成田空港発、台湾桃園空港(台北)経由、香港行きのキャセイパシフィック航空のCX
451便。乗客は、出発を待ちわびていた。機内放送が始まった。遅れを詫びる内容だった。
ところが最後の部分で客室乗務員が「台湾の野球ファンを代表して、チームのすばらしい
活躍にお礼を申し上げます」と語り始めた。台湾に戻る台湾チームが搭乗してたのだ。一
瞬の後、機内で拍手がわき起こった。
台湾チームは10日、航空機数便に分乗して台湾への帰途についた。CX451便には、郭泓
志、彭政閔、彭政閔、高志綱、郭厳文、張建銘、王鏡銘選手らが搭乗していた。
機内アナウンスはまず、乗客に対して出発の遅れを詫びた。しかし、それに続く部分
は、特に予定されていたものではなかった。客室乗務員が機転きかせたという。「この場
をお借りして台湾の全野球ファンを代表して、中華(台湾)チームのすばらしい活躍にお
礼を申し上げます。お疲れさまでした。頑張ってください」と放送した。
多くの乗客は最初、何のことだったかよく分からなかったようだ。一瞬の後、「そう
か、この便に、帰国するWBC台湾代表の選手が乗っているのか」と理解したらしい。機
内で拍手と歓声が沸きあがった。まさに「感動のハプニング」だった。
強豪の日本相手に、最後の最後まで互角以上に戦った。敗れはしたが、試合直後には観
客に感謝の意を示すなど、誠意と礼節を失わなかった。日本人も台湾人も、あるいはその
他の国の人も心から感動した。
彼らとて勝負の世界に人生をかける野球人だ。悔しくなかったわけがない。後になり、
自責の念から涙を流した選手もいたという。台湾にとって「WBC決勝ラウンド初進出」
という“記録”は達成できなかった。しかし2013年WBCでの絶対に忘れられない“記
憶”として、台湾チームの姿はすべてのファンの心にしっかりと刻まれた。
(編集担当:如月隼人)