「日本にとって台湾は存在しない」と言えば、多くの日本人は「そんな馬鹿な」と思うだろう。しかし、それは紛れもない現実である。日本の法律には台湾は存在しない。台湾は無戸籍者のようなものである。
1972年以降、日本は台湾を国として認めない一方、自国の一部だという中国の主張も認めていない。台湾は日本にとって、国でもなければ地方でもなく、法的位置づけが全く存在しないのだ。日本は国家主権に関わる出入国管理業務を含め、台湾との一切の交流を民間の名義で行っている。実質的には政府間の合意であっても協定や条約とは呼ばず、民間の「取り決め」や「覚書」として誤魔化してきた。その最大の理由は、日本が台湾の法的存在を認めないことにほかならない。
日本はなぜ安全保障において重要な位置を占める台湾との関係をこのように不安定にしてしまったのか。言うまでもなく、その原因は中国だ。戦後の日本はいかに中国を刺激しないかを優先して対中外交を行った。中国の主張を「理解し尊重」するために台湾と一切の公的関係を持たず、「民間交流」という形で自己制限してきた。中国の歓心を買い台湾を蔑む、こうした外交政策が果たして成功しているのかは、中国の日本に対する一連の理不尽な言動でわかる。それでも日本が頑なにこの外交姿勢を維持しているのは実に不思議だ。
アメリカはトランプ政権になって戦略を変え、中国を利益共有者から敵対的ライバルと扱うようになった。この大転換は一時的なものではなく、時代の大きな流れにおける一つの重要な通過点で、トランプ政権以降も続くことを認識すべきである。これに基づくインド太平洋戦略は、まさに日米を中心とする中国包囲戦略だ。その成否の鍵を握るのは、ほかでもない台湾の存在である。
この大戦略を前にして、台湾と民間交流しかできない日本が、どうやって台湾との安全保障上の連携ができるというのか。実はこれは日本の国土防衛における大きな欠陥だ。これを解決するためにも日本は台湾を法的に位置づける必要がある。
平成国際大学の浅野和生教授は日台間の現行の取り決めをベースに「日台関係基本法」案を提案しており、日本はすぐにでも法制化できるはずだ。日台ともに利する法案だから当然中国は強く反対するだろうが、成否を握るのは日本人の覚悟のみなのだ。