【産経抄】台湾人に生まれた幸福とは…

【産経抄】台湾人に生まれた幸福とは…
【産経抄】台湾人に生まれた幸福とは…

2016.1.18 産経新聞
 

 「台湾人に生まれた悲哀」。台湾の李登輝元総統の名文句は、平成6(1994)年に行われた、司馬遼太郎氏との対談で生まれた。当時、台湾はもちろん、中国大陸でも、発言の真意をめぐって、大きな波紋が広がったものだ。

 ▼この言葉を思い出したのは、韓国の女性アイドルグループに所属する台湾人の周子瑜(しゅうしゆ)さん(16)にふりかかった、厄災を知ったからだ。きっかけは、韓国のテレビ番組で、台湾の「中華民国旗」を振ったことだった。

 ▼中国で「台湾独立派」と激しく非難されて、ネット上の動画で、中国のファンに謝罪する羽目に陥ってしまう。いや、むしろ国民党のかこった悲哀の方がはるかに大きかったかもしれない。謝罪の映像が台湾のテレビなどで流れたのは、総統選の投開票日直前である。

 ▼プライドを傷つけられた台湾人の怒りの矛先は、対中融和政策をとってきた国民党に向けられた。ただでさえ選挙戦を有利に進めてきた野党、民進党の蔡英文主席(59)に、だめ押しの得点を許してしまった。結果は、8年ぶりの政権交代である。

 ▼「『台湾人に生まれた幸福』、これこそ私が人生を賭けてきた目標なのです」。昨年夏に日本を訪れた李登輝氏は、講演で語った。対談から2年後、李氏は台湾住民の直接選挙で選ばれる、初の総統となった。当時、李氏の顧問として対中政策の立案に関わっていた蔡氏は、4人目の民選総統、そして史上初の女性総統である。

 ▼自分たちのリーダーは、自分たちで選ぶ。李氏が植え付けた民主主義は、台湾にしっかり根付いている。この「幸福」を中国の圧力からいかに守り、より強固にするのか。安倍晋三首相とも、すでに非公式に会談したとみられる、蔡氏の政治手腕に期待したい。

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