【宮崎正弘の国際ニュース・早読み(通巻3375号):平成23年(2011年)7月24日】
2011年7月23日午後8時半ごろ、浙江省温州から福建省福州へ向かっていた「和諧号」(い
わゆる中国新幹線)が豪雨と落雷の中、先行する列車に追突。高架橋から列車が30メート
ルほど下へ落下して多数の死傷者がでた。
報道に依れば、落下した列車はD3115、杭州発福州行き。
手元の中国鉄道時刻表で調べたら、D3115は杭州を16時40分に発車、福建省の福州南着
が21時45分となっている。
筆者はこの列車に乗った記憶があるので(それも今年の3月ごろ)、保管してある切符を
調べた。
筆者の乗ったのは3月9日、杭州を午前7時2分にでたD5587で、一度、温州で降りた。温
州で取材後、つぎに温州南発14時57分のD3107に乗っていたことが分かった。
時刻こそは違うとはいえ、同じルート。身震いがする。
中国新幹線はチケットの種類で時速が異なり、北京―上海間の超特急新幹線は「G」で
示される。また城際新幹線というのは短距離を疾駆する新幹線で「C」で表示される(た
とえば北京―天津)。
事故を起こした新幹線は「D」で示されているように「動車」を意味する。一般的には
従来線のレールに時速250キロ前後の車両を奔らせる区間も多い。こんかいの事故の列車は
新しく敷設したルートと推測される。
しかし予測されたとはいえ、はやくも中国新幹線の頓挫を示唆している。安全を無視し
たスピード第一主義と手抜き工事。地盤改良工事をそこそこにしての繰り上げ開業、イン
フラの未整備。まるで中国経済のいびつな構造そのものを新幹線事故は象徴してはいまい