統選が告示された。割り振られた番号は、1番が中国国民党の朱立倫・王如玄、2番が民進党の蔡英
文・陳建仁、3番が親民党の宋楚瑜・民国党の徐欣瑩。
正式な選挙戦は本日午前7時にスタートし、来年1月15日まで連日、夜10時まで選挙戦が繰り広げ
られる。1月16日に投票が行われ、即日開票される。
世論調査に見られるように、民進党の蔡英文・陳建仁コンビが圧倒的なリードを保っている選挙
戦だ。経済面での低迷が続き、「9%総統」と言われる馬英九総統の支持率の低さに加え、中国国
民党は総統候補者の人選で混乱し、また王如玄・副総統候補の不動産投資をめぐる不正蓄財疑惑が
持ち上がって非難が集中するなど、支持率アップの資源を欠いている。
一方の民進党は、ひまわり学生運動の成功したことを重要視し、いかに若者の意識を惹きつける
かに力を入れていて、それが選挙戦に奏功しているようだ。
そこで、民進党がどのような「若者戦略」を取っているのかを掘り下げたのが毎日新聞だ。下記
に紹介したい。
台湾総統選 「孤独にさせない」若者ひきつける民進党
【毎日新聞:2015年12月18日】
http://mainichi.jp/articles/20151219/k00/00m/030/076000c
【台北・鈴木玲子】来月16日に投開票される台湾総統選は18日に告示され、選挙戦が本格化し
た。世論調査の支持率では最大野党・民進党候補の蔡英文(さい・えいぶん)主席(59)が首位を
独走しており、8年ぶりの政権交代と初の女性総統誕生の可能性が高まっている。
◇
総統選のキーワードの一つが「若者」だ。昨春、対中経済協定に反発した学生運動は、台湾社会
に広がる対中警戒感を噴出させ、昨年11月の統一地方選での国民党の惨敗につながった。住宅価格
高騰や就職難が深刻化する中、いかに若者の意識をくみ取りながら、台湾社会の未来像を描くのか
は重要な課題だ。
若者戦略で他党より一歩抜きんでているのが民進党だろう。学生運動では、国民党と民進党の激
しい政争も批判にさらされ、台湾の民主化運動を長年リードしてきた民進党に課題をつきつけた。
こうした経験も背景に、党執行部は、戦略を練る青年発展部などのスタッフの大半に20〜30代を投
入。多くが学生運動に参加した経験を持ち、斬新なアイデアを次々と繰り出す。
今月1日、蔡氏は台北市内で人気アニメーターらと対談した。蔡氏がモデルとなったアニメキャ
ラクターの映像が流れるなど選挙活動とは思えないユニークさが際立つ。蔡氏がネコの耳形の飾り
を頭につけると若者から歓声が上がった。
対談ではアニメーターが「アニメ産業の海外移転が増え、中国の業者との競争が激化している。
政府の支援もなく、アニメ産業で働く若者たちは孤軍奮闘だ」と苦境を訴えた。蔡氏は「政権を
取ったら孤独にはさせない」と意気込みを見せた。
民進党はさらに、若者たちに故郷に戻って投票を呼びかける人形劇を各地で展開している。台湾
では有権者が戸籍地で投票することになっており、期日前投票制度もないことから、都会で働く地
方出身の若者らが投票日にどれだけ故郷に戻るかを重視しているためだ。青年発展部の傅偉哲主任
(27)は「政治家と民衆の距離を近づけ、社会と若者の力を引き寄せたい」と語る。
これに対し国民党の朱立倫(しゅ・りつりん)氏(54)は、立法院選に出馬した故・蒋介石元総
統のひ孫に当たる蒋万安氏(36)ら若手候補と対談するなど若い世代へのアピールを狙う。9日に
は人材のハイレベル化による就業対策を打ち出したが、若者への浸透という面で苦戦が続いてい
る。
◆候補者の経歴
朱立倫氏(54)
桃園市(旧桃園県)生まれ。台湾大卒業後、米ニューヨーク大で会計学博士号を取得。台湾大教
授、立法委員(国会議員)、行政院副院長(副首相)などを歴任。10年に初代の新北市長に就任。
昨秋の統一地方選敗北で国民党主席を引責辞任した馬英九総統の後を継ぎ、今年1月に党主席に就
任。
蔡英文氏(59)
台北市生まれ。台湾大卒業後、英ロンドン大政経学院で法学博士号を取得。台湾・政治大などで教
授を務め、00年に陳水扁政権で大陸委員会主任委員(閣僚)に抜てきされた。立法委員、行政院副
院長を経て08年に民進党主席。初挑戦した12年の総統選で落選。昨年5月に再び党主席に就任し
た。
宋楚瑜氏(73)
中国湖南省生まれ。政治大卒業後、米ジョージタウン大で政治学博士号を取得。国民党秘書長や台
湾省長などを歴任。00年の総統選に無所属で出馬したが落選。その後、親民党を創設。04年の総統
選は国民党と協力し副総統候補として、12年は親民党の総統候補として出馬したがいずれも落選し
た。