漁船を海上保安庁が拿捕(だほ)したことをきっかけに、台湾の馬英九総統はこれまでの主張を覆
し、中国や韓国と同様に沖ノ鳥島を岩と主張しはじめたことは未だ記憶に新しい。巡視船とともに
軍艦まで派遣し、一戦も辞さない強硬な姿勢を取ったことで日台間に緊張状態が続いた。
しかし、5月20日に始まった蔡英文政権では、5月23日に行政院が「国連大陸棚限界委員会の決定
を尊重し、決定前には、この問題で法律上の特定の立場をとらない」と表明して、沖ノ鳥島を岩と
した馬前政権の主張を事実上撤回した。
さらに、双方の窓口機関である日本の交流協会と台湾の亜東関係協会が海洋協力について協議す
るための新たな枠組みとして「日台海洋協力対話」を設置することで一致した。
6月21日には沼田幹夫・交流協会台北事務所代表や邱義仁・亜東関係協会会長などが出席して
「日台海洋協力対話」の予備協議を開催、交流協会台北事務所によれば「対話の枠組み(日台海洋
協力対話)を立ち上げることを確認」し、また「第1回対話は、7月下旬に台北で実施することで一
致した」という。
昨日、蔡明耀・亜東関係協会秘書長が7月に開く「海洋協力対話」の協議テーマなどを明らかに
した。中央通信社が伝えているので下記に紹介したい。
ちなみに、中国は5月20日の総統就任式をもって、台湾との対話を中止したと6月25日になって発
表している。理由は、蔡英文総統が「92年コンセンサス」を認めていないからで、責任は全て台湾
にあると言い出した。
これに対して蔡英文総統は6月30日、外遊先で「自分は総統就任演説で、最大の誠意と柔軟性を
示した。中国側が柔軟な考え方を持てるよう期待する」と述べ、硬直した中国側の姿勢をやんわり
と非難した。この発言により、柔軟な台湾、硬直した中国というイメージが世界に広まり、蔡英文
総統の戦略勝ちという様相を呈しはじめた。
一方、台湾の陳建仁・副総統は6月29日に米国在台協会(AIT)が主催するアメリカの独立記念日
をお祝いするレセプションに出席、「両国は共有する価値観や信念に立脚し、全世界で自由、民
主、人権を推進するプロセスにおいて、強固で安定したパートナーシップと友情を築き上げてき
た。現在、両国の各分野での協力関係は、切り離すことができないほど緊密なものになっている」
(台湾週報)と述べ、アメリカとの良好な関係を強調した。
台湾は、日本との対話が進み、アメリカとも良好な関係を深めるも、中国は自分にとって都合の
よくないことには一方的に窓口を閉ざす。まるで駄々っ子ではあるが、近代国民国家にはありえな
い対応であるが故に、中国には要注意なのだ。
台湾と日本、沖ノ鳥問題など協議へ 7月下旬の「海洋協力対話」
【中央通信社:2016年6月30日】
(台北 30日 中央社)台湾の対日窓口機関、亜東関係協会の蔡明耀秘書長は30日、台北で来月下
旬に開かれる「台日海洋協力対話」の第1回対話では、漁業協力、環境保護、海難救助、海洋科学
調査の4つのテーマで協議を行うと明かした。沖ノ鳥(日本名:沖ノ鳥島)周辺の漁業問題につい
ても話し合う見通し。
蔡氏は、今後年1回の頻度で対話を開催していきたいとした上で、必要があれば回数を増やす可
能性もあると語った。また、双方が合意すれば4つのテーマ以外の議題も協議すると説明してい
る。
このほか、2011年の東京電力福島第1原発事故後から実施されている、福島など5県で生産、製造
された食品に対する禁輸措置に関しては、早期解除に期待を示す一方、「現段階ではタイムテーブ
ルがなく、主管機関の衛生福利部(衛生省)が(問題)にあたるべきだ」と述べている。
(唐佩君/編集:杉野浩司)