蒋介石を「台湾民主化の父」と捏造したテレビ愛知が謝罪し訂正

いささか旧聞に属するが、これは紹介しておかなければなるまい。

俳優の速水もこみち氏が案内役となった「ディープ・ローカル旅 発酵する台湾」をテレビ愛知が制作し、去る8月11日にテレビ東京系列において放送した。

昨年8月30日から圓山大飯店の董事長に就いている行政院副院長などの要職を歴任した葉菊蘭さんが速水氏に圓山大飯店を紹介した際、「このホテルは台湾の民主化の父である蒋介石の妻の宋美齢が建てました」とか「この最上階には台湾の父と呼ばれる蒋介石の執務室がありました」などと説明したという。

葉菊蘭さんは、「台湾の三島由紀夫」とも言われ、台湾の民主化や言論の自由を求めて1989年4月に焼身自決した烈士鄭南榕の夫人だ。

葉菊蘭さんは蒋介石や蒋経国の独裁政権に命を懸けて戦った鄭南榕の遺志を継ぎ、立法委員選挙に打って出て当選している。

本会も鄭南榕を顕彰する集いを2005年から数年にわたって開催し、葉菊蘭さんにも参列していただいたことがある。

その葉菊蘭さんが蒋介石を「台湾民主化の父」などと紹介するはずがない。

事実、放送でも葉菊蘭さんはそのようなことを言っていなかった。

テレビ愛知の完全な捏造だった。

台湾において「民主化の父」と称されているのは李登輝元総統以外になく、米国や海外でも「ミスター・デモクラシー」と呼ばれているのは李登輝元総統以外にいない。

台湾に少し関心がある人なら誰でも知っている、いわば「台湾の常識」と言っていいだろう。

当然、放送直後から訂正せよと多くのクレームが入ったという。

捏造というにはあまりにも低レベルのテレビ愛知の捏造であり、訂正を要求した団体などには、執行役員で編成局長の林雪彦氏から「蒋介石は長きにわたり独裁政権を築き、戒厳令を敷き、自由を圧迫してきた人物であり、『民主化の父』と表現したのは誤りです。

台湾で民主化を推し進めたのは李登輝総統です。

(中略)誠に申し訳ございませんでした」と謝罪する詫び状が届いた。

また、テレビ愛知のホームページでも「ディープ・ローカル旅 発酵する台湾』について訂正とお詫び」を掲載し、YouTubeなども訂正版をアップしている。

下記に「『ディープ・ローカル旅 発酵する台湾』について訂正とお詫び」の全文をご紹介したい。

低レベルとは言え、日本では台湾をめぐる歴史認識の誤認は、台湾を中国の一部とする地図に象徴されるように、いまだに少なくない。

モグラたたきのように、一つひとつ根気よく潰してゆくしかない。

テレビ愛知に訂正を要求した方々のご尽力に敬意を表したい。


『ディープ・ローカル旅 発酵する台湾』について訂正とお詫び

2025年8月11日(月・祝)にテレビ愛知制作・テレビ東京系列で放送した特別番組『ディープ・ローカル旅 発酵する台湾』において、一部に一般的な歴史認識とは異なる表現がありました。

番組では台北市内のホテルについて、「このホテルは台湾の民主化の父である蒋介石の妻の宋美齢が建てました」と紹介しました。

台湾の民主化は蒋介石の死後のことであり、歴史事実とは相違するため「民主化の父」と紹介した個所は訂正し削除します。

また中国語での会話部分で蒋介石のことを「台湾の父と呼ばれる」と翻訳しましたが、実際の会話にその表現はありませんでした。

このような誤りが起きたのは、歴史認識の不足と、通訳との確認作業が丁寧に行われなかったことが主な原因です。

関係者と視聴者の皆様に深くお詫びします。

今後この番組を配信する際は問題個所を訂正した内容に再編集したうえで公開することにします。

今回の事態を重く受け止め、今後は放送前の事実確認を徹底し、二度とこのような過ちが起きないよう全力で努めてまいります。

テレビ愛知株式会社


※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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