林建良氏【台湾と私6】文化断絶―日本で知った台湾の悲劇

機関誌『日台共栄』第7号(6月号)をもうすぐ刊行

 日本李登輝友の会の機関誌『日台共栄』は昨年の6月1日付で創刊し、以後、
8月、10月、12月、2月、4月と隔月で刊行してまいりました。
 日台関係に特化した専門誌はほとんどありませんし、毎号必ず李登輝前総統を
はじめ、日台関係をめぐる論考を掲載していることもあって、台湾の進むべき方
向性や日本と台湾の関係がよくわかると好評をいただいております。
 現在、第7号(6月号)を編集しているところで、編集部は校正と写真選定に
追われています。普通会員以上の皆様のお手元には6月の第1週にお届けする予
定です。
 6月号では、李登輝前総統が第2回台湾李登輝学校研修団における講義、許世
楷・台湾駐日代表の本会総会における講演などを掲載しています。
 毎号、巻頭に掲載して好評の「台湾と私」は、秋田県上小阿仁村長で本会理事
の北林孝市氏です。上小阿仁村は日本でも数少ない台湾との姉妹都市交流を続け
ている自治体ですが、北林村長の半生にからむ屏東県萬巒郷との姉妹都市交流に
ついて書いていただいています。台湾を心から思う、こういう方が日本にいるの
です。
 前号で掲載した林建良氏の「台湾と私」も、その生い立ちにも分け入って、台
湾人がどういう教育を受けてきたのかについて書いていただき、これまで台湾で
どういう教育がなされてきたのかよくわかったと好評でした。ここにご紹介しま
す。                             (編集部)


台湾と私(6)
文化断絶―日本で知った台湾の悲劇

              林建良 本会常務理事・世界台湾同郷会副会長

 人生の邂逅の一つのようなテーマで「台湾」を語るのには、いささか戸惑いを
覚える。なぜなら台湾は私の生まれ育った故郷であり、祖国だからだ。たしかに
日本に十数年間居住し、刎頚の交わりと言える同志たちも日本人ばかりなのだが
、大雑把で無神経、整理整頓の能力はゼロに近く、考える前に行動してしまう私
の一挙手一投足のすべては台湾的で、日本人気質とは相反するものばかりだ。
 私が台湾で受けた教育は台湾無視の中国人化教育であった。学生時代の私は台
湾の歴史についてまったく無知であったが、中国の歴史には詳しかった。なぜな
ら台湾では入試から公務員試験に至るまで、中国の歴史、地理、文学は必要不可
欠な科目だからである。
 小学校から大学までの私の国語の先生(台湾は大学でも国語は必修科目である)
は、すべて中国からやってきた所謂「外省人」だった。彼らは中国文化の偉大さ
を吹聴する一方、あらゆる機会に「台湾は文化のない不毛の地である」と強調し
、台湾社会を軽蔑していた。このような教育政策は、実は民進党政権下の今も残
っており、小中学生が使うノートや教科書などには、未だに「正々堂々たる中国
人になれ」とのスローガンがプリントされている。台湾政府が台湾人に「わが国
は歴史も文化もない化外の地だ」と教えている訳で、自国への誇りをなくそうと
する滑稽さは、日本とそっくりでもある。
 蒋介石政権は、台湾人の中国人化を行う一方で、日本語をはじめとする植民地
時代からの日本的要素を一掃する政策をとった。その結果、日本語を通じて吸収
してきた台湾人の近代的な知識と知恵の蓄積は、一夜にして無用のものとなり、
世代間の知恵の伝達も分断されてしまったのである。
 生後十ヵ月で母を亡くした私は、母の実家である田舎で祖父母に育てられた。
五歳から六歳までの一年間は、父と倉敷出身の日本人の継母の三人で生活して
いた。
 当時暮らしていた台中市内の和風の一軒家には五右衛門風呂がついており、そ
の中にある熱い鉄パイプが怖かったため、入るのを嫌がっていた記憶がある。当
時、家での会話はすべて日本語であり、畳の上の卓袱台で食事をする生活様式も
日本そのものであった。当時の台湾の都会では、ごく普通の光景であったようだ
が、田舎から出てきた私は強いカルチャーショックを受けた。父に学ぶ意欲も失
せ、ついにその生活には慣れなかった。
 その後、中国人的教育を受け、自然に父の世代とのギャップが大きくなり、文
化的には完全な断絶が生じてしまった。父の世代もうまく中国語を操れないこと
もあり、彼らの持つものを戦後世代に伝えることはできなかった。
 このような悲劇的状況こそ、台湾のアイデンティティがいまだに確立できない
一番大きな要因ではなかろうか。
 日本を抜きにして台湾の近代史は語れない。しかし現実的に、戦後の台湾人は
日本抜きの歴史しか知らないのだ。歴史に空白は存在しえない。五十年間の記憶
と文明の蓄積を力づくで抹消しようとした蒋介石の中国的なやり方が、いかに恐
ろしいものであったかがわかる。
 日本人には理解しにくいかもしれないが、これが台湾の現実だ。私が戦前世代
の台湾人の知恵を学び、その考え方を理解できるようになったのは、日本に来て
日本語を使えるようになってからだ。これも歴史の皮肉なのだろうか。


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発 行 日:毎週配信(ほぼ毎日)
発   行:日本李登輝友の会・メールマガジン「日台共栄」編集部




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