『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋
東日本大震災や熊本地震の際にいち早く手を差し伸べてくれた世界一の親日国・台湾。日台の固い絆に感動を覚えた方も多いのではないでしょうか。ところが先日、「間違い日本語を徹底調査」と題して台湾の飲食店を嘲笑的に扱った番組が日本で放送され日台両国民が激怒、さらに捏造疑惑まで露呈しオンエアしたフジテレビが謝罪するという事態に発展しました。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の著者で台湾出身の評論家・黄文雄さんは、日台関係に水を差すフジテレビの愚行について厳しく批判するとともに、現代の日本人が失ってしまった「日本精神」についても言及しています。
● フジ「やっちまったTV」、ついに台湾に謝罪 パチモン扱い「嘲笑的な演出」
フジテレビのバラエティ番組『日曜ファミリア・やっちまったTV』(フジテレビ系)に、捏造疑惑が浮上しています。
台湾には「なんちゃって日本語」と言われる、ちょっとおかしな日本語が溢れていることは皆さんよくご存知だと思います。レストランのメニューやTシャツのロゴなどによくあるものです。夜市で安く売っている洋服などでは、日本のキャラクターをマネた絵柄や間違った日本語が描かれているものも多くあります。
日本人からしてみれば、思わず笑ってしまう日本語やキャラクターは沢山あります。日本のマスコミでもその部分だけを切り取って面白おかしく紹介されることがよくあります。そうやって楽しむ分にはいいでしょう。
しかし、今回のテレビ番組の騒動は、どう見てもやりすぎです。台湾の小さな店に、牡蠣を乗せたカキ氷を出させて「カキと牡蠣をかけている」と紹介し、それを嘲笑したということがネットで批判の声が上がり、台湾のニュースでも取り上げられる騒ぎとなりました。
もともとこの店ではカキ氷に牡蠣をのせた料理が名物となっていたようですが、問題は、番組ではいかにも「牡蠣」と「カキ氷」の発音をかけて、料理を考案したかのように報じたことです。日本に憧れる台湾が、発音が似ているということだけで、無理やり「牡蠣を載せたカキ氷」というメニューを作り出した、ということ「パチモン」(偽物)として嘲笑するようなニュアンスだったそうです。
しかし、そもそもそれは日本語的な発想であり、ネットではテレビ局のやらせではないかという批判が続出しました。
映像では店先に「カキ氷」という日本語の張り紙が貼ってあるところを映し出していましたが、これについては店の主人が台湾のテレビ取材に対して、フジテレビのスタッフが作ったものであり、もともとはなかったと答えています。
● フジテレビ『やっちまったTV』にアフレコ捏造疑惑……“台湾パチモン特集”に現地人激怒!
店主は、テレビ局からは「牡蠣を載せたカキ氷」を美食として紹介したいとの依頼があったと証言しています。しかも店主は日本語で「カキ氷」と「牡蠣」が同じ発音とは知らなかったとしています。要するに、この店はもともと「牡蠣を載せたカキ氷」を名物として出していたのですが、それに目をつけた日本のテレビ局が、牡蠣とカキ氷の発音が似ていることから、台湾人がいかにもこれに便乗して作ったかのような印象操作を行ったということなのでしょう。
● フジ「やっちまった」、取材先に謝罪=番組内で台湾を嘲笑、内容捏造も
韓国では、韓国語で戦う男を意味する「サウラビ」が日本で「侍」になったとか、韓国武術の「ハプキド」が日本で合気道になったなどと、歴史的根拠の無い「韓国起源説」の主張がされていますが、どことなくそれと似ています。いくら台湾人が日本を好きでも、これでは怒るのも無理はありません。
店主は、誠意で協力したのに、結果的に嘲笑されることになってとても残念だともコメントしています。
● 嘲諷台灣山寨文化 日製作人道歉「避免再發生」
これに対して、番組製作側はこの台湾の店主に向けて、「番組の意図は、あくまでも台湾で扱われている誤った日本語の看板や日本の認識を紹介する事です。決して台湾のみなさんや台湾の文化を否定する意図はございません」という謝罪のコメントをFAXで送ったそうですが、報道から見るかぎり、この店に誤った日本語や日本への認識があったのか疑問です。前述したように、過剰な演出の結果ではないかという疑念が持たれています。
そもそもこのように台湾を嘲笑することを目的とした番組を作るということ自体に傲慢さがあります。なぜ台湾に日本語や日本文化が溢れているのか、その歴史的背景を知ろうともせず、現象だけを取り上げて視聴者に媚を売ろうとするのは非常に愚かしい行為です。
これまでも述べてきましたが、台湾にこれほど日本文化が浸透しているのは日台の歴史と大いに関係があります。かつて日本は台湾を領有(1895〜1945年)しました。その時代のことを、台湾では「日本時代」と呼んでいます。
終戦により日本は台湾から撤退しましたが、その間、日本人と台湾人の間には様々な感動的な逸話がたくさん生まれました。日本は、台湾の農業、教育、医療、インフラ(道路、上下水道、鉄道などの建設)と、あらゆる分野での発展に貢献しました。
資金を日本内地から調達してまで、台湾のあらゆる産業や建築物を作り上げました。今でも、総督府をはじめとする当時の建物はたくさん残っています。領有当時、台湾人と日本人の間には互いに信頼関係が築かれていたため、第二次世界大戦の戦況が厳しくなり、日本内地だけでなく台湾でも日本兵を徴兵したところ、募集数の数百倍の応募が殺到したのでした。
多くの台湾人は、日本のために尽くしたいと思っていたのです。中でも、台湾原住民で構成された「高砂義勇隊」は、山地でのサバイバル術に長けていたため戦争で大活躍したのです。台湾の原住民たちが日本兵になりたがったのは、日本への信頼からです。
日本は、それまで蛮人と呼ばれて恐れられていた台湾原住民に対しても、根気強く熱心に近代化を進め、教育や医療を積極的に取り入れさせたのでした。原住民たちは、教育や医療の有り難さを知り、日本に心を開くようになりました。それは原住民だけではありません。
「平埔族」と言われる平地に住んでいた人々も、同様に日本による近代化の洗礼を受け、日本に憧れるようになりました。「日本時代」に幼少期を過ごした年代は、成人してからも日本に憧れ続け、終戦後も日本文化を知り、日本語を使って生活していたのです。彼らの感傷は、台湾映画「多桑(とうさん)」で実によく表現されています。
●『多桑 ToSan 父さん』
長くなりましたが、こうした歴史的背景があり、台湾に日本文化を受け入れる素地があったからこそ、今の台湾文化があります。台湾に入り込んだ日本語や日本文化は、台湾文化の一部としてすでに吸収されています。
日台の先人が命をかけ、国運をかけて築き上げた信頼関係があったからこそ、今の日台関係があるのです。だからこそ、地震や天災で被害を受けると、互いに惜しみない援助の手を差し伸べることができるのです。
そうした精神は、「日本時代」が終わっても、今の人々の心に受け継がれてきている実に貴重なものなのです。そうした歴史を知らずに、「日本に憧れる台湾は日本のパチモンばかり」として台湾文化を嘲笑するようなテレビ番組を作るなど言語道断で傲慢もいいところです。
むしろ、今でも日本を信頼し、日本文化を台湾の一部として迎えている台湾人の精神に敬意を表すべきです。日台の絆は、世代が変わったからといって切れるような簡単なものではありません。それほど強烈な時代を共に歩んできたのです。日本でもそう感じている方が多いのでしょう、件の番組に対して台湾人のみならず日本人からも多くの批判が寄せられたといいます。
日本は戦後、敗戦という厳しい状況からモーレツ時代を経てバブルを享受し、必死になって前進してきました。21世紀になって、やっとゆとりを持って周囲を見ることができるようになり、日本では今、台湾がブームです。
それまで台湾の片思い状態だったのが、日本が台湾のほうを向き相思相愛になったということです。こうした蜜月関係はじつに心地よいものです。それに水をさすようなくだらない番組は必要ありません。
今回の件で思い出すのが、2009年に放送されたNHKの番組『JAPANデビュー アジアの一等国』です。この番組は、NHKによる歴史捏造が問題となりました。台湾の日本時代を生きたお年寄りたちに取材をし、都合のいい部分だけを使って、「植民地」「人間動物園」「台湾人は漢民族」などという刺激的な言葉を随所に入れたナレーションをかぶせて、日本が台湾をいかに悪劣に支配統治したかといった内容の番組に仕立て上げられていました。
これに対して、台湾側からも日本側からも批判が集まり、ついにはその内容の正当性を巡って1万人の集団訴訟として裁判に持ち込まれました。裁判の結果は、高裁では台湾原住民の高許月妹さんへの損害賠償が認められたものの、最高裁ではこの判決が棄却されNHK側の勝利となりましたが、日本時代の台湾を知る人々にとってNHKが歴史を捏造して放送したのは明らかです。
チャンネル桜の水島総社長は、この判決について「日本人は血も涙もない」と嘆き、人々の心を傷つけたお詫びにと募金を集めて原住民村に寄付をしたそうです。
● NHKによる高許月妹さんへの名誉棄損を認めない不当判決を下した最高裁
テレビ番組や新聞メディアにおける捏造については、TBSやテレビ朝日、朝日新聞や毎日新聞など、左派メディアの十八番とされてきましたが、今回の件でフジテレビもかなりお粗末なものだということが判明しました。
これは、マスメディアが直面する永遠の課題とも言えるでしょう。しかし最近では、捏造問題はマスメディアに限ったことではなくなってきています。自動車業界、建築業界など日本を代表する業界でも、データ改ざんが大きな社会問題となっています。また、国会議員が不正を暴かれ辞職に追い込まれるケースもしばしば目にします。
戦前の日本には、「日本精神」がありました。新渡戸稲造の「武士道」に代表される日本精神は、捏造とは無縁のものであり、日本時代を生きた台湾人たちはそうした日本精神を叩きこまれたものでした。
現在でも台湾で「日本精神」といえば、正直、誠実、勤勉を指し示す言葉になっています。しかし、戦後の日本ではこの日本精神が否定され、日本人もすっかり変わってしまいました。現在のマスメディアの捏造は、戦後日本の風土から生まれた日本人の「生き様」です。それが時代の流れとともに日本の「気風」となってしまったとすれば、これほど悲しいことはありません。
この「気風」を表す象徴として、戦後、中韓がしつこく追求してくる「歴史認識」「靖国参拝」問題への対応があります。日本はこれに対して反論するわけでもなく、言われるがまま、ただ「反省と謝罪」を繰り返してきました。そして、マスメディアもその旗振り役となって「謝罪と反省」のアンコールを声高に叫んできました。
こうした「気風」は、戦後日本人のメンタリティの象徴として知られ、すべての日本人に贖罪の意識を強要してきました。台湾でも、日本人がただひたすら過去を悪と見なす態度に、あれほど素晴らしい「日本精神」を唱え実践してきた日本人が、戦後になって「無分別」のような精神状態となっているのではないかと危惧する意見があります。
日本では戦後70年、コスモポリタン的思想が主流意識となってきました。やがてそれはグローバリズムへの礼賛にも繋がりました。とはいえ、その根源には歪んだ自虐史観が作用していたことは明らかです。そのため、戦後の日本では、自国の伝統的精神や文化から価値観に至るまでが他国より劣ったものとして貶められてきました。とくにマスメディアや教育の場でその傾向が顕著でした。
日本に親しみを持つ台湾に対する嘲笑や捏造も、どこかこうした自虐意識が関係しているように思えます。台湾人の親日感情を逆手にとって嘲笑の対象とすることは、日台の親密な歴史を否定して貶めることであり、卑屈な精神の表れだと思わざるをえません。
幸い、今回の件では番組に対して日本人からも多くの批判が上がったと聞きます。日台の歴史を知る日本人が確実に増えていることの証拠でしょう。
現在の世界では、イギリスのEU撤退、アメリカのトランプ現象、ロシアのプーチン独裁、中国の習近平が掲げる「中国人の夢」など、コスモポリタン的志向から国家主義への回帰が起きています。
日本ではいまだこうした国家主義は「右傾化」としてただ批判するばかりですが、世界の変化を見れば、結局はコスモポリタン的な思想や主義が現実に合わなかったことは明らかです。
こうした時流は、日本が歪んだ自虐史観から脱却する好機ともいえます。いまこそ日本は台湾や朝鮮、満洲での事績を見つめなおし、歴史を取り戻すべきです。中国や韓国に迎合していたずらに自国を貶めたり、日台関係を毀損して中国のお先棒を担ぐような真似をするようでは、日本精神も復活せず、いつまで経っても戦後は終わりません。