レードを行い、盧溝橋事件から78年を迎えた昨日(7月7日)からは3日間にわたって「抗日戦争の
歴史と記憶の真相をひも解く」として、台北市内で国際シンポジウムを開いている。その模様を産
経新聞が「世論と中国、日本の三方の顔色をうかがう迷走ぶりが目立っている」と報道しているの
で、下記に紹介したい。
ところが、台湾ではこのような馬英九氏に対し「台北市の柯文哲市長は『抗日の何を祝おうとい
うのか』と一蹴し、日本が降伏した記念の地とされる『中山堂』で予定されていた記念イベントを
中止した。台湾では今、抗戦勝利記念の『不要論』が広がっている」(7月7日付「FOCUS-ASIA.
COM」)と伝えている。
大東亜戦争当時、台湾は日本の統治下にあった。当時の台湾総督府の発表によれば、台湾人の日
本軍への従軍志願者は172万6,384人にものぼり、実際に採用されたのはわずか4,525人だった。実
にその倍率は381倍にも及んでいた。米軍は台北市内を空襲し、台湾人も犠牲になっている。
このような歴史をもつ台湾にとって、中華民国はアメリカなどとともに当時の敵国だった。とも
に「抗日戦争」の勝利を祝う謂れはない。柯文哲市長が「抗日の何を祝おうというのか」と一蹴
し、台湾で抗戦勝利記念「不要論」が広がっているのも宜なるかなである。
馬英九氏が台湾の民意とかけ離れていることを、またしても裏づけてしまった「抗日戦争勝利70
周年」記念イベントだ。
大東亜戦争には、台湾から20万7,193人が軍人・軍属として出征し、現在、靖國神社には3万304
人の台湾出身戦歿者が祀られている。馬総統こそ李登輝元総統に倣って参拝すべきであろう。
台湾の馬総統「抗日勝利70周年」で迷走 親日世論と中国の板挟み 「私は友日派」
【産経新聞:2015年7月7日】
【台北=田中靖人】台湾の馬英九総統は、日中戦争の発端となった盧溝橋事件から78年となった
7日、台北市内で行われた「抗日戦争勝利70周年」を記念する討論会で演説した。馬氏は「中華民
国」が日中戦争に勝利した意義を改めて強調したが、世論と中国、日本の三方の顔色をうかがう迷
走ぶりが目立っている。
馬氏は、国民党と中国共産党の内戦や東西冷戦の陰で、「中華民国が抗日戦で流した血と涙や、
第二次大戦への貢献が忘れられていた」と訴えた。
討論会の出席者約300人には、旧日本軍支那派遣軍が南京で国民党軍に降伏した際の文書など、
台湾当局が所蔵する史料のコピーが配られた。
国際的な地位向上や、戦後の中国国民党による台湾統治の正当化、何より日中戦争の主役が国民
党であったことをアピールしたい馬政権は、中国と競うように、日中戦争の勝利を祝う式典を次々
と行っている。
だが終戦まで日本の統治下にあった台湾の人々の間で、対日感情は良好だ。馬氏は「私は反日派
でも親日派でもない。友日派だ」と弁明。さらに「恩と恨みを分ける原則に立ってこそ、中華民族
と大和民族は長い友情を築くことができる」と述べ、日台関係への影響を懸念する声に配慮した。
一方、台湾の内外メディアには同日、「重要外交談話が発表される」との事前連絡があった。日
中戦争を中国共産党が主導したと主張している中国側に「歴史を直視せよ」と呼びかけるとの観測
もあったが、馬総統は演説では中国批判を控えた。同日開かれた別の式典でも「大陸(中国)の報
道は受け入れられない」と述べるにとどめた。
背景には、中国側が昨年来、公の場で国民党軍の功績を認め始めているという事情もありそう
だ。