「台湾の声」編集部へ
このたび、下記の翻訳書をワックより出しましたので、お知らせします。
ご興味のある方には是非ご一読いただけたらと思います。
よろしく御願いいたします。 �世界出版 茂木 弘道 拝
記
『「太平洋戦戦争」は無謀な戦争だったのか』(ジェームズ・B・ウッド著、茂
木弘道訳)
(発行:ワック株式会社、定価:1600円(+税) 日下公人氏推薦!
(帯の文)
歴史の常識は覆された!!
敗北の運命が決まっていたわけではない、じつは日本に勝利の可能性はあった
。
米国人歴史学者が検証した「太平洋戦争」の真実!
訳者まえがき
大東亜戦争は絶対的に勝てるはずの無い無謀な戦争であった、と思い込んでい
る人が多
い。確かに、昭和19年後半以降の圧倒的な負け戦を見せつけられ、そして日米
生産力、
軍事技術力、戦力の差というものを見せられると、そう思い込むのも無理のない
ことではある。
しかしながら、例えば日米戦力の差といったものも、開戦時で見ると日本の方
がかなり優位
にあったのが事実である。また、「戦力は根拠地から戦場への距離に反比例する
」というよく
知られた戦いの原則からすると、たとえアメリカが日本10倍の戦力を持ってい
たと仮定しても、
戦場の選び方によっては、たとえば決戦場をアメリカから4、日本から1の距離
にあるところに
選ぶとするとどうなるか。アメリカは、10の戦力が4の二乗=16=分の1、
すなわち0.625
となり、日本の1/1=1の6割となってしまうのである。日本は圧倒的な優位
な戦力と化す
のである。
そもそも大東亜戦争に対する日本の基本戦略は、東南アジアの資源地帯から米
英蘭勢
力を駆逐した後は、対米、すなわち太平洋は防御、攻勢の主方向は、インド洋と
中国で
あった。開戦直前の昭和16年11月15日の大本営政府連絡会議で採択された
「対米
英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」にはこのことが明記されている。この基本戦
略通りに
戦ったならば、日本が負けることにはなりえなかったと思われる。何もワシント
ンに日章旗を
立てる、などという勝利の話ではない。「腹案」はそのような愚かなことはこれ
っぽちも考えて
いない。英を脱落させ、中を脱落させ、米をして戦争継続に意欲を喪失せしめる
、という
極めてまともな勝利を目指しているのである。
そしてこうしたことを私なりに研究していたところ、弁護士の高池勝彦氏から
本書
『Japanese Military Strategy in The Pacific War』の紹介を受けた。
私はインド洋作戦こそが、第2段階作戦の中心であり、それによって英本国へ
の豪・印
からの原料・食料などの補給遮断、スエズ英軍への米からの補給遮断、カルカッ
タ―アッサム
から重慶への米の軍事補給(最後の補給路)の遮断、さらには対ソ米軍事援助の
中心
補給路(7割を占めていた)の断絶、などの莫大な効果をあげることが出来る、
と私は結論
付けていた。この場合、対米作戦は前方決戦を避け、防御に徹していれば、少な
くとも
昭和18年後半までは、十分反撃できる、と考えていたのであるが、本書はそれ
をきわめて
本格的な分析によって証明してくれている。
本書はインド洋作戦のことには全く触れずに、ひたすら太平洋において日本軍
とるべき
であった戦略とその効果について論じているが、その基本的な考え方はほぼ全面
的に賛
成できる、極めて説得力に富むものである。開戦についていうと、世界情勢もわ
きまえず、
自己の能力を過大評価した非合理的な決断であった、という世の常識化している
考え
を根本的に否定している。追い込まれた状況下で、考え抜かれたベストのタイミ
ングでの
開戦であったとしている。
大東亜戦争を見直すための非常に貴重な書籍であると考えて日本語訳に取り組
ん
だのである。幸い、WAC社のご理解を得て出版できる事になった。
優れた分析力に富む本書であるが、英文資料の偏りなどのために、これはどう
かと思
われるような箇所もかなり無くはない。これは著者の責任ではないが、読者のた
めに、必要
と思われるところについては、<訳者注>でこのことを指摘し、説明した。なお
、あの戦争は
「大東亜戦争」と呼ぶのが日本にとっては正しいことは言うまでも無い。しかし
、著者はアメリ
カ人であり、また取り上げている分野はまさしく、太平洋における戦いであるの
で、「太平洋
戦争」という言葉を本書ではそのまま使用した次第である。
大東亜戦争の見直しに少しでも本書が役立ってくれることを願うものである。
最後になるが、いろいろとご指導をいただいた、高井三郎氏、中山隆志氏、ま
た訳を
手伝っていただいた石黒則子さんに心から感謝申し上げる。
平成二十一年十月五日 茂木 弘道