る5月21日に開かれた第21回国際交流会議「アジアの未来」晩餐会におけるスピーチで、次のよう
に述べた。
<日本は、こうした新たなイニシアティブをスタートします。ADBと連携しながら、5年間で、
総額約1100億ドル、13兆円規模の、イノベーティブなインフラ資金を、アジアに提供してまいりま
す。>
スピーチでは中国が主導して発足させようとしているアジアインフラ投資銀行(AIIB)には
一言も触れなかったが、日米が主導するアジア開発銀行(Asian Development Bank:ADB)と連
携しながらアジアインフラ投資銀行が予定している500億ドルとも1000億ドルとも言われるインフ
ラ資金を上回る1100億ドルという具体的な数字を出して提言したのである。
中国の経済動向に詳しい宮崎正弘氏が早速この発言に注目し「中国並びに中国語圏」などの驚き
を解説している。下記にご紹介したい。また、安倍総理のスピーチ全文は、首相官邸のホームペー
ジに動画とともに掲載しているので下記に掲載したい。
中国はさかんに日本のアジアインフラ投資銀行への加盟を促しているが、ほぼこれで日本の加盟
はなくなったと見ていいだろう。
国際問題アナリストの藤井厳喜氏は「AIIBは国際的振り込め詐欺のようなもの」と指摘し、
日本は加盟すべきではないと提唱している。5月30日、藤井氏を講師にこのアジアインフラ投資銀
行をテーマに台湾セミナーを開く。藤井氏が安倍総理の発言をどう見ているかが注目される。
◆第21回国際交流会議「アジアの未来」晩餐会 安倍内閣総理大臣スピーチ
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg11756.html?t=103&a=1
日本がアジアのインフラ投資に13兆円
AIIBを横目に大胆な提言、中国に衝撃の波紋
【宮崎正弘の国際ニュース・早読み:平成27年(2015)5月22日 第4548号】
安倍晋三首相は5月21日に東京で開催中だった「アジアの未来」の晩餐会で演説し、今後5年間で
13兆円をADB(アジア開発銀行)と連携するかたちでアジアのインフラ建設に投じるとした。
ドル換算で1100億ドル。中国主導のAIIBの資本金(500億ドル)の2倍以上にあたる。
この演説の中でとくに注目するべきは「安かろう悪かろうはもう要らない」と安値攻勢をかける
某国のやりかたを痛烈に批判し、「短期的なやりかたで現地政府に必要以上の支払い保証をもとめ
るやり方がまかり通った」が、これからは「質の良さ」がアジアのインフラ整備には欠かせないと
したことである。
重ねて某国を批判している点がポイントである。
驚いたのは中国並びに中国語圏、たとえば香港のサウスチャイナモーニングポストなどは大きく
取り上げた。
シンガポールで開催されていたAIIB準備会では、はやばやとドイツが「AIIBの理事はド
イツが適切である」とのべていたことが分かった。
「ドイツはユーロの中軸であり、フランクフルト市場では人民元取引も開始されている。ドイツ
が理事会の重要な位置を占めるのは欧州の利益にもつながり、またAIIBのルールが西側のそれ
に準じた国際標準に近いものにすべきである」と述べた。
このドイツ代表の発言は中国の暴走に歯止めをかけ、西側の銀行ルールを強く、AIIBの理事
会に求めているのである。
他方、人民元のIMF基軸通貨入りを強く支持しているのはロシアで、「10月にSDRに人民元
が入り、ドルの影響力を弱めるだろう」(プラウダ、5月21日)。もし、人民元がSDRの基軸通
貨入りが認められないとなると、金準備が豊富な中国とロシアは何らかの行動(金本位制復帰)に
でるかも知れないなどとも書いている。
各国の反応がバラバラの特色を滲ませてきた。