から愛されるのか』(育鵬社)を取り上げ、池間氏がカンボジアで恐る恐る「カンボジア
人は今でも日本を憎んでいるんですか」と聞いたところ、「日本を恨んでいる人は誰もい
ません。全く反対です」と答えた話を紹介している。
一昔前、いや、ふた昔になるだろうか、台湾を訪れた日本人が「戦争中はご迷惑をおか
けしました。申し訳ない」と謝ると、台湾の人々は「なにを言っているんですか、謝る必
要はありませんよ。日本は台湾を近代国家にしてくれたじゃありませんか」と答えるの
で、ビックリしたという。
中には「台湾は世界一の親日国ですよ。私は今でも教育勅語を暗誦しています」という
人々もいて、「朕思ふに……」とやるものだから、さらに驚かされたという。
その親日ぶりは一昨年の東日本大震災で立派に明され、そのことに驚いた日本人も少な
くなく、「謝謝台湾」のために訪台する日本人が急に増えた。
少し前、産経新聞・ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が、「台湾では元総統が率
先して靖国神社に参拝するほどなのだ」と台湾の例も挙げつつ、「アジア諸国が反発す
る」という場合のアジア諸国とは中国と韓国の2ヵ国だけと喝破している。同感である。
異端で特殊な日本叩き 「アジア諸国が反発」の虚構 古森 義久
【産経新聞:平成25(2013)年8月12日】
日本の安全保障や歴史問題を考えるときのアジアという概念を根本から変える時期がき
たようだ。
日本の首相が憲法改正を唱える。政治家が靖国神社を参拝する。慰安婦問題の虚構を指
摘する。と、反対派からは「アジア諸国が反発する」とされるのが年来のパターンだっ
た。「日本はアジアで孤立する」という断定も多かった。
だが実際にはその種の言動に文句をぶつけてくる国は中国と韓国だけなのである。無法
の北朝鮮は近代国家の要件に欠けるからこの際、除外しよう。その他のアジアのどの国も
地域も、政府レベルで日本の防衛増強や歴史認識を非難する事例は皆無なのである。
この現実は安倍晋三首相の7月下旬の3度目の東南アジア訪問でも立証された。わが日本
がアジアではほぼすべての諸国に好かれ、頼りにされているという現実だった。日本が改
憲を求めても、閣僚が靖国神社に参拝しても、なにも文句をつけず、むしろ、より強い日
本との協力を深めようというアジア諸国が大多数なのだ。
安倍首相は今回、マレーシア、シンガポール、フィリピンを歴訪した。フィリピンとシ
ンガポールには日本の改憲や集団的自衛権の解禁の意図を伝え、理解を得た。マレーシア
とも防衛協力で合意した。中国の脅威への連帯と日本への信頼が明確にされたのだ。
この対日友好の姿勢は東南アジアだけではない。北東アジアとされる地域でもモンゴル
や台湾は日本への協調を明示する。台湾では元総統が率先して靖国神社に参拝するほどな
のだ。
米国の国務省東アジア・太平洋局が担当する国・地域の数は合計30ほどである。さらに
同省の南アジア・中央アジア局はインドやアフガニスタンなど13カ国を管轄する。この区
分でも「アジア」の国々は総計40を超える。だが日本の首相の靖国参拝が「軍国主義復
活」だなどと正面から日本を叩(たた)いてくるのは中国と韓国だけなのだ。なんと40分
の2なのである。「アジア諸国が反発」など、とんでもないわけだ。
日本の歴史認識にはとくに日本軍の戦闘で被害を受けた諸国が敏感に反応するとされて
きた。だが最激戦の地となったフィリピンやインドネシアはもう戦争の歴史を克服し、日
本の改憲をも歓迎する。他方、中国の共産党は日本軍の主敵ではなかった。韓国は日本と
ともに戦争をした側だった。現韓国大統領の父が日本帝国陸軍のエリート将校だった史実
を指摘するまでもない。だから中韓両国の日本叩きはアジアの規範でも、戦争の歴史で
も、あまりに異端で特殊なのだ。日本の実際の言動よりも、中韓内部の政治の都合や外交
の戦術が動因だとみなせよう。
米国側でもこのアジアの現実をリベラル派日本研究学者たちは認めたがらない。だが最
近では健全な変化も起きてきた。米中央情報局(CIA)元専門官たちが組織する国際安
全保障の研究機関「リグネット」は8月冒頭の「いかに日本は東南アジアで優位を得た
か」という報告で、「日本は東南アジアでは戦争行動からの歴史の重荷を克服することに
成功した」という調査結論を発表していた。
(ワシントン駐在客員特派員・古森義久)