【報告】安倍元総理などが参列してしめやかに「黄昭堂先生お別れの会」

【報告】安倍元総理などが参列してしめやかに「黄昭堂先生お別れの会」

日本李登輝友の会メルマガ「日台共栄」より転載

 12月20日、大動脈解離のため11月17日に急性された黄昭堂・台湾独立建国聯盟主席を偲
ぶ「お別れの会」が昭和大学・上條講堂にて執り行われました。主催は台湾独立建国聯盟
日本本部(王明理委員長)。

 黄昭堂先生が身罷られて33日目に催した「お別れの会」でしたが、冬晴れの好天に恵ま
れ、また風もなく、いささか寒くはありましたが、年末の平日で、「旗の台」という山手
線や京浜東北線から支線に乗り換えての場所だったにもかかわらず、安倍晋三元総理をは
じめ約200名の方々にご参列いただきました。

 参列者が受付を済ませると、会場内に映し出された在りし日の黄昭堂先生の写真を見な
がら、設けられた献花台で次々と献花をしていきました。

 定刻、多田恵氏の司会により開会後、黙祷を捧げ、主催者の王明理・台湾独立建国聯盟
委員長のご挨拶。そして、宮崎繁樹・元明治大学総長・台湾人元日本兵の補償問題を考え
る会代表、羅福全・元駐日台湾代表・台湾安保協会理事長、片桐敬・昭和大学学長、金美
齢・評論家・JET日本語学校理事長のご挨拶と続きました。

 その後、たくさんいただいた弔辞の中から、李登輝・台湾元総統、蔡焜燦・李登輝民主
協会理事長、蔡英文・民進党主席、渡部昇一・上智大学名誉教授、櫻井よしこ・ジャーナ
リストの5名の方々の弔辞が紹介。

 続いて、「黄昭堂先生の思い出を語る」として、中津川博郷・衆議院議員、岡崎久彦・
元駐タイ大使、小田村四郎・ 日本登輝友の会会長、西村眞悟・前衆議院議員、伊藤哲夫・
日本政策研究センター代表、石川耕一郎・昭和大学名誉教授、佐藤三千雄・昭和大学名誉
教授、王雪梅・王育徳令夫人、宗像隆幸・台湾独立建国聯盟中央委員、小林正成・台湾独
立建国聯盟日本本部執行委員、趙天徳・元黄昭堂先生秘書から、それぞれに深い思いの籠
られたお話しをいただきました。

 小田村会長のお話の途中で安倍晋三・元総理も見え、9月に訪台した折に黄昭堂先生とお
会いになったときのことなどを話されました。

 会場には、中学生のころからのお付き合いだったという河元康夫・前在日台湾同郷会会
長や台湾青年社からのお付き合いのある廖建龍氏、宮崎正弘・評論家、水島総・日本文化
チャンネル桜社長、藤井巌喜・拓大客員教授、藤岡信勝・新しい教科書をつくる会前会長
など、登壇してお話しいただきたい方が何人もいらしていました。

 思い出を語るの後は荏原健太氏が黄昭堂先生に捧げる唄を数曲歌い、黄文雄・前台湾独
立建国聯盟日本本部委員長による閉会の挨拶を終えられたのは予定を1時間もオーバーして
いましたが、黄正澄様はじめご遺族の皆様も深く満足されていたようです。

 後援いただいた諸団体の多大なご支援、そして在天の黄昭堂先生の御見守りもいただい
たようで、後に残った者たちが黄昭堂先生のご遺志を継がんとする気合にも満ちた「お別
れの会」を滞りなく終えることができました。

 下記に、会場で紹介された李登輝元総統などの弔辞をご紹介します。

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黄昭堂先生お別れの会・弔辞[李登輝、蔡焜燦、蔡英文、渡部昇一、櫻井よしこ]

 この度は黄昭堂先生の突然の訃報に接し、非常に驚くと共に長年の良き友人を喪ったこ
とを知り愕然としました。御遺族の皆様にはどのようなお慰めのお言葉を申し上げてよい
か分かりません。茲に謹んで哀悼の意を表します。

 黄昭堂先生はその生涯を懸け、台湾の真の独立建国のため、台湾の民主化のため、持て
る力を存分に尽くされました。その御功労は計り知れません。

 黄昭堂先生のこれまでの御尽力に深い感謝の意を表します。

 黄昭堂先生は、今も、これからも、きっと「千の風」になって、台湾を見守ってくれて
いると信じております。改めて茲にご冥福をお祈り申し上げます。

  二〇一一年十二月二十日

                               台湾元総統 李 登輝

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 「ボス」、斯う言って貴方をお呼びすると、「とんでもない、そう呼ばないで呉れ」と
貴方は何時も断っておりましたね。約廿年前からの事です。

 時を経る毎に私がこの呼び方を変えない為、諦められたのか、「ボス」とお呼びする度
に何時も元気なお声で「ハイ」と答えておられましたね。そして月日を重ねる毎に、私の
「ボス」に対する尊敬の念は高まるばかりでした。

 その私の尊敬する「ボス」がお別れの言葉を一言も言わずに逝かれた事、残念でなりま
せん。

 憶えばあなたが天に召される二日前、十一月十五日夜、台北の国家音楽堂で行われた「あ
りがとう台湾」のバイオリンコンサートで、日本の名バイオリニスト久保陽子氏と台湾大
学交響楽団の力のこもった演奏に貴方は非常に感動し、隣席におった私にしきりに話しか
けて来ましたね。

 「すばらしい!」「最高だ!」「どうだ! 学生達は皆、私の可愛い後輩だ!」貴方は興奮気味に言っておられましたね。

「ボスもバイオリンをやっていましたね」
「そうだ。コンクールに出た事もあったよ」
「ホウ!」
「三位だったよ」
「ホウ!」
「まあ、参加者は三人だけだったがね……」
「……」

 今でもこの会話が私の脳裏にこびりついています。流石! 我がボス!! 当日は十一時
頃に御自宅までお送りしましたよね。

 十六日夜、私に日本の愛媛からおいでの客があり、当夜の宴会に自由時報会長呉阿明氏
と「ボス」に助人を頼みましたね。十七日朝、軽いオペがあるにもかかわらず「ボス」は
心良く参加して呉れましたね。席上、松山のお客さんからこんな質問がありましたね。

「蔡さん、来年一月の選挙はどうですか?」
「ハイ、勝ちます。しかし、勝つからと言って油断はなりません。緊褌一番闘わねばなり
ません」

 酒を一口ガブッと飲んでニヤッと笑った我がボスのお顔が見えました。あとで考えると、
「ボス」に対する最後の小さなプレゼントになったのではないかとも思います。

 あの日も御自宅にお送りして、「お大事に」「ハイヨー お休み!」が我々二人の別離
の言葉になったのですね。

 一片の私心もなく、生涯を祖国台湾のため活動されてきた「ボス」。その「ボス」と苦
楽を共にして来られた同志の方々、唯々頭が下がるばかりです。

 何卒安らかにおねむり下さい。

 わが友よ君にこやかに旅立ちて残されし我ひねもす悲し

  二〇一一年十二月二十日

                         李登輝民主協会 理事長 蔡 焜燦

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 心より尊敬する黄昭堂先生、謹んでお別れのごあいさつをいたします。

 今日は、先生の教え子たちが多く集まっているかと思います。私自身は、先生の教え子
ではありませんが、先生からは大いにご指導を受けておりました。

 黄昭堂先生は、若きより異国の日本で多くの先輩方と台湾の独立運動に関わっておられ
ました。日本は自由な国とはいえ、それは自分とご家族を犠牲することに留まらず、時に
は命懸けとなる危険な活動なのであります。三十四年に及ぶ自国の政治迫害から自由の身
になれたのは一九九二年のことでした。先生の経験されたことは、われわれの想像を上回
るものだろうと今でも思います。

 愛する故郷のため恐れを知らず、勇敢な戦いぶりを想像させられる黄昭堂先生ですが、
接していれば本当は懐が深く、心が優しく、包容力がある方だと先生とお話しするたびに
思います。ずっと後進の私のために、これまで、時には静かに支えてくださったり、時に
は、先頭に立って声をあげて応援してくださいました。

 ついこの間、先生とお会いしご意見をお伺いしたことが今でもはっきりと目に浮かびま
す。訃報を受けたときは、驚きと悲しみで、ただぼう然と立ち尽くすばかりでありました。
今後もご指導にあずかりたいと願っておりましたのに、痛惜の念に堪えません。正澄様、
正憲様、正嘉様、あなた達をお慰めする言葉も今は見つかりません。一生を台湾独立運動
に捧げられたお父様へ改めて御礼を申し上げます。

 悲しみに浸るばかりでなく、先生の志を継ぎ、全力を尽くすことを誓うしだいでありま
す。黄昭堂先生、安らかにお眠りください。そして、本当にありがとうございました。

  二〇一一年十二月二十日

                            民主進歩党 主席 蔡 英文

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 黄昭堂先生のご逝去は、台湾にとっても日本にとっても大なる損失であります。心から
ご冥福をお祈り致します。

  平成二十三年十二月二十日

                          上智大学名誉教授 渡部 昇一

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 黄昭堂先生の偉大な魂に心からの敬意を表します。

 日本に留学され三十四年間、日本を拠点に、愛する祖国台湾のために闘い続け、帰国な
さってからも台湾独立への闘いを続けられた黄昭堂先生。強い祖国愛と強靱な精神ゆえに、
苦しい闘いの日々においても、先生は終始穏やかな笑みを絶やされませんでした。

 その奥深い微笑みに接する度に、黄昭堂先生の台湾独立にかける想いを、私は、そして
日本人はどこまで共有し得ているかと、自省し、心をひきしめたものです。

 間もなく台湾の命運を決する選挙となります。台湾の人々は、必ず、台湾が台湾人の国
であることを証明して下さると思います。台湾の人々の正しい決断がなされるよう、天に
おられる黄昭堂先生が守って下さるのを信じています。

 苦難の道を斯くも長きにわたって歩まれながら、斯くも穏やかで寛容なお人柄を貫きと
おした偉大なる黄昭堂先生の御魂の安かれと、心から祈り、これからもずっと台湾の誠実
な友人であり続けたいと切望いたします。

  二〇一一年十二月二十日

                                   櫻井 よしこ