に耳を傾けたという報道には驚かされた。そのときの報道では「早ければ再来週にも原住民の集落
を訪問して意見を聞く」と伝えられていた。
ところが、14日からの再来週どころか、翌週の8月11日に台東県東河郷都蘭村を訪れ、約束どお
りアミ族の人たちの声に耳を傾けた。
同行したのは、プユマ族(卑南族)出身で民進党所属の陳瑩・立法委員(台東県)、アミ族出身
で国民党所属の廖国棟・立法委員(台東県)、アミ族出身で時代力量所属のKawlo Iyun Pacidal・
立法委員(花蓮県)、アミ族出身で民進党所属のKolas Yotaka・立法委員(新竹市)、客家出身で
民進党所属の劉櫂豪・立法委員(台東県)の5人の立法委員で、行政院原住民族委員会の職員も同
行していた。同行したこの布陣に、蔡総統の真摯な姿勢がよく現れている。
蔡総統は都蘭村で次のように話したという。
「これまでの政府は様々な法令を作ってきたが、原住民族こそがこの土地の主人であることを軽視
し、原住民族への配慮を怠ってきた。このため民進党政権は2005年、『原住民族基本法』を制定し
て原住民族の土地、文化、言語を保存しようとしたが、漢民族が台湾を支配するようになってから
すでに400年が経過しており、現実には様々な困難があった。
将来的には原住民族が主体となって歴史問題の解決方法をまとめることを期待しているが、それ
は困難を伴う極めて大きな作業であり、これまでに立法委員や政府関係者たちが取り組んできたも
のの、解決には至らなかった。このため今回は、総統である自分が自ら全国国民と一丸となって取
り組むことにした。これは歴史的責任であり、自分が背負うべき歴史的課題でもある。
困難だからといって、取り組まないわけにはいかない。原住民族の集落に入り込み、すべての集
落の人たちの問題に耳を傾けたい。私たちに機会を与えてほしい。この道のりは険しいが、私は進
んでいく。皆さんも私と共に邁進してほしい」(Taiwan Today:2016年8月12日)
このように述べた蔡総統は、訪れた都蘭集落を原住民族の自治を実現する「伝統領域」第1号と
して選定することを明らかにしたという。報道によれば、行政院原住民委員会のイチャン・パルー
(Icyang Parod)主任委員(大臣に相当)は、総統府は10月1日に都蘭集落と杉原集落(台東県卑
南郷)を原住民族の「伝統領域」として公告する予定だという。
蔡総統は8月15日には屏東県の三地門郷を訪問する予定だそうで、中央通信社は「次はタオ族が
住む台東県の離島、蘭嶼を訪問する」と伝えている。
蔡総統の原住民問題への取り組みには目を見張るものがある。蔡総統の緻密さと粘り強さという
政治家としての資質がよく現れているのではないだろうか。今後とも注目してゆきたい。
蔡英文総統、台東の集落で先住民と会談
【中央通信社:2016年8月12日】
http://japan.cna.com.tw/news/apol/201608120004.aspx
(台東 12日 中央社)今月1日、台湾原住民(先住民)に対する不平等な扱いについて総統とし
て初めて謝罪した蔡英文総統は11日、東部・台東県の都蘭集落を訪問し、アミ族の人たちと対話し
た。
3日にも総統府前で抗議活動を行っていた原住民の前に現れ、人々の声に耳を傾けた蔡総統。こ
の日集落で開かれた座談会ではアミ族の頭目(集落の代表)2人と肩を並べて座り、参加者からの
質疑に自ら答えた。
原住民プユマ族出身で、今回の訪問に同行した与党・民進党の陳瑩・立法委員(国会議員)は、
「集落で原住民と話し合いを行った国家元首は、これまで一人もいなかった。とても勇敢だ」と称
賛。座談会に出席したアミ族の人々も蔡総統に感謝を示した。
原住民の血を引く蔡総統は、原住民をめぐる諸問題(を解決する過程)には幾多の困難が立ちは
だかるが、だからといって取り組まないわけにはいかないと強調。今後も各集落を訪れて人々の意
見を聞くと述べた。次はタオ族が住む台東県の離島、蘭嶼を訪問するという。
(盧太城/編集:杉野浩司)