「へー」と、いささか目を疑った。今朝の朝日新聞の社説を読んだ方は同じよ
うな思いを抱いたのではないだろうか。
立法委員選挙についての内容だったが、台湾と中国の関係について「世界の多
くの国から法的に主権を認められてはいないが、実質的に中国から自立した存在
であることは間違いない」と述べ、立法委員選挙については「今回の選挙は陳政
権を牽制する結果になったとはいえ、台湾の自立志向そのものに歯止めがかかっ
たとは言えない」とまで述べているからだ。
すでに本誌前号でも、立法委員選挙について、各党の投票率を見れば与党陣営
は前回より5%伸ばし、野党陣営はまったくの横ばい状態だったことを指摘して
「台湾住民の民意は台湾新憲法制定や台湾正名を掲げた与党を支持する方向で着
実に伸びていた」と述べ、それ故に、連戦・中国国民党党主席が「中華民国の勝
利だ。新しい民意を示した」と宣言したことは的を射ていないと述べた。
その点で、朝日の社説もまったく同じような見方をしていたので驚いたのであ
る。しかし、さらに驚かされたのは、台湾が「実質的に中国から自立した存在で
あることは間違いない」と断言したことだ。
当たり前といえば当たり前の台湾認識なのだが、日本のマスメディアはこれま
で中国の様子を伺いながら記事を書き、中国へのご注進記事あるいはマッチポン
プ記事を書く傾向が強く、産経新聞以外でここまで踏み込んだ認識を示したもの
は寡聞にして知らない。
これも、李登輝前総統以来すすめてきた民主化の成果であろう。その社説全文
を以下に紹介する。 (編集部)
台湾選挙−この踊り場を生かせ
【朝日新聞 12月14日 社説】
自立に向かうのはいいが、あまり急いで中国との緊張が高まるのも困る。今は
安定と暮らしの豊かさが大事だ。
先週の台湾立法院選挙に表れた民意を一言で言えば、そうなるだろう。国民党
などの野党連合が過半数を制したことで、民進党の陳水扁総統が進める自立化路
線に一定の歯止めがかかることは間違いない。
3月に再選された陳氏は、こんどの選挙戦でも、2年後に住民投票を行って台
湾の現状に合う新憲法をつくることや、中華航空など公営企業の名前にある「中
華」や「中国」の文字を「台湾」に変えることを訴えた。いっきに中国離れを加
速したかったのだろう。
だが、結果を受けて「各政治勢力との団結と協力を進める」と宣言し、中国と
当面は現状維持でいいとする国民党とも協調する姿勢を示している。
台湾と中国は主権問題で角を突き合わせながらも、一方で、経済の結びつきを
日増しに強めている。
今年10月までの貿易額は、昨年の同じ時期の36%増だ。台湾の対中投資も
活発だ。大陸に滞在する台湾のビジネスマンは100万人にのぼるとも言われる。
今度の選挙に、そのビジネスマンたちが大挙して戻り、投票したと言われる。
中国を相手にする台湾の企業人が中台をつなぐ力となって、選挙の結果に影響を
与えた可能性もある。
経済では、急速に発展する中国と大きく先んじた台湾との相互依存は深まるば
かりである。しかし、政治的には逆に遠心力が強まっているのが現実だ。
国共内戦の結果、国民党政権が台湾に移ってからもう55年になる。台湾は独
自の政府と軍、対外政策を持つ。世界の多くの国から法的に主権を認められては
いないが、実質的に中国から自立した存在であることは間違いない。
陳政権はこの現実を踏まえて、台湾はすでに中国とは「別の国」になっている
とし、「台湾は台湾人のもの」であることを内外に鮮明にしようとする。
中国側は「台湾は不可分の一部だ」として、いずれ統一するという原則を崩さ
ない。統一に応じるなら「一国二制度」でもいいと言うが、台湾側は拒み続けて
きた。
背景にあるのが「台湾人」意識の高まりだ。様々な世論調査を見ると、「自分
は中国人」と思う人は80年代の末には50%を超えていたが、00年は10%
台にまで落ち込んだ。逆に、「自分は台湾人」と考える人は80年代末では10
%台だったのに、00年は30%台に達した。いまはこの傾向がもっと進んでい
るだろう。
今回の選挙は陳政権を牽制(けんせい)する結果になったとはいえ、台湾の自
立志向そのものに歯止めがかかったとは言えない。
だが、台湾海峡の緊張が高まることは、誰にとっても得にはならない。安定を
求めた民意がつくった踊り場を生かして、双方の政権は途絶えたままの政治対話
の再開に動いてもらいたい。
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