読売新聞が台湾入り中国地図を訂正

いささか前の話になるが、7月8日付の読売新聞がウイグル弾圧事件を報ずる記事の中で
「漢族と少数民族の分布図」を掲載した。ところが、中国における漢族と少数民族の分布
を描いたこの地図で、なんと漢族が住む地域として台湾が描かれていた。つまり、台湾を
中国の領土の一部としていたのだ。

 そこで7月10日午前、訂正を求めて東京本社の読者センターに連絡した。応対した女性
に「地図は本文をより分かりやすく解説しようとして掲載したもので、地図にも『中国』
という国名しか表記されていませんから、これは『中国における漢族と少数民族の分布図』
ということですね」と問うと、口ごもりつつも「はい……」。

 そこで「そうすると、この地図では台湾は中国の領土として描かれているが、台湾は中
国の領土ではなく、日本政府の見解とも違っている。このような地図は読売新聞社の見解
に基づくものか」と問い質した。

 ところが、「中国事情は複雑で……、これは民族の分布図で……国際部は……」とかな
んとかさっぱり要領を得ない。そこで「では、台湾は中国領というのが読売新聞の見解で
あると発表していいんですね」と問い詰めると、応対した女性は焦ったような声で「待っ
てください。上司と替わります」と一方的に電話を上司とやらに回された。

 その上司とやらは怒った口調で「ここは読者センターで、社としての見解をコメントす
るところではない。発表するんだったら、広報に聞いて下さい」と言って、これまた一方
的に広報に回されてしまった。

 さすがに広報は手馴れた感じで、こちらの言い分を聞いた上で「では、今のことを書面
でいただけますか。来週、回答します」との返事だった。そこで、下記のような書面を作
成して広報宛にFAXした。

 7月12日、10日付の読売新聞が「基礎からわかるウイグル情勢」として、1面を割いてウ
イグル族について解説していて、そこに「漢族と少数民族の主要居住地域と人口」という
キャプションの地図を掲載していたことを知った。8日掲載の「漢族と少数民族の分布図」
と同じ地図だ。なんとこの地図からは台湾が削除されていた。

 今週に入って広報からの返事を待っていたが、なかなか来ない。15日、知人でもある読
売の記者から連絡が入った。「あれはまずかった。台湾は中国の領土ではない。すでに10
日付の紙面で訂正地図を掲載した」と言う。「今後、あのような地図を掲載することはな
い」とも言う。

 読売新聞社としては「お詫び」や「おことわり」を掲載せず、実質的に訂正したことを
もってこの問題に幕を引きたい意向のようだった。

 回答すると返事しながらこのような手法を使ってくることは姑息であり、違和感を覚え
た。だが、出し遅れの証文にもならない「回答」を出してくる朝日新聞や、自己弁護に終
始する「回答」を寄せるNHKに比べれば、読売新聞にはまだまともな感覚がある。少な
くとも台湾が中国の領土ではないと認識していたが故に、訂正地図を掲載した。

 ただ、読売新聞社内にいまだに台湾問題に鈍感な記者やデスクがいることも、この地図
問題で判明した。新聞は「第4の権力」であり、世界一の発行部数を誇る読売新聞である
が故に、その影響力は小さくない。今後、台湾問題ではけっしてこのようなミスリードを
しないよう願いたい。

 それにしても、先般の朝日新聞「誤報地図」問題(5月26日付国際面「核兵器をめぐる
現状」地図)といい、今般の読売新聞の地図問題といい、本会関係者や本誌読者らからの
抗議と訂正を求める声は、だんだん大きくなっている。これも、外登証問題やNHK「J
APANデビュー」問題がもたらした成果の一つと言える。

 台湾を中国の領土を表記する地図は、未だ教科書から消えていない。教科書からこの地
図を削除させるのが最終目標である。今後とも皆様のご支援ご協力をお願いします。

                     (日本李登輝友の会事務局長 柚原 正敬)


                                 平成21年7月10日

読売新聞 広報様

                       日本李登輝友の会事務局長 柚原 正敬

 それでは、ご依頼に沿って先ほど申し上げた抗議と要望を書面にて提出いたします。

 7月8日付の貴紙第6面の国際面に佐伯記者による記事が掲載されています。その本文で
「中国の55の少数民族」と記述しています。それをさらに分かりやすく図版で解説しよう
として掲載したのが「漢族と少数民族の分布図」かと思われます。

 つまり、図版に「中国の」というキャプション・タイトルは入っていないものの、「中
国の漢族と少数民族の分布図」であることは明らかです。現に地図には国名として「中国」
と入れていますので、タイトルまで入れると煩わしいということで省略したものと理解し
ています。

 ところが、ここに問題があります。地図の中に漢族が住む地域として台湾が描かれてい
るからです。これは台湾を中国の領土として描いたものと受け取らざるを得ません。実際、
台湾問題などに関心のある人やそうでもない人に見せたところ、この地図では台湾は中国
の領土になっていると答えています。

 しかし、ご存じのように、日本政府は台湾を中国の領土の一部であるとは認めていませ
ん。そうしますと、読売新聞社は政府見解とは異なり、台湾を中国領土と認識してこの地
図を掲載したということになります。また、本文で「中国の55の少数民族」と記述してい
ますが、これも中国政府が発表している台湾の「高山族」を含む小数民族の区分数です。

 従いまして、何の但書きもなく「中国の55の少数民族」と記述し、地図でも台湾を中国
の一部と描く読売新聞社は、我が国政府の立場ではなく、中国政府の見解に基づいて記事
を書き、図版を作成しているということになります。

 これは到底認められる措置ではなく、読者をミスリードする由々しき間違いです。つい
ては、このような記述と地図の掲載に抗議するとともに、速やかに訂正することを要望し、
台湾が中国の領土か否かについての読売新聞社としての見解を求めます。



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