ルクラシック)開催中の東京ドームにて「多謝台湾為311賑災台湾隊加油!」活動を展開し
た。これは「台湾からの東日本大震災の支援、ありがとう。台湾チーム頑張れ!」の意味
である。
WBC台湾対キューバの一戦が行われる東京ドームで、2000枚の台湾応援ペーパーを台
湾人及び日本人に配布した。
この活動は日本李登輝友の会の加藤秀彦(愛知県支部事務局長)の発案によるものだ。
活動の反響は非常に大きく、台湾国内のテレビ・新聞・雑誌に取り上げられたほか、日本
でもフジテレビMr.サンデーで「WBC台湾戦の奇跡『円陣』お辞儀の秘密」として放送さ
れた(3月17日)。
◆台湾からの震災支援
東日本大震災で東北の日本人は地震や津波で家を失い、原発事故で故郷を去らなければ
ならなくなった。その現実を前に多くの日本人は言葉を失い、深い悲しみと絶望感を味わ
った。
そんな中、様々な国から支援をいただいたが、飛び抜けて多くの支援をしてくれた国が
ある。台湾だ。人口2300万人、GDPも日本と比べると少ない国が、苦しい状態にある日
本のために沢山の義援金を送ってくれたことに本当に感動した。
台湾から送られた200億円を超える義援金の内、実に九割が一般の方からの寄付である。
大企業や有名人が大金を送るのではなく、サラリーマンや主婦のような、普通の方が少し
ずつ集めてくれたのだ。これはまさに2300万人の台湾人すべての真心の結晶と言える。こ
の台湾人の真心を私たち日本人は心に深く刻んでおくべきだ。
WBCで観客として訪れる台湾人は、まさに義援金を送ってくれた「普通の方」であ
る。この方達に直接感謝の気持ちを伝えるため、今回の活動を行ったのである。
震災から日が経つにつれて、だんだん当時の記憶が薄れてくる。しかし外国である日本
のために、台湾の方々がくれた真心を忘れてはならないのである。
◆ある参加者の思い
大震災で苦しむ人々にとって、台湾からの励ましがどれほど心強いものだったのか。配
布活動に参加した方の手記を紹介したい。
≪3月11日のあの日、私は都内の会社で普通に勤めていました。
私の妻の実家は宮城県東松島市。今回の大地震で甚大な被害を受けた地域のひとつで
す。そして家は海から少し離れている地域とはいえ、この大津波ではひとたまりもないか
もしれない。そう思いました。そして私は秋田の大学にいたので、先輩・友人・知人・後
輩も東北各地に多くいます。なおさら背筋が凍る思いでした。
その日、震災対応で会社に遅くまで残りながらも、何度も妻の両親の自宅に連絡をしま
したが何も通じません。2人とも携帯は持っていません。義弟は持っていましたが、こちら
も通じません。
妻は都内の勤務先から翌日帰ってくることができました。やはり親と連絡がつかないと
顔が青ざめていました。
何でもいいから情報が欲しい! そして連絡をつけたい! それが私たちの願いでし
た。情報を求めて防衛省やテレビ局の視聴センター、県庁や市役所など様々なところに連
絡をし続けました。しかし回線がつながらなかったり、有力な情報が得られなかったりし
ました。どこも混乱しています。東松島市の情報はなく、そして何より家族から連絡はあ
りません。日増しに絶望感が募ってゆきました。
妻は「もうだめかも…」という言葉を口にするようになりました。その度に「大丈夫に
決まっているよ」と私は明るく振る舞い続け、妻を勇気付けるしかありませんでした。言
葉の裏づけはないまま。
妻が家を先に出ると家にいるのは私一人。その度に絶望感が体を満たしてゆきます。一
人で泣いていました。妻には見せないように。そんな折、台湾で懇意にさせていただいて
いるある日本語世代のご老人から一本の電話が来ました。安否を確認する電話でした。そ
の言葉の端々から少しずつ心が絶望感から開放されてゆくような気持ちを覚えたのです。
そして台北市内で日本のために祈りをささげるイベントを行うことを教えられました。
そしてネットでその情報を探していたら、台湾の老若男女、みんなが日本を応援し続け
ている動画や画像を見つけました。私は一人でただただ声を上げて泣きました。先程まで
とは違う、絶望感とは違ううれしさやありがたみで泣き続けました。救われたわけです。
苦しいときは動画を見て自分を奮い立たせ、情報収集を続けながらも連絡を待っていました。
その後義父から連絡が入り、義母からも連絡が入り、弟からも連絡があり家族はみんな
無事でした。
そして台湾から多額の義援金が届くようになります。私は物心両面で台湾に助けられた
のです。特に一番きついときに心を救ってくれたのは台湾の皆さんの励ましがあったから
です。私は忘れることのできない恩義を感じています。だから感謝と応援をするのです。≫
◆応えよう、日本が
台湾の方々が日本に寄せる友情に、我々日本人はちゃんと応えているだろうか? 残念
ながら応えているとは言いがたい。一例として日本の戸籍における台湾人への不当な扱い
を紹介したい。
現在、台湾人が日本人と結婚したり日本に帰化する場合、または日本人の養子となる場
合など、その身分に変動があった場合、戸籍における国籍や出生地は「中国」あるいは
「中国台湾省」と表記される。台湾は中国の領土ではなく、これまで一度たりとも中華人
民共和国の統治を受けたことはない。ほとんどの台湾人は自らを「中国人」として扱われ
る事に強い不快感を持っている。
日本李登輝友の会では戸籍におけるこの不当な戸籍表記を正すべく、請願署名運動を展
開している。
震災で苦しんでいる日本に心を寄せてくれた台湾人の思いに応えるためにも、日本国内
における台湾人への不当な扱いを正さなければならない。それが我々日本人の責務ではな
いだろうか。 [加藤秀彦]
【月刊「祖国と青年」5月号より】
http://www.seikyou.org/sokokutoseinen.html