平成23年6月19日日本李登輝友の会第6回総会
記念講演会
東アジアにおける我が国家戦略
講師 西村眞悟 前衆議院議員
  三月十日、東京大空襲、死者10万、この数は、カーチスルメイのような悪魔的絨毯爆撃からすれば、極めて少なかった。東京の人口密集地周辺を爆撃、火の海にし、逃げられないようにして中の人を焼き殺す絨毯爆撃、人類史上、通常兵器でこれほどの殺戮をした国はアメリカ以外ない。
 なぜ、犠牲者がすくなかったのか、硫黄島が持ちこたえたからです。これが英霊の蘇りです。このような英霊は各所にいる。沖縄のことが、鳩山という痴呆の総理大臣で注目をされた。沖縄で戦った沖縄県民は英雄であり、アメリカに追っかけられた日本軍にいじめられて亡くなった人たちではない。沖縄県民の名を我々は覚えていなくてはならないほどの英雄なんです。アメリカ陸軍史で中将以上を戦士せしめたのは、沖縄戦以外ない。イスラエルでは、ナチスと戦った一人の女性兵士ハンナ・セネッシュが「闇夜の光」として、皆、今も覚えています。あの熱い国に毎朝、新鮮な花が供えられている。二十三歳で亡くなったが、その直前、上官に届けた手紙が、「幸いなるかな、栄光のうちに死ぬことを知った心は幸いなるかな」、私は幸せであると、書き残している。それから6ヵ月後、沖縄では、若い乙女たちが亡くなった。

ひめゆり部隊・・・沖縄師範学校女子部百五十七名及び沖縄県立第一高等女学校六十五名
白梅部隊・・・沖縄県立第二高等女学校五十五名
名護蘭学徒隊・・・沖縄県立第三高等女学校十名
瑞泉学徒隊・・・沖縄県立首里高等女学校六十一名
積徳学徒隊・・・私立積徳高等女学校六十五名
悌梧学徒隊・・・私立昭和高等女学校十七名

 この乙女たちを、イスラエルの女性ハンナ・セネッシュと同様に我々が覚えていなくてはならない英雄である。これが歴史を奪われているということなんです。我々が回復するべくことはこのことだ。

 どこまで回復するのか、パワーバランスが均衡するまで回復しなければならない。周辺国、中国、ロシア、朝鮮そしてアメリカ。すべて核保有国である。 

 ここで西ドイツ社会民主党のシュミットは、1977年、西ドイツ首相時代、敵の核弾頭から受けた脅威に対し、ソビエトは、NATO、西ドイツに向けてSS20という核弾頭ミサイルを実戦配備した。そこでシュミットは、ロンドンで、軍事アンバランスの危険性を訴え、こう述べた。「我々は、覚悟をしよう。赤くなるよりは、死ぬ方がましか、死ぬより赤く染まる方がましか」そして、西ドイツ及びNATOは、「赤く染まる=ソビエトに屈服するなら死を選ぶ」と。そして、パーシング2というミサイルをアメリカから導入した。
その結果、ソビエトが打てば西ドイツは、死ぬが、確実にソビエトも死ぬという体制を作った。「俺たちを攻撃するなら勝手にやれ、しかし、確実にお前たちも死ぬぞ」という体制。これが、NATO、二重の決断の第一弾。相互核破壊の構造を作った。そして第二弾、相互核破壊の構造を作ってから、ソビエトに「お前の核を削除しろ」と迫り、ソビエトは、削除した。その核は、極東へ来た。そのときの内閣は、福田赳夫内閣。しかし、何も反応しなかった。その無反応から20年。我々は、シュミットが直面した核の驚異に晒されている。我々も核弾頭を保有する、これに尽きる。「覚悟しろよ」という意味である。
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その上で中国の戦略に対峙しなくてはならない。このようなのっぴきならない状況の中「中国になるより死ぬ方がましか、死ぬより中国になった方がましか」どちらか決めなければならない。私は、はっきりしている。中国になるより死ぬ方がましだ、と。万世一系の天皇を支えてきたわが国が、中国の配下になるなら死ぬ方がましだ、と。
 そして、これだけでは、済まない。中国の陸・海の通常兵力に我々は対抗しなければならない。

 中国とは何か?コミンテルン、共産主義独裁国家である。中華思想に凝り固まった国家である。帝国主義であり、軍国主義である。今、中国大陸(戦前から日本にいる華僑などは別)では、二種類の中国人しかいない。ひとつは、悪い中国人、もうひとつは、非常に悪い中国人。この二種類しかいない。中国は、嘘をつくことが当たり前。日本語をペラペラ話す中国人企業コンサルタントがテレビで、「中国人に騙される日本人が馬鹿なんですよ、と。石平さんは違うが、日本で日本語を喋ってビジネスをしている中国人は、騙す方が悪いのではなく、騙される方が悪いと思っている。それが13億、のた打ち回っているのだから、我々は覚悟を決めないとならない。中国人は日本の屈服を狙っている。それを援助しているのが菅直人民主党内閣。3月1日、菅内閣は中国人観光ビザの緩和を発表した。年収80万の者が、観光に来るか?何しに入ってくるのか、大阪で生活保護の申請をするために入ってくる。貧民を日本に養わせるための観光手段ではありませんか。

 昨年、4月1日潜水艦を含む十隻の艦隊が、第一列島線を抜けて、小笠原、沖ノ鳥島周辺に展開した。鳩山は友愛の海とか抜かして何の反応もしていない。その後の市民運動家の菅がやってきて、中国史観に迎合し、韓国に菅談話なるものを発表し、靖国神社を無視した。これは、決定的な中国迎合内閣の誕生。そして彼らは、アメリカの動向に反応しなかった。昨年4月、ゲーツ米国防長官は、シンガポールで「アメリカはアジアに帰って来た」と述べた。そして7月1日ヒラリークリントン国務長官は、「南シナ海の航行はアメリカの国益だ」と言った。それに日本は、反応しなかった。反応しなかったから翌9月、尖閣に出てきた。現在、南シナ海で起きていることに、菅内閣は反応していない。したがってもうじき、東シナ海へ出てくる。

 昨年より、頻繁に、そして今年、震災で疲弊するわが国を尻目に中国は、5月、第一列島線を突破して、第二列島線、沖ノ鳥島付近で展開している。これをどう解釈するのか。九州から台湾まで一千キロにわたる、わが国の諸島。これを守るためには、カムチャツカから房総沖、北マリアナ、グアム、パラオ、フィリピン東海岸、台湾、そして尖閣。この海域、広大な西太平洋の海域をわが国が支配していなければ、奄美から台湾までの島は、全て獲られます。この海域を通じて補給しなければ、島は孤立する。大陸から押し寄せる勢力に対し、わが国は、西太平洋から兵力、物資を補給しなければならない。しかし、その海域には、既成事実のように敵の潜水艦が出入りしている。このことが如何に危機的な状況かお分かりいただけるでしょう。来年から、中国は空母を運用すると言っている。わが国の命運がこの海域にある。

 第一列島線では、中国とわが国が入り乱れるということで、済まされましょう。しかし、第二列島線を獲られればわが国は、万事休す。日露戦争時、ウラジオストクからでた2〜3隻の駆逐艦でわが国の艦隊は寸断、寸前であった。日露戦争まで遡らなくとも、アメリカの潜水艦でわが国の補給路は断たれた。
 これは、自滅する、国民が飢え死にする。今、それが為されようとしている。そして民主党内閣はこれに反応していない。これが、現在の危機である。わが国の為すべきことは、軍備の大増強。軍備の大増強で経済も活性化されるという一面もある。アメリカのフランクリン・ルーズベルトは、アメリカの大恐慌を克服した。これをニューディール政策といっているがこれは嘘。本当の克服は、日本との戦争を決意し、船と戦車と航空機をめちゃくちゃ作ったからだ。

 わが国は、総力を挙げて核ミサイルと、海軍、空軍を装備しなければならない。それでは、陸軍はどうなるのか?と言われるが、自衛権の発動はどこか?それは、島国であるイギリスとわが国は伝統的に同じである。イギリスの防衛ライン、海岸線ではない。海の真ん中ではない。大陸側、敵基地の背後だ。わが国も同じ、大陸の敵基地を無力化しなければ、わが国の安全は無い。したがって大陸の敵基地を叩くというのが、わが国の自衛権の発動である。台湾の防衛力が、わが国の自衛とどのような関係にあるか。

 1804年のイギリスとデンマーク。デンマーク艦隊引渡し請求事件。ナポレオンとイギリスは海軍同士で戦った。トラファルガーの海戦でナポレオンの艦隊は大打撃を受けた。しかし、ナポレオンには艦隊を獲得する唯一の得策があった。それは、中立国デンマークを攻略し、コペンハーゲンにあるデンマークの艦隊を獲得すること。イギリス艦隊が勝ったといえども、これによってイギリスにとっての脅威が誕生する。そこでイギリスは、デンマークにその艦隊を引き渡すように要求した。これを引き渡したならデンマークは中立国でなくなるから引き渡す筈がない。それは、イギリスも計算済みで、大艦隊をコペンハーゲンに展開、砲撃し、小船までいたる艦船を接収して引き上げた。これが、自衛権のケースメゾット。これが自衛権の範囲内。

 そこで台湾の空軍力、海軍力は非常に高性能である。中国が、台湾を呑込んで、この高性能な空・海軍力をわが国に向け脅威となる場合、わが国は、台湾が中国に呑込まれるなら、その前にその軍事力を渡し、日本とともに共産中国と戦おうではないか、と。これを自衛権の下、正々堂々といえることを皆に伝えたい。



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