主張する根拠としてきた九段線は国際法上の根拠がなく、スプラトリー諸島(南沙諸島)について
も、島ではなく「岩」、あるいは「低潮高地(暗礁)」として、領海やEEZ(排他的経済水域)
を形成できないとの判決を下し、中国の全面敗訴となったことは未だ記憶に新しい。
勝訴したフィリピンは「歴史的な裁決」と高く評価していたが、昨年10月に中国を訪問したフィ
リピンのドゥテルテ大統領はこの仲裁裁判所の判決には触れず、南シナ海問題を棚上げするとして
経済支援を引き出した。
12月には、南シナ海問題で中国と戦争はしたくないと改めて表明し、その数日後には「本当に懸
念なら、米国が主導し止めるべきだ」「米国はなぜ中国に『ここは公海だ』と言わないのか」と述
べたと報じられていた。
ところが、4月6日、米中首脳会談がはじまる直前、「軍に命じて領有権を主張する島をすべて占
領し、駐在施設を建設する」と表明し、また「独立記念日の6月12日に、実効支配中のパグアサ島
(中国名:中業島)に現職の大統領として初めて上陸し国旗を掲揚する」とも示唆したという。
口だけでなにもしないオバマ政権に腹を立てていたドゥテルテ大統領だったが、トランプ政権が
着実に南シナ海問題に取り組み、中国の覇権的行動を阻むようになりつつあることを踏まえ、この
ような積極的な発言となったようだ。トランプ効果はここにも現れている。
ちなみに本会は、2016年度の「政策提言」として、中国の南シナ海へのこれ以上の覇権的拡張を
喰い止めるべく、日米台やフィリピンやベトナムなどの沿岸国による共同パトロール(合同哨戒)
実施を提案している。
◆2016政策提言「中国の覇権的な拡張に対し南シナ海の合同哨戒を直ちに実施せよ」
http://www.ritouki.jp/index.php/info/20160404/
南シナ海領有権問題 比大統領が強硬発言
【大紀元:2017年4月8日】
フィリピンのドゥテルテ大統領は6日、中国と領有権紛争中の南シナ海に関する強硬発言をした。
軍に命じて領有権を主張する島をすべて占領するという。
南シナ海に面するパラワン島の軍基地を視察する際に記者団に述べた。対象となるのは9〜10の
島、駐在施設も建設されるという。また大統領は比独立記念日の6月12日に、実効支配中のパグア
サ島(中国名:中業島)に現職の大統領として初めて上陸し国旗を掲揚するとも示唆している。
海上交通の要所であるうえ、豊富な石油や天然ガス資源が眠っているとされる南シナ海は、中国
が最も広い範囲の領有権を主張し、その他にもフィリピン、ベトナム、ブルネイ、マレーシア、台
湾の国々が特定の海域や島、岩礁、環礁の一部の領有権を主張し合い、緊張関係が続いている。
ドゥテルテ大統領はこれまで、南シナ海の問題において中国との対立を緩和させることを優先
し、強硬な姿勢を示すことはなかった。米中首脳会談がはじまる数時間前にあった今回の動きに、
その意図が問われている。
(翻訳編集・叶清)