尖閣諸島・魚釣島の日本領海内における台湾の遊漁船と海上保安庁の巡視船の接触沈
没事故について、7月2日、劉兆玄・行政院長が国際メディアとの懇談会で記者の質問に
答えている。
ここで注目したいのは、どのメディアもセンセーショナルに取り上げた「戦争も辞さ
ない」という発言に至った経緯ではなく、「違法行為を働いた遊漁船にどのように対処
するつもりなのか」と記者から問われ、劉院長が「その行為がもし中華民国の法律に違
反するものであれば、われわれは必ず法律に基づいて処理する」と発言していることだ。
すでに本誌で指摘したように、王進旺・海岸巡防署長は6月18日、遊漁船「聯合号」
が娯楽漁業管理弁法に違反したとして、規定により3万元〜15万元(約11万円〜54万円)
の罰金刑が課せられる見込みであることを発表している。
王海巡署長はすでに「違法」との判断を下しているにもかかわらず、劉院長の発言は
この王発言を踏まえていない。
だが、これまたすでに指摘したことなので繰り返しになるが、それ以上に問題なのは、
なぜ台湾の遊漁船「聯合号」は台湾の海事法「娯楽漁業管理弁法」に違反してまで、釣
り人を魚釣島まで連れて行ったのか、だ。
台湾の「娯楽漁業管理弁法」では、娯楽漁業の遊漁船活動が認められている地区は、
台湾本島および澎湖島の周辺24海里((1海里=1852m。約44km)以内および彭佳嶼、
緑島、蘭嶼の周辺12海里以内と規定している。
何鴻義という船長がこの法律を知らないわけはない。違法と知りながら、13名のお客
をわざわざ魚釣島の南9kmまで連れて行ったのだ。お客を危険な目に遭わせるかもし
れないことを承知で、違法活動を行ったのだ。それはなぜなのか、である。
台湾政府は、これをこそ明らかにする義務がある。台湾が日本との良好な関係を続け
ようとするなら、なぜ遊漁船は違法行為を犯してまで尖閣諸島・魚釣島近くまで行った
のかを明らかにしない限り、この問題の真の決着には至らない。
以下に、劉兆玄院長の記者会見での遣り取りを紹介したい。
(メルマガ「日台共栄」編集長 柚原 正敬)
劉兆玄・行政院長が「聯合号」事件に関して補足説明
【7月4日 台湾週報】
劉兆玄・行政院長は7月2日、国際メディアとの懇談会の中で、釣魚台(日本名:尖閣
諸島)近くの海域で先日発生した「聯合号」事件の処理について、記者の質問に答えた。
以下はその内容である。
〇 〇 〇
記 者:6月10日、日本の多くのメディアが「戦争も辞さない」との(台湾側の)報道
を見てみな驚いた。後に、(劉院長の)発言を聞いて誤解の部分があったとわ
かったが、劉院長の本来の意味はどのようなものだったのか。また、6月14日
に外交部が許世楷・駐日代表の召還を決定し、海岸巡防署(海巡署)は6月16
日に釣魚台12カイリ内に船を派遣したが、この二つの重要な決定に劉院長は参
与していたのか。外交部と海巡署から事前にこのことについて劉院長に相談が
あったのか。
劉院長:「戦争も辞さない」に関する問題について、これは私が立法委員からの質問に
回答する際に言及されたもので、私が指しているのは、その他のあらゆる手段
をすべて使い果たした後、それでも解決できず、または何ら改善が見られない
状況下で、しかも主権問題に関わるような状況下で、最後に、私は「最後の最
後の最後」と言ったが、誰も譲ることができなくなったときに、最後に「戦争
も辞さない」しかないのであって、多くの前提の下で話した一言であった。
二つ目の問題について、海巡署は問題が発生した際に、行政院長の指令を必
要としない。なぜなら、現場での海巡署の指揮決定は指揮官の権限で行われる
ことがあり、この際に行政院長を通す必要はない。また、代表召還については
外交部の決定であり、外交部は必ず行政院長に知らせる必要がある。
記 者:遊漁船「聯合号」が釣魚台で釣りをすることは、中華民国の法律から言えば、
そもそも違法であり、罰金を科せられるべきものである。劉院長はどのように
「聯合号」に対して処理するつもりなのか。
劉院長:釣魚台のこの「聯合号」に関する部分について、その行為がもし中華民国の法
律に違反するものであれば、われわれは必ず法律に基づいて処理する。
【行政院 2008年7月2日】