「遥かなり台湾」より転載
喜早天海
2011/09/12(月)
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今日は中秋節〜そう十五夜です。皆さんはお月見をしましたか。ぼくは昨日一昨日と夜散歩しながら
月見しました。それで今日は月見でなく映画を見てきました。映画のタイトルは「セデック・バレ」です。
この映画は霧社事件を描いた映画で、台湾では今最も話題になっている映画で9日に封切られたばかり
なんです。でも、今回は前半部分(前編、太陽旗)で後半(続編、彩虹橋)は30日に公開されるとか。
映画館は休日とあって多くの人が並んでいて希望する時間帯に見られず一時間半待って坐れました。
席はほぼ満席の状態でした。
「セデックバレ」は、08年に「海角七号/君想う、国境の南」で台湾映画史上最高のヒットを飛ばした
魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督の最新作。何と構想から12年、製作費用7億元に上り、出演者数は
延べ1万5千人、そして全4時間半のために2部構成となったのです。台湾映画としては空前の規模で、
興業成績で14億元(約4 0億円)に達しないと採算がとれないのだそうです。
タイトルになっている「セデック・バレ」は原住民の言葉で「真の人」の意です。セデック族の男性は
首を刈る事で一人前の男「セデック・バレ」になることができその証として顔に入れ墨をいれる習慣が
ありました。彼らは虹を信仰の象徴としていて死後虹の橋を渡り先祖の家(天国)に帰るのですがその
際に額の入れ墨が橋を渡る資格になるとのこと。
魏監督は、この「真の人」が自らの信念と尊厳を守る為に敢えて勝ち目のない戦いを挑んだと捉え、
セデック族の悲しい物語を壮大なスケールで描いたのです。
1895年(明治28)に日清戦争の結果台湾は日本領土になりました。でも各地で抗日ゲリラ事件が絶えず
発生し、そのたびごとに日本は数百人規模の殺戮を繰り返していたようです。その中でも1930年(昭和5)
に起きた霧社事件は特筆される出来事です。映画はこの霧社事件をテーマにした映画で、今日見た映画は
日本領土に編入された頃から運動会のために公学校に日本人が集まっている所を襲撃するシーンまででした。
当時の先住原住民は首を刈る習慣があって映画の中にもそのシーンが出てきたりして思わず目をそむけて
しまいました。
部族間の縄張り争い、日本人に抵抗する原住民と日本人に味方した原住民、原住民と日本人の板挟みに
なっている人たちなどが描かれ、映画の中に血なまぐさい戦闘シーンなども当然出てきましたが、原住民の
気持ちを表す歌も時々出てきて、中でも主人公のモーナ・ルーダオが虹のかかった滝つぼの前で自分の部族
の歌を歌っているのがとても印象的でした。
原住民系の女性歌手に混じって人気女優のビビアン、スー(徐若?)が出演していました。彼女もまた母親が
原住民(タイヤル族)とのことで、資金不足で悩む同作のために自腹で出演。
「是非見せたかった母方の祖母は2000年に亡くなってしまったが、この映画に出られて本当によかった」と
地元メディアに語ったそうです。またあの海角七号の主演女優の田中千恵も日本巡査の妻役として出ていたほか、
多くの日本人が出演していました。
ともあれ、この映画は日本人にとって台湾の日本統治を見直すきっかけになるかも知れません。最近台湾に
来る計画をしている人は是非時間を見つけて映画をご覧になるといいですよ。高雄では前編と後編が5時間に
わたって一気に上映されたとか。弁当などを持ち込んで映画を見るシーンがTVニュースでやっていました。
ぼくが見終わって映画館を出たら外は大雨。昨日月見をしておいて正解でした。
(参考)
セデックバレの日本語公式サイト
http://ameblo.jp/seediqbale/
賽?克巴? Seediq Bale セデック・バレ(予告)
http://www.youtube.com/watch?v=-zNvshcMBwg&feature=related
この映画の為に当時の霧社街がオープンセットとして再現されました。東京ドームとほぼ同じ面積の敷地内に
8000万元(2億2千万円ほど)を投じて公学校、旅館、郵便局、武徳殿など36軒の木造住宅が歴史的考証に
基づき2009年9月に着工し2010年2月に竣工しました。度重なる悪天候と長く続く雨の影響で美術部は大変な
苦労をされたようです。製作側はセットの解体を惜しみ、将来の映画産業のプロモーションと普及発展の
ためにと、今年1月に新北市に特例としての管理運営を要請。しかし、セット内の家屋はいずれも構造的に
簡便で長期の使用には耐えられないため、新北市では半年間公開することを決定、参観にはネットでの予約
制をしており、ぼくも機会をみて見に行きたいと思っています。
(参考)
《賽?克.巴?》オープンセットの霧社街
http://www.youtube.com/watch?v=Foizxn21G5M&feature=related