【宮崎正弘の国際ニュース・早読み:平成26年(2014)10月7日】
香港の学生(それも八割が高校生)、知識人、そして市民参加の座り込み抗議活動は、世界のメ
ディアから「雨傘革命」と命名された。
殆どの世界のジャーナリズムが報道しただけに、北京は国内報道を規制し、ほぼ黙殺し、20日か
らの四中全会への影響を未然に防ぐことに躍起となる。
今回の香港学生運動は、歴史的視点にたてば、いかなる意味を持つか?
第一に西側メディアが1989年6月4日の天安門事件との類似を挙げ、共産党の暴力支配、人権無
視、非民主的中国というイメージを増幅させた。これは学生の意図したことでもあり、中国への警
戒を呼び覚ました意味でも成功と言えるだろう。
第二に香港のかかえる「一国両制度」の矛盾を余すところなくさらけ出し、共産党の全体主義が
いかに横暴かつ独裁的かというイメージを西側に人々の脳裏に蘇らせ、経済繁栄ばかりで商売に結
びつけばそれでよいのかという疑問を抱かせるに至る。
ビジネスライクの華僑と共産党支配を嫌悪して逃げてきた人々は政治的無関心で生きてきたがそ
の末裔たちは政治の発言を活発化させたことに中国は驚く。
第三は、学生達が中国共産党の統治の正統性を問題視したことである。
すなわち選挙を経ての民意がまったく反映されない暴力革命の指導者らが何ゆえにまだ権力を継
承しているのかという根本問題である。不当な権力の継続は「経済繁栄」のメッキがはげるととも
に浮かび上がった。
第四に習近平が唱える「中国の夢」なるものを香港の若者らが嘲笑しており、習の下台(辞職)
を要求するに至ったことである。
学生らは中国の経済政策さえ「かれらの利益のためのもの」と総括しており、香港の裏の統治者
である中国共産党指導部のメンツを失わせた。
そのうえ、中国との領土、領海紛争をかかえるベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシ
ア、ブルネイがこぞってマスコミに大きく取り上げさせ、成り行きに異常なほどの関心を示した。
中国が妥協せず、「核心的利益」といまも香港に対して言い続けている事態は、領土問題とおな
じレベルである。
不利になると時間稼ぎをし、すこしだけ譲歩してほとぼりが冷めること、指導者を逮捕する。組
織を壊滅させる。あの方法をこんども中国は選択するだろう。