国家主席の会談において、馬氏が中国が台湾向けに配備している弾道ミサイルなどを後退させるよ
う求めたところ、習氏が平然と「台湾を対象としたものではない」と「世紀の大ウソ」をついた。
これは、馬氏自身が会談後の記者会見で明らかにしたことだが、本誌前号で「こうしたウソを平
然と首脳会議の席でつく習氏の中国に、馬氏はなにも違和感を覚えなかったのだろうか。習氏のバ
レバレのウソよりも、馬氏がなんの反論もしなかった方が気掛かりだ」と書いた。
さもありなん、だった。というのは、行政院大陸委員会が11月9日に非公開部分の発言を公表し
たところ、馬氏はミサイル撤去などを強く求めていなかったことが判明したからだ。
一昨日の朝日新聞はこのことを取り上げ、下記のような衝撃的な指摘をしている。
<公表された発言によると、馬氏はミサイルや台湾侵攻を想定した軍事演習をめぐり、「野党が両
岸(中台)関係を批判する際の口実に使われる。機会があれば善意ある具体的行動を取っていただ
けないか」と述べていた。総統として軍を統帥する立場だが、自身は問題視していないと受け止め
られかねない内容だ。>
立法院の内政委員会も馬氏の発言を問題視し、11月9日、「大陸側のミサイル配備や軍事演習は
政党に関係なく台湾人に向けられている」、「政党に関係なく、ミサイルをなくすことは全国人民
の期待である」として、馬総統に全国民に対して公開で謝罪し、発言を撤回するよう決議したとい
う。サーチナ紙が報じているので下記に紹介したい。
また、朝日新聞は「一つの中国」の原則を確認したとされる「92年コンセンサス」について、
「『共通認識』のはずが、実際には食い違いが大きいことも浮き彫りになった」ことなども伝えて
いる。別掲で全文を紹介したい。
つまり、馬氏は5点を「主張」したというが、何のことはない、中国にすり寄っただけのこと
だった。会談の印象について、先に台湾の将来に「負の遺産」を残したと記したが、確信に変わり
つつある。
読売新聞は社説で、会談が「逆効果となる恐れもある」と指摘していた。
実際、11月9日付のロイター通信が伝えるところでは、会談翌日の11月8日に両岸政策協会が1014
人を対象に実施し、9日に発表した総統選挙に関する世論調査では、民進党の蔡英文主席が48.6
%、中国国民党の朱立倫主席は21.4%の支持率。10月半ばの同会調査では蔡氏が45.2%、朱氏が
21.9%の支持率だったから、その差は23.3ポイントから27.2ポイントと開き、「逆効果」となって
いることが明らかになっている。
さらに、ロイター通信は追い打ちをかけるように、同会の「馬総統が首脳会談で台湾の主権や利
益を守り、主張したと思うか、という質問に対し、回答者の32.9%がそう思うと答え、46.8%はそ
う思わないと答えた」という世論調査の結果も報じている。
馬英九氏にしろ、朱立倫氏にしろ、強引な政治手法が目立つ。台湾の人々の反発は強まるだけ
だ。中国国民党が崩壊してゆく音はだんだん高まっているようだ。
台湾の国会内委員会が「馬英九総統は全国民に謝罪せよ」可決 中国・習主席との会談を批判
【サーチナ:2015年11月10日】
台湾の国会に相当する立法院の内政委員会は9日、馬英九総統が7日に中国の習近平主席と会談し
た際に、発言内容に大きな問題があったとして、「国民への公開謝罪」を求める提案を可決した。
総統府や行政院(台湾政府)大陸委員会は、同決議に反発した。台湾メディアの中央社などが報じ
た。
習主席との会談について立法院の内政委員会が問題にしたのは、中国による台湾への軍事的脅威
についての発言だ。馬総統は内モンゴル自治区のジュルフで行われる軍事演習や中国のミサイルの
「向けられた方向」について「反対党は常々、こういうことを両岸関係を批判する口実にする」、
「そのような不要な批判は減少させるべきだ」などと述べたという。
つまり馬総統は、中国に対する軍事的警戒はそれほど必要でなく、反対派は「批判のための批
判」として、大陸側との軍事問題を利用していると主張したことになる。
内政委員会は、「大陸側のミサイル配備や軍事演習は政党に関係なく台湾人に向けられてい
る」、「政党に関係なく、ミサイルをなくすことは全国人民の期待である」として、馬総統に全国
民に対して公開で謝罪し、発言を撤回するよう提案した。
同提案は民進党議員などが主張し、5対4で可決した。
総統府の陳以信報道官は、馬総統は習主席に対して、大陸側が善意にある具体的行動をしてほし
いと明確に述べたわけであり、「台湾民衆は安全と尊厳を特別に深く考えている」と強調した上
で、「大陸は特に了解すべきだ」と要求したと説明。
民進党議員は馬総統の話を故意に歪曲し、台湾人の考えを誤って導くものだと批判した。
行政院大陸委員会のトップである夏立言主任委員は10日、立法院内政委員会の決議を「馬総統に
対して不公平」と批判し、自らの考えを9日のうちに馬総統に伝えたと説明した。
(編集担当:如月隼人)