人が日本人とともに闘っていただいた。その中の一人に、意見陳述書を提出された藍昭光
(らん・しょうこう)さんがいる。
日本から送られた判決文を読み、昨日、下記のような嬉しいお便りをいただいた。
≪皆様方の御努力に依り高裁にて逆転勝訴に成りました事を心からお喜び申し上げます。
台湾人と日本人が心を合わせ闘い抜いた結果だと思います。柯徳三先生の奥様に勝訴を報
告致します。NHKは面子上恐らく最高裁に上訴するものと予想しますが、再勝を確信し
て居ります。≫
藍さんは昭和5(1930)年生まれ、旧制台北三中を経て京都大学を卒業した日本語世代の
方だ。NHKの濱崎憲一ディレクターが台北一中卒の台湾人を集めて「JAPANデビュ
ー 第1回 アジアの“一等国”」のために取材したとき、声を掛けられて出席している。
この番組を見たとき「後半に言った言葉(一番大切な結論)は殆ど消されているように
感じ」、また番組内容が「非常に公平公正ではないと感じ」、取材を受けた柯徳三さんた
ちとともにNHKに抗議文を送っている。
ところが、番組放送後の平成21(2009)年6月22日、この番組を担当した田辺雅泰チーフ
プロデューサーと濱崎ディレクターが柯徳三さんの自宅まで来て、「私はNHKに対して
抗議する気持ちはありません」と書かれた紙にサインを求めた、いわゆる「隠蔽工作」を
行っている。
このとき、柯さんの近くに住んでいた藍さんにも声が掛かり、NHK側から提示された
その文面を見て、藍さんは「反省の様子も無く、私達台湾人に対してこのような文面にサ
インを頼む態度は、あまりに台湾人を軽く見すぎていると腹立たしい気持ち」になり、サ
インを拒否してその文面を持ち帰った。
裁判が始まり、藍さんは平成22(2010)年7月、NHKがどのように隠蔽工作を行ったか
について詳細につづった意見陳述書を、サインを依頼された文面とともに提出された。
裁判が進むにつれて、争点がパイワン族の高許月妹さんへの取材状況に絞られたため、
NHKの隠蔽工作は争点とならなかったが、藍さんの意見陳述書を読み直し、改めて「本
件番組こそ、その配慮のない取材や編集等によって、台湾の人たちや特に高士村の人た
ち、そして、79歳と高齢で、無口だった父親を誇りに思っている控訴人高許の心に、深い
傷を残したものというべき」と記した控訴審の判決は正鵠を射ていると思った。