憲法を変えるのか」や
尖閣諸島、陳水扁前総統に関して質問があった。国名や憲法については、世論の支持がな
ければならず、だから社会運動が大切と答えた。尖閣諸島については、政治と国際法の両
面があり、国際法的には台湾の領土であると証明できると言っている学者がいると答え、
間接的な表現ながら尖閣は台湾領と表明した。陳水扁氏については司法で裁いていると答
え、党主席としての見解は控えた。
ちなみに、講演会の司会は芳賀優子さん(日本文化チャンネル桜キャスター)が務め、
通訳は4月から北海道大学で教鞭をとる林成蔚氏(日本で台湾駐日代表処勤務の経験を持
つ国家安全会議諮詢委員)が務めた。
蔡主席は17日まで滞在し、日本の与野党有力政治家との会談を予定している。
なお、昨日の台湾国際放送ニュースが講演の模様を伝えているので下記にご紹介したい。
(編集部)
蔡・民進党主席が訪日、台日関係強化を呼びかけ
【3月15日 台湾国際放送ニュース】
最大野党・民進党の蔡英文・主席は15日から17日まで日本を訪問。蔡英文・女史は民進
党初の女性党首で、党主席就任後の初訪日。
蔡・民進党主席は15日、東京都内で講演、民進党は政権与党を務めた8年間で、台湾の
主体性と主権の独立、そして台湾の前途は台湾住民2300万人が決めるという共通認識を確
立したと説明した。また、馬英九政権は過去8ヶ月間、急速に中国大陸に接近することで
これらの観念をあいまいにし、人権状況を後退させ、社会を保守的にしてしまったと批判
した。
蔡英文・民進党主席は、台湾海峡両岸の経済政策における国民党との最大の違いは、民
進党が中国大陸を台湾にとっての経済の一部に過ぎないと見ていることだとし、国民党は
台湾の経済問題の解決方法が中国大陸にあると考えているため、台湾の主権を危機にさら
すことになり、人々は不安を感じていると説明した。
蔡・民進党主席は、民進党は結党以来22年で最大の危機を迎えており、2008年の立法委
員(国会議員)選挙と総統選挙での敗北から再建中だと認めた上で、負うべき責任を理解
し、主張と立場を堅持しながら社会の安定を実現したいと述べた。そして、一致団結して
2012年の政権奪回を目指す決意を表明した。
蔡・民進党主席は、民進党政権の時代に日本駐在代表(大使に相当)を務めた羅福全氏
と許世楷氏は両国の関係発展のため、国民党でさえ認める多大な貢献をしたと賞賛。その
上で、民進党は民主と人権、安全を出発点に日本との関係を考え、安定かつ健康的な関係
を作り上げていたが、国民党は中国大陸との関係のため「中華民国」の体制から離れられ
ず、20世紀の「抗日」の経験が日本との関係発展の上で表面化してしまっていると分析し
た。
蔡英文・民進党主席は聴衆に対して、台湾と日本のFTA自由貿易協定が実現できるよう
協力を要請、それが出来てこそ、台湾経済が中国大陸に過度に傾斜することを防げると訴
えた。また、アジアの経済統合では台湾がそれに加わることへの支持を求め、安全保障の
面でも日本と協力していけるよう期待した。