図解 孫子兵法 単行本 – 2016/9/14
家村 和幸 (著)
2500年前に書かれたとされる『孫子』が時代を超えて今も読み継がれ、さまざまな分野で活用されているのはなぜか?
元陸上自衛隊戦術教官であり、兵法研究の第一人者である著者が「孫子十三篇」を徹底的に図解し、戦史上の事例を提示しながら分かりやすく解説。
さらに『孫子』の中でも難解とされてきた記述箇所も、戦略的視点と戦術的視点から「複眼的」に分析することで、矛盾することなく解釈。
不朽の兵法書『孫子』を総合的にとらえた決定版!
今から二千五百年以上も昔の春秋時代に書かれた『孫子兵法』が、日本において古くから武士の基本的な教養書とされ、今日でも政治家、スポーツ選手、ビジネスマンに幅広く活用されているのは、十三篇から成るその記述体系が、「戦略的思考」のプロセスそのものだからである。
本書は、急速に変化する現代において、自ら考え、判断するために必要不可欠な、この「戦略的思考」を身につけるため、和漢古今の兵法の原点ともいうべき『孫子兵法』を、図解や事例を交えながら、できるだけ平易に解説したものである。
このため、本書では、全十三篇の内容を各篇ごと個別に読んで解説するだけではなく、異なる五つの観点から『孫子兵法』を立体的に捉えることができるようにした。
第一章では、名将たちが座右の書とした『孫子兵法』の全体構成や各篇の概要を紹介しながら、戦略・戦術および兵法とは何か、「戦略的思考」とはどのようなものかを現代的な視点から解説するとともに、現代社会における組織や業務に活かすためのポイントを提示する。
第二章では、不朽の兵法書とされる『孫子兵法』が、いつ、どのようにして日本に入ってきたか、そして、どのような影響を及ぼしたのかについて、歴史的に解説する。 第三章では、『孫子兵法』第一篇「始計」から第十三篇「用間」までの全十三篇を、各篇ごとに「概要」「原文(読み下し文)」「現代語訳」「解説」の順で提示しながら理解を深めていく。
第四章では、『孫子兵法』全十三篇を総括し、「敵を知る」「己を知る」「地を知り、天を知る」のそれぞれが真に意味するものは何かについて詳しく論じる。
第五章では、『孫子兵法』が、日本において武士の基本的な教養書とされ、その思考や行動の根底を為したことの一例として、幕末の天才的兵法家・吉田松陰のエピソードを紹介する。
現在、『孫子兵法』として伝わるものは、春秋時代に孫武によって書かれ、秦の始皇帝による焚書坑儒でいったんは消失した『竹簡本』と、のちに魏の武帝(曹操)が残存していた竹簡の欠片を元に再編纂し、注を加えた『魏武注本』の二種類に分けられる。当然、それぞれの『孫子』には異なる記述が見られ、どちらも正しいことを論じているにもかかわらず、読者にはまったく逆のことを述べているかのような誤解や混乱を招いてきた。そこで本書では、このような部分についてはどちらの記述も取り入れて併記しながら、その前提の違いをわかりやすく解説した。
また、原書が漢文であるため、本によって読み下し文が異なり、それゆえに解釈も違っている。そこで、本書では江戸時代の優れた兵法家・山鹿素行の『孫子諺義』から、読み下し文や解釈の多くを引用することにした。