今年一月、『壱週刊』の李登輝インタビュー記事が掲載されて以来、「李登輝氏が親中
派に転向した」と誤解されているが、三月二十五日に都内で開催された日本李登輝友の会
の総会で記念講演を行った黄昭堂・台湾独立建国聯盟主席は「李登輝前総統は転向してい
ない」と断言した。
黄主席は言う、「事実を歪曲することで知られる三流雑誌『壱週刊』は案の定、李登輝
発言を歪曲した」と。その結果、台湾の独立派はみな、李登輝氏が転向したと誤解し、怒
っている。
何がどう誤解されているのか。
(1)
李登輝氏は「台湾独立を放棄した」とされるが、それは違う。(アンケート調査による
と)現在、台湾人の六八%が台湾人意識を持っている(自分は中国人ではない、台湾人だ
と)。李登輝氏が総統就任時の段階では「自分は台湾人」は五%にも満たなかった。また「中国が反対しなければ台湾独立を望む」も六二%。「反対しても独立」は五四%。「だ
から台独を言って、それを望まない少数派を刺激しても仕方なく、それよりも社会建設を」と言うのが李登輝氏の考え。また台独を言っては、台湾が中国から独立するように取られ、
マイナス。「だから言わないようにしよう」と言うことだ。
李登輝氏の考えは「台湾はすでに独立している。中華民国は消滅している。なぜ独立を
言うのか」。一方、それに対して民進党の考えは「台湾は独立している。その名は中華民
国」。だから李登輝氏の考えは民進党より進歩している。ちなみに黄主席の考えは「台湾
は事実上の国。法的には独立していない」と言うもの。
(2)
李登輝氏は対中国開放を言って親中派になったとされるが、実際には「台湾の資本が中
国へ行った。それを取り戻せといっても無理。(だから開放を)」と言いうもの。
(3)
李登輝氏は「中国を訪問したがっている」とされるが、実際には「奥の細道、孔子の道、
シルクロードを歩いてみたい」と言っただけ。
黄主席は、『壱週刊』より『SAPIO』のインタビュー記事の方が「本当の李登輝発
言」だと言う。そこで李登輝氏に「今度、日本李登輝友の会の会員の前で講演をするが、
そのように伝えていいか」と聞くと、「その通り」と答えたと言う。「八十歳を超えた人
間が転向することは不可能」と言うのも、黄主席の一つの結論。それでも独立派は誤解し
て、まだ怒っている。「誤解は解かなければならない」と。
なお黄主席は、中国から「台独の一番の親玉」と言われてきた李登輝氏が、台独をやめ
るのは歓迎すると言う。なぜなら、「それなら私が一番の親玉と言うことになるから」だ
とか。
『SAPIO』(二月二十八日号)を読もう。李登輝氏の「転向」など、根も葉もない
ことであることがわかるはずだ。
(永山英樹記)