1月の立法委員選挙で5期目に挑むも民進党候補に敗退した中国国民党の若手のホープ林
益世・前立法委員は、2月に馬英九総統から行政院秘書長という閣僚級の要職に任命され
た。1968年8月生まれだから、まだ43歳だ。
しかし、それも束の間、6月27日、週刊誌に立法委員時代の汚職疑惑が暴露されると、即
座に記者会見を開いて事実無根だと反論、翌日には週刊誌と工場経営者を告訴し、行政院
長には身の潔白を強調したという。しかし、最高法院検察署(最高検)が捜査に乗り出し
たことで29日に辞表を提出。それでも、辞任したこの夜にテレビの討論番組に自ら電話を
かけ身の潔白を主張したという。
1日午後には最高検の呼び出しに応じて出頭したが、最高検は2日午前4時、「嫌疑が重大
で証拠隠滅や口裏合わせの恐れがあるとして、台北地方裁判所に身柄勾留と面会禁止措置
を請求した」と伝えられるが、林益世・前行政院秘書長はその日のうちに「謝罪声明文を
発表、不正に取得した金銭を返還し、今後は慈善活動に身を投じる」と述べているとい
う。下記にそれを伝える記事を紹介したい。
前行政院秘書長、収賄容疑で身柄勾留 馬総統:遺憾
【中央通信社:2012年7月2日】
(台北 2日 中央社)最高法院検察署(最高検)特別捜査チームは2日早朝、収賄などの
容疑で1日午後から取り調べを行っていた林益世・前行政院秘書長(国民党、43)につい
て、嫌疑が重大で証拠隠滅や口裏合わせの恐れがあるとして、台北地方裁判所に身柄勾留
と面会禁止措置を請求した。
林容疑者は2日、「罪を認め反省している、司法に向き合い法の裁きを受ける」との内容
の謝罪声明文を発表、不正に取得した金銭を返還し、今後は慈善活動に身を投じると述べ
ている。
馬英九総統はこれについて2日午前、「非常に遺憾であり、また申し訳なく思っている」
と述べ、「公務員の基本は清廉にあり、グレーゾーンは許されない」として、汚職防止へ
の取り組みを徹底的に続けると強調。陳冲行政院長(首相)も「誠に遺憾で国民に心から
お詫びする」と謝罪、捜査に全面協力するとともに、二度と同様の事件が発生しないよう
綱紀引き締めを強化するとの決意を示した。
今年1月まで4期連続で立法委員をつとめた林氏は、2010年に地元の工場経営者から193万
米ドル(当時6300万台湾ドル相当=約1億7500億円)を受け取り口利きを行い、行政院秘書
長となった後の今年2月から3月にかけ再度8300万台湾ドル(約2億2000万円)で口利きを持
ちかけた疑い。27日に週刊誌が詳細をスクープし、林氏は29日に辞任した。
林益世氏は旧高雄県(現・高雄市)で強い影響力を持つ有力地方派閥の出身で、国民党
中堅の出世頭と言われたが1月の改選で野党民進党の新人に敗北、2月の内閣改造で、閣僚
級となる行政院秘書長に抜擢された。政権幹部による多額の汚職案件が今後の政権運営に
影響を与えるのは必至と見られる。