【批評】馬英九の立場で語る日本経済新聞社説

【批評】馬英九の立場で語る日本経済新聞社説

台湾の声編集部 2014.4.5 13:00

本日の日経新聞の社説は、台湾の状況に明るくない人物が、政権側の説明を、無批判に紹介しているか、もしくは、あえて政権側の意に添った記事を書いている疑いがある。馬英九政権は今回の件で、海外公館を通じて、投稿もしくは記者個人との接触により、現地のメディアに政権側の見方を掲載させるよう指示を出している。日本のメディアで、馬政権に偏った報道が行われないよう、監視していく必要がある。

1、問題点

(ア)行政院が提出した法案は、「国会をスタンプ機関とするのか」と反論が行われているものであり、学生たちは、これを「要求を受け入れたもの」とは見ていない。それどころか、自分たちの法案を示していて、これに対して、政府は「両国論」である点(中国と台湾をそれぞれ国として扱っている)を問題にしている。

(イ)「サービス貿易協定は台湾に有利とされ、経済界の期待は大きい。」と書かれているが、今回、台湾では「一部の大企業にとってはメリットがあるが、中小企業にとっては問題がある」ということで問題になっている。馬英九政権の財政部長などを務めた劉憶如氏は、蔡英文氏を陥れるために文書の偽造にまで加担したが、今回は、この協定について「台湾の産業、就業に大きな傷をもたらす」と去年の6月末に新聞紙上で見解を発表している。先日、張安楽が起こした「反反サービス貿易協定」デモでも参加した各界の代表というのは、ほとんど、国民党の役職についている人物だった。

(ウ)記事ではECFAが、他の国とのFTAを可能にするという、政権の宣伝どおりに書いている。しかし米国からは、今回問題の「協定」を結ばなくてもTPP参加は可能という声が出ているのである。

(エ)「条例案」という中国語を註を加えることなく使っている。台湾の「条例」というのは法律であって、日本語の条例が指すものとは異なっている。中国語もしくは日本語に詳しくない人物が書いたか、そういった文書を元にして書いている可能性がある。

2、評価すべき点

台湾の民意の高まりを報道している。

—原文は次の通り—

学生運動が映す台湾の民意
日本経済新聞 2014/4/5

 台湾の行政院(内閣に相当)は3日、中国と協定を結ぶ場合は内容を立法院(国会)が審査すると定める条例案を発表した。中国とのサービス貿易を自由化する協定に抗議して立法院を占拠している学生たちの要求を、一部とはいえ実質的に受け入れた。

 混乱の収拾が狙いだが、学生たちはなお占拠を続け、事態の打開につながっていない。一方で、馬英九総統が看板政策として進めてきた対中関係拡大は減速が避けられないとみられ、政権は苦しい立場に追い込まれている。

 2008年の就任以来、馬総統は中国との関係を積極的に改善してきた。良好な対中関係なしには他の国々との経済関係強化も難しい、との戦略的な判断からだ。

 実際、中国との自由貿易協定(FTA)にあたる経済協力枠組み協定(ECFA)を10年に結んだ後、ニュージーランドやシンガポールとのFTAを実現した。

 政権はさらにFTA戦略を進めたい考えで、環太平洋経済連携協定(TPP)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)への加入も目指す。それには対中関係深化が欠かせないとみて、馬総統は中国の習近平国家主席との首脳会談にも意欲的とされる。

 だが、学生運動によって自らの手足を縛る条例案の発表に追い込まれたことで、シナリオは修正を余儀なくされつつある。

 学生運動の標的となったサービス貿易協定は台湾に有利とされ、経済界の期待は大きい。にもかかわらず学生たちが抗議のため2週間以上も立法院を占拠し続け、広く世論の支持も得ているのは、馬政権の不手際による面が大きい。特に民意を見誤った観は強い。

 台北では3月30日に学生たちの呼びかけでデモが行われ、主催者側の発表で約50万人、当局側発表でも11万人以上が参加した。このままでは中国にのみ込まれかねない――。圧倒的多数が中台の現状維持を望むと表明している台湾の民意の底に潜む危機感が、馬政権を揺さぶっている。


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