旭日中綬章受章の黄天麟・台日文化経済協会名誉会長が逝去

 昨日(5月19日)夕方、総統府国策顧問などをつとめられた台湾の黄天麟・台日文化経済協会名誉会長が入院先の台湾大学附属病院にて亡くなられました。享年93。

 今年1月には新刊『黄天麟論壇』。4月には口述筆記の自叙伝『『金融鬥士黄天麟與台灣金融業的五十年』を出版して新書発表会が開催され、台日文化経済協会が4月初旬に発刊の会報春季號でお元気な姿を拝見していましたから、突然の訃報に驚かされました。

 黄天麟先生には、昨年7月30日に亡くなられた李登輝元総統や2017年7月17日に亡くなられた台湾歌壇代表の蔡焜燦先生などと、日本李登輝学校台湾研修団(略称:李登輝学校研修団)の初期よりほぼ毎回のようにご講義いただきました。

 2012年5月に開いた第15回研修会は澎湖島を訪問して開催していますが、澎湖島は黄天麟先生の故郷。その年、黄天麟先生は生まれ育った馬公市内に別荘を建てられ、折よく澎湖島に帰られていたことでご講義していただいたこともありました。

 本会は2006年からこれまで5000本を超える河津桜の苗木を台湾に寄贈し、たいへん喜ばれています。

 2013年12月には、台日文化経済協会会長だった黄天麟先生の依頼により苗木100本を寄贈したことにより、翌2014年12月4日に本会と台日文化経済協会は姉妹提携し、絆はさらに強まりました。

 台日文化経済協会にはこれまで500本の苗木をお贈りしていて、桃園市や台中市に本植えされ、すでにきれいな花を咲かせています。今年の暮れにも200本をお贈りする予定となっていて、ご存命の間に実現できなかったことが悔やまれますが、ご遺志を継いで今後も贈り続けたいと願っています。

 なお、黄天麟先生は2017年春の叙勲で旭日中綬章を受章されています。このときは許世楷氏(元台北駐日経済文化代表処代表)や黄茂雄氏(東亜経済協会理事長)とご一緒の受章でした。まだ台日文化経済協会の会長をつとめられていたときで、生前叙勲となって本当によかったと今にして思います。

 これまでのご恩顧に深く感謝申し上げ、謹んでお悔やみ申し上げます。

 なお、下記に黄天麟先生のプロフィールをご紹介するとともに「自由時報」が伝える訃報記事をご紹介します。  また、黄天麟先生は、小さな経済体は大きな経済体に吸収されるという「周辺化理論」を唱導したことでも知られ、馬英九政権が2010年に中国と締結した「経済協力枠組み協定」(ECFA)に当初から大反対だったことがよく分かる論考を発表していますので、別途ご紹介します。

黄天麟(こう・てんりん)1929年(昭和4年)、台湾・澎湖県馬公市生まれ。台南二中を経て国立台湾大学法学院経済学系を卒業。米国のコロンビア大学ビジネススクールにも学び、高等考試・財政金融人員に合格。1944年、第一銀行入行し、グアム支店長、ロンドン支店長、国際部長、人事部長、副頭取を歴任し、1993年に頭取(董事長)に就任。同銀行会長を経て、2000年に陳水扁政権の国家安全会議諮問委員に就任し、翌年からは国策顧問に就任。2012年に台日文化経済協会会長に就任し2018年までつとめる。蔡英文政権でも国策顧問に就任。2021年5月19日、逝去。享年93。

◆自由時報:前國策顧問 金融鬥士?天麟93?辭世[2021年5月19日] https://ec.ltn.com.tw/article/breakingnews/3539012

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