し)氏には、毎月、本誌にご寄稿いただいている。つい先般も、習近平が台湾に対して改めて「平
和統一、一国二制度」を呼びかけたことをテーマにご寄稿いただいた。
迫田氏は昨日の東京新聞において香港のデモをめぐって、台湾の馬英九総統が支持を表明した背
景について解説記事を書いている。下記にご紹介したい。
馬英九氏は台湾で起こったひまわり学生運動を批判したが、香港の学生らによる抗議デモは支持
した。なぜか、来月末に行われる統一地方選挙のためだと指摘する。
迫田氏は本誌で「台湾の馬政権も市民の批判を浴びながら傾中路線を推進してきたが、結局は統
一すれば、中台対等の立場ではなく、台湾はあくまでも香港と同じ特別行政区の地位でしかないこ
とを思い知らされたのではないか」とも指摘していた。
中国との統一をめざす馬英九政権に、中国の提案する「一国二制度」が空手形でしかないことを
知らしめたとしたら、それは香港の学生たちの命を懸けた抗議活動の賜物だ。
台湾、香港学生を支持 一国二制度の形骸化を懸念
【東京新聞:2014年10月7日】
【台北=迫田勝敏】2017年の香港行政長官選挙をめぐる学生らの抗議運動を、台湾市民は重大な
関心を持って注視している。中国との関係緊密化を進める馬英九総統も来月下旬の統一地方選挙を
控え、「民意に耳を傾けるべきだ」と支持する。中国は「一国二制度」での台湾統一を目指してお
り、長官選制度の見直しに応じない中国の姿勢に、台湾では一国二制度を形骸化させようとしてい
るとの懸念が広がっている。
台湾メディアは連日、香港の運動を大々的に伝えている。一日夜には台北市などで学生支援集会
を開き、立法院(国会)でも「香港の普通選挙の実現を支持する」(国民党立法委員)など、与野
党ともにデモ支持の発言が相次いだ。
与野党の声に押されるように馬総統が学生支持を表明した背景には、2年後の総統選の前哨戦と
位置付けられる来月29日の統一地方選があるとみられる。
今春、馬政権が目指した中台サービス貿易協定をめぐり、台湾学生が政権の「中国傾斜」を批
判、立法院を占拠し、承認阻止に追い込んだ「ヒマワリ学生運動」は急速な対中接近に対する台湾
社会の不信感を浮き彫りにした。それだけに今回の香港の運動を批判すれば、地方選で国民党の得
票減は必定。その一方で、中国を刺激しない言い回しでの学生支持になった。
1997年に香港が英国から返還された際、中国は経済、社会などの制度は50年変えない一国二制度
を公約した。中国が香港の運動に強硬姿勢を貫けば、一国二制度は結局、返還実現のための空約束
になる恐れがある。台湾市民が運動を注視するのはこのためで、最大野党、民主進歩党の蔡英文主
席は「今日の香港は明日の台湾だ」と強い警戒感を示した。
中国の習近平国家主席が先月26日、一国二制度での台湾統一を目指す方針を表明したのに対し、
台湾総統府は即座に「受け入れられない」と拒否。統一派と目される馬総統はジレンマに直面して
いるといえる。
<一国二制度>
社会主義の中国に資本主義を併存させる制度。本来は台湾統一政策として構想されたが、1997年
に英国から返還された香港と、99年にポルトガルから返還されたマカオに適用。中国共産党独裁下
の中国における「特別行政区」として、外交と防衛を除く「高度な自治」を認め、返還前の社会、
経済制度や言論の自由などを50年間維持することを保障しているが、政治改革など重要事案は中国
の承認が必要となっている。 (共同)