NHKの偏向報道について [片倉 佳史]

NHK「JAPANデビュー」の放送内容について、ぜひ感想をお聞きしてみたかった
お一人として、日本統治時代や日本語世代の研究なら台湾の第一人者と目されている黄智
慧さんの感想をご紹介した。

 実は、台湾に住むこと13年、台湾に残る各地の日本統治時代の遺構を探し歩き、台湾と
日本の歴史的関わりを記録し、『台湾─日本統治時代の歴史遺産を歩く』『台湾新幹線で
行く 台南・高雄の旅』『台湾に生きている「日本」』などの勝れた台湾本を書かれてい
る片倉佳史氏も感想をお伺いしてみたかった一人だ。

 折しも、5月6日に出されたメールマガジン「片倉佳史の台湾便り」でその感想を詳しく
つづられていた。さすがに台湾通である。NHKに6点からなる釈明を求めている。

 感想として「台湾の方々のコメントを都合のいいように利用して自説を主張するという
報道姿勢(モラル)が許せません」とある。我が意を得たりの思いだ。

 このメルマガでは「JAPANデビュー」の台湾担当ディレクターである濱崎憲一氏に
よる柯徳三氏への姑息な隠蔽工作も明かされている。どうぞじっくりお読み下さい。

                 (メールマガジン「日台共栄」編集長 柚原 正敬)

■台湾特捜百貨店
http://www.katakura.net/xoops/html/


NHKの偏向報道について

                                    片倉 佳史

 4月5日に放映されたNHKのシリーズJAPANデビュー「アジアの一等国」。その悪辣な偏向
報道は様々な方面から批判されているので、読者の皆さんもご存じかと思います。偏向姿
勢、勉強不足、ご認識はさることながら、あからさまに台湾の方々のコメントを切り貼り
編集していることには、正直なところ、怒るよりも前に、驚いてしまいました。

 個人的な心情としては、やはり台湾の方々のコメントを都合のいいように利用して自説
を主張するという報道姿勢(モラル)が許せません。また、コメントの一部分を切り貼り
しながら編集し、発言を別の方向へ導いていくという手法。そして、台湾の戦後史、人々
の暮らし、現在の姿から敢えて目を背けているような部分が多く、誤解を招きやすい内容
であることは誰の目にも明らかです。

 具体的な問題点の指摘は様々なところで行なわれているので、繰り返しません。また、
解釈や見解の違いというものもあるのですが、製作者たちの態度を伝え聞いていると、ど
うも開き直っているようにしか見えません。とりわけ、以下についてはぜひ釈明をしてほ
しいところです。

●台湾人が日本統治時代以前に話していた多数言語は「中国語」ではなく、いわゆるミン
 ナン語(現在の通称は台湾語、ホーロー語)です。つまり昔から北京語を話していたわ
 けではありません。これでは戦後に国民党政権が人々に強いた北京語使用や言語弾圧が
 妥当化されてしまいます。

●台湾の戦後史を全く紹介していないのはなぜ? 戦後との比較の中で日本を語る人がこ
 れほど多い台湾で、これに目を背けてしまったら、あらゆる意味で誤解を生みます。

●台湾の大多数を占める住民について、「漢民族ではない」というのはもはや常識です。
 元来は中国大陸からやってきたという事実はありますが、台湾の地で混血を繰り返し、
 土着化した「漢人系住民」とするべきとでもするべきでしょう。性格についても、いわ
 ゆる漢民族的ではなく、むしろマレーポリネシア系の人々に近いように感じるのは、台
 湾とある程度のつきあいのある外国人にとっては常識です。

●「日台戦争」。何人もの台湾人からこれは何のことですか? と聞かれました(苦笑)。
 出演者の方に尋ねても、必ず「え!何ですか、それは?」と問われる始末。領台時の激
 しい戦闘は事実ですが、こんな言葉をご丁寧に作り上げるその意図って何なんでしょう
 か。

●改姓名が強制されたものであるかのようなことを言っていますが、これは誤りです。ま
 た、許可制だったのは事実ですが、基本的には「特権層への恩恵」として許可されたと
 考える方が適切と思われます。なお、今回、出演している方の中にもおられますが、ご
 く一部の「特権層を超える特権層」の方は改姓名をしていません。そして、少々誤解さ
 れやすい言い方になりますが、「全民強制でなかった」というのは、かえって差別主義
 であったことを示しているとも言えますね。

●人間動物園について。翻訳とはいえ、よくぞこんな表現を思いつき、公共電波にのせら
 れたなと思いました。この言葉そのものが非人道的なニュアンスを含んでおり、ネガテ
 ィブな印象が強いですよね。私は縁あってイギリスへ向かったパイワン族の出身地クス
 クス村を訪れたことがあります。現地ではイギリスへ向かった人々を英雄視している雰
 囲気で、ある老人は部族の誇りだと言っていました。これについては先日、「チャンネ
 ル桜」さんがレポートされたので、数日以内に放映されると思います。かなりのスクー
 プだと思います。どうぞご期待ください。

 番組の責任者はあまたの抗議に対し、「全てを表現するのは無理だ」と開き直っている
ようです。そして、「シリーズ全体を見てからものを言ってほしい」と、プロとは思えな
い発言をしています。私たち物書きもそうですが、こういった仕事をしている者は発表し
てきた作品のすべてに責任をもつべきで、こういう言い訳は許されてはならないと思いま
す。そして、釈明はしない、もちろん謝罪もしない。そんな部分からは傲慢な姿勢が見え
隠れしています。

 放映後、柯徳三さんを訪ねた際の収録音源に、濱崎ディレクターが柯さんに送りつけて
きた「視聴者の声」についてのやりとりがあります。その内容は「素晴らしい番組だっ
た」、「ためになった」、そして、「台湾への認識を新たにした」などという耳に良い声
だけをプリントアウトしたものでした。

 そして、インタビュー中に濱崎ディレクターより電話が入り、「さっきのは柯さんだけ
に留めてくれ」と泣きついてきたシーンもあります。柯さんはとても律儀な人格者なので、
すぐに友人に連絡を入れ、コピーを配らないようにストップさせていましたが、なんとも
卑しく、情けないディレクター氏の行動です。

 NHKは特に海外において、日本を代表する放送局と見られることが多いのは周知の事
実です。しかし、この番組の場合、台湾の地に繰り広げられている事実を伝えようとして
いるようには思えません。実際、台湾の出演者は当初「NHK」という名を純粋に信じてお
り、裏切られたと感じている方も多いようです。

 私はたまたま出演者の大半にお会いしたことがあったので、改めてその方々を訪ね、お
話しをうかがいました。そのいくつかは音ブログ「台湾音紀行〜片倉佳史の取材メモ」に
アップしています。『母国は日本、祖国は台湾』(桜の花出版)という著作をもつ柯徳三
さんをはじめ、これまで台湾について、そして日本について、お教えいただいてきた方々
です。どうぞ多くの方にお聴きいただき、この報道の問題点を考えていただければ幸いで
す。なお、この音源はNHKさんに学んで、ほとんど編集はしていません(笑)。

http://www.voiceblog.jp/ktkr2/
台湾音紀行〜片倉佳史の取材日記

 私はいわゆる右翼でも左翼でもなく、「台湾を反日的に描いている」という点について
は特に意見はありません。ただ、「台湾全体が反日的色調である」というのは明らかに誤
解を受けますし、世代差、地域性、属性、時代性、個人の意識の差などが考慮されていな
い時点で、とても言い切れるものでないことは確かです。また、「親日」か、もしくは
「反日」かという分け方も、台湾の方々、特に日本語世代の方々の気持ちというのはそん
なに表面的な言葉で示せるようなものではありません。これはもはや常識と言えるでしょ
う。

 台湾の方々は冷静に、客観的に日本を見てくれていると記しましたが、それはどういう
ことか、チャンネル桜が行なった藍昭光さんのインタビューがあります。とてもいい内容
なので、こちらもご覧ください。

http://www.youtube.com/watch?v=8SOhCw4w_5M&feature=response_watch

 最後に、番組製作にあたっては総督府が残した資料2万6千点・・・とありますが、こ
れってありえますか?何ヶ月この番組に費やしたのかは不明ですが、ただでさえ未公開の
資料が多く、しかも文語体で記された資料をそんなに早く読みこなせますか(目で文字を
追うだけならともかく)。ある意味、これが最も明らかな「嘘」なのではないでしょうか?

 それと、フランス人の学者が偉そうなコメントを出しているのはお笑いでしたね。自分
たちが過去に世界でしてきたことを棚にあげて(笑)


●NHK「JAPANデビュー」問題を解決するため─日本李登輝友の会にご入会を!

 NHK「JAPANデビュー」問題が起こってから、日本李登輝友の会に入会される方
 が急激に増えています。この問題の解決のために本会をご支援いただける方は、ぜひご
 入会をお願いします。下記の「入会お申し込みフォーム」からですと、お手軽に申し込
 みできます。「入会案内」はホームページをご覧ください。(日本李登輝友の会事務局)

 ■入会お申し込みフォーム  http://www.ritouki.jp/cgi-bin/enquete/form0005.reg

■入会案内 http://www.ritouki.jp/guidance.html

●「日台交流基金」にもご協力をお願いします!

 1口=2,000円(5万円以上の篤志者の方には特典があります)

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【加入者名】日本李登輝友の会 【口座番号】00110−4−609117

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・会員の方は、機関誌『日台共栄』に添付の郵便払込取扱票をお使いください。

☆郵便貯金口座
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 ください。
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●編集発行人:柚原正敬