日本李登輝友の会メールマガジン「日台共栄」より転載
1988年1月、総統だった蒋経国が急逝、副総統だった李登輝氏が総統に就任する。以来、
2000年に民進党の陳水扁氏が総統となるまでの12年間、李登輝時代が台湾では続く。この
間に李登輝氏が進めた民主化・本土化によって今の台湾の基礎がつくられた。
総統を辞して12年目という今年、李登輝氏は大腸癌という大病を克服、4月から旧友を訪
ね、各地の産業を視察することを目的とする「台湾一周の旅」を始めた。
このような時期、総統を辞して以降の主な論文や講演録14本をまとめ、4月12日に行った
最新インタビューを併せて収録した李登輝氏の新刊『日台の「心と心の絆」─素晴らしき
日本人へ』(宝島社)が5月末に出版された。
年代順に言えば、2001年に京都学生新聞に掲載された「李登輝の人生哲学」に始まり、
2011年5月号「MOKU」に掲載された「『生きるために』─日本の一大学生の手紙」まで
の14本が収録されている。また、奥の細道散策で来日した折の国際教養大学での講演「日
本の教育と台湾─私が歩んだ道」(2007年)や、同じく後藤新平賞の受賞記念講演「後藤
新平と私」(2007年)、東京青年会議所における講演「坂本竜馬の『船中八策』─若き日
本人に伝えたいこと」(2009年)などが収録されている。
「日本の教育と台湾─私が歩んだ道」と「後藤新平と私」は、本会が編纂した『李登輝
訪日─日本国へのメッセージ2007旅と講演の全記録』(まどか出版、2007年)が初出であ
る。
また、平成14(2002)年12月15日に行った本会の設立大会のとき、ホテルオークラ東京
の会場に台湾からのインターネット中継で行った記念講演「台湾精神と日本精神」が「日
本精神と台湾精神」と改題して収められている。本会の機関誌『日台共栄』創刊号に掲載
しているが、単行本に収録されたのは初めてのことだ。
本書は、李登輝という台湾が生んだ偉大な指導者を支えてきた思想や哲学、人柄なども
俯瞰できる内容となっている。
本書出版には台湾在住ジャーナリストの片倉佳史(かたくら・よしふみ)氏が深く関わ
っているという。奥付の前のページに「構成・写真=片倉佳史」としか記されていない
が、最終章の味わい深いインタビュー「一問一答・李登輝先生に聴く」は片倉氏によると
漏れ聞く。本書の一番の読み所だ。本書を手にしたら、まずこのインタビューから読まれ
ることをお勧めしたい。
また、ご自宅らしき部屋で机に向かう表紙の写真も片倉氏が撮ったという。これまでの
李登輝本には見られない斬新性を感じさせる。本棚を背景に写された李登輝氏の表情はと
ても自然で、李氏の何がしかの本質をも活写しているように思われる。
・書 名:『日台の「心と心の絆」─素晴らしき日本人へ』
・著 者:李登輝
・版 元:宝島社
・体 裁:四六判、上製、272頁 ISBN978-4-7966-9704-0
・定 価:1,680円(税込み)
・発 売:平成24(2012)年5月28日