昨日から台北市の圓山大飯店にて李登輝前総統が理事長の群策会主催による国
際憲法シンポジウムが開かれ、日本からは5人招待されています。本会からは小
田村四郎・会長(前拓殖大学総長)、伊藤哲夫・常務理事(日本政策研究センタ
ー所長)、宗像隆幸・理事(アジア安保フォーラム幹事)の3氏、残りの2氏は
長尾龍一・東大名誉教授とペマ・ギャルポ・チベット文化研究所所長です。
このシンポに陳水扁総統も出席し、「台湾新憲法の内容を問う住民投票を2006
年末までに実施し、新憲法を2008年5月に施行する」と述べたことを、本日付の
朝日新聞が伝えています。
因みに、陳総統は、李登輝前総統が新憲法制定を発表した後の昨年9月末、同
様の新憲法制定案を提示していましたが、総統就任演説では大幅修正案に変更し
ていました。
1946年12月25日に制定され、翌1947年12月25日に施行された現中華民国憲法の
憲法改正手続きは第174条に定められていて、立法院で委員の四分の三(75%)の
賛成を得なければ修正案は通過できず、さらに、その修正案は300人の国民大会代
表を召集し、その四分の三の賛成を得なければ修正案は成立せず、日本国憲法の
改正規定(国会の三分の二、国民の過半数の賛成)よりも厳しい規定です。
*第一七四条 憲法の改正は、次の手続の一によって行わなければならない。
一 国民大会代表総数五分の一の発議により、三分の二の出席及び出席代表の四
分の三の議決によって改正することができる。
二 立法院立法委員四分の一の発議により、四分の三の出席及び出席委員四分
の三の議決に基づいて、憲法改正案を作成して国民大会にその承認を提議す
ることができる。
この憲法改正案は、 国民大会開会の半年前に公告しなければならない。
李登輝前総統は、総統時代に6回修正されたそうですが、それでも大陸ではな
く台湾にその憲法を当てはめたことによる矛盾は覆いようもなく、それ故に台湾
住民の意思を反映した「新憲法の制定」を唱導されています。
なお、周知のように日本国憲法は、主権がほとんど制限されていた占領下の昭
和21年(1946年)11月3日に公布、翌22年(1947年)5月3日に施行され、中華
民国憲法はまったく同時期に大陸で制定・施行されて、1949年12月、蒋介石とと
もに台湾に持ち込まれています。
日本も本来は改正ではなく新たに制定されることが望ましいのは言うまでもあ
りませんが、少なくとも日本人を対象として制定された点では、台湾人が一切か
かわることなく制定された憲法を押し付けられている台湾よりまだましといえる
かもしれません。それ故に、台湾では、台湾意識の高まりとともに、住民の意思
を反映した新憲法を制定しようという動きが活発になってきています。
その点で、日台の憲法は、江藤淳氏が命名したように同じ「1946年憲法」であ
り、そこに住む住民の意思が反映されていないという共通点を持っています。
(編集部)
*中華民国憲法 http://www.roc-taiwan.or.jp/law/law.html
台湾新憲法、総統が日程に初言及「08年5月施行」
【朝日新聞 11月28日】
台湾の陳水扁(チェン・ショイピエン)総統は27日、12月の立法委員(国
会議員)選挙で与党連合が過半数を獲得した場合、「台湾新憲法の内容を問う住
民投票を06年末までに実施し、新憲法を08年5月に施行する」と述べた。中
国が強く反発していた新憲法をめざす動きについて具体的な日程に言及するのは
、総統再選後初めて。
台湾の憲法をめぐる国際シンポジウムで述べた。「台湾の民主社会を一層固め
るために新憲法が必要」と強調。その道を開くうえでも民進党、台湾団結連盟(
台連)の与党連合による過半数獲得が必要だと訴えた。
陳総統は総統選挙を控えた昨年、「住民投票による新憲法制定」を提起し、中
国が強く批判した。再選後は「大幅な憲法修正」に表現を和らげ、06年の住民
投票実施を含む日程には言及していなかった。