戒厳令解除から26年目を迎えた台湾

7月15日、台湾は戒厳令が解除されて26年目を迎えた。台湾に戒厳令が布かれたのは1949
年5月20日。蒋介石の国民政府が毛沢東率いる中国共産党と内戦中のときで、国府側が台湾
撤退を準備に入りつつあったときのことだ。

 戒厳令下においては集会の自由や結社の自由も許されず、新たな政党の結成も禁止され
た。報道の自由も制限された・

 この戒厳令に先立ち、共産党を征伐するとの理由で、憲法を超越する「動員戡乱時期臨
時条款」を1948年5月10日から施行している。これが蒋介石政権の独裁を許した。総統は立
法院の制限を受けず、意のままに緊急命令を発令する独裁権限を得たからだ。

 これによって蒋介石は、大陸反攻が成功するまで立法委員や国民大会代表(いずれも国
会議員に相当)を改選しないという緊急命令を発し、台湾人の国政参与の権限を剥奪した
のだった。

 そして、2・28事件で芽生えた台湾の人々の台湾独立思想を監視し摘発するため、いわゆ
る特務が暗躍し、密告が励行される「白色テロ」といわれる時代が始まる。雷震事件や彭
明敏事件、林義雄家族殺害事件、江南事件など、不可解な事件が次々と起こるまさに暗黒
時代だった。すべてが「共産党への利敵行為」とされた。「1人の共産党員を摘発するため
なら、100人を犠牲にしてもよい」とさえ囁かれていたという。

 台湾は暗黒時代を経て、1980年代後半に民主化のうねりを受け、戒厳令解除要求や台湾
独立の声が公然と聞かれるようになり、ついに1987年7月15日午前零時、世界一長いと言わ
れた戒厳令が解除される。

 李登輝が総統に就任後は民主化が急速に進み、動員戡乱時期臨時条款も1991年5月1日 
午前零時、廃止されるに至っている。戒厳令より長い43年を経ての廃止だった。これで、
台湾としては共産党との内戦状態を法的に消滅させた。

 また、台湾の独立を唱えることも「反乱罪」とみなした悪法「刑法100条」の見直しも進
み、1992年5月16日に改正施行され、ここに初めて言論の自由が確立される。

 7月15日は、戦後台湾の暗黒時代が終わったシンボルのような記念日だ。だが、未だ白色
テロの恐怖は台湾の人々の記憶に新しく鮮明なようだ。

 台湾の暗黒時代、日本は何も手助けできないでいた。台湾を暗黒時代に後戻りさせず、
国際舞台に羽ばたくよう、今度は日本が手を差し伸べる番だ。


きょう台湾で戒厳令解除26周年
【中央通信社:2013年7月15日】

 (台北 15日 中央社)15日午前、台北市内の介寿公園「白色テロ政治受難者記念碑」の
前で、1949〜1987年まで38年間の長きにわたる戒厳令時代の期間に犠牲となった人々をし
のぶ記念式典が、冤罪に対する補償を行う基金団体によって開催され、馬英九総統、林政
則基金団体会長、被害者およびその家族らが出席して行われた。

 式典では2・28事件や白色テロによる冤罪被害に遭った本人・家族・遺族に対し、馬総統
は頭を下げ謝罪、名誉回復証の交付が行われ、参会者は1分間の黙祷を行った。

 被害者代表として挨拶に立った馮守娥さんは、女子高時代に勉強会に参加していたとし
て卒業後の1950年5月に逮捕され10年の刑に服し、小学校の教諭をしていた兄も同じ日に逮
捕、ほどなくして死刑となったと語った。また馮さんの夫も1947年の2・28事件に関わって
いたとして10年間服役、自分たち家族はこのような理不尽な歴史に青春時代を翻弄され続
けたと語った。

 馬総統は挨拶の中で、これら白色テロによる人々の犠牲は国家の内戦に根本的な原因が
あり、一度戦争になれば権力濫用が許され見過ごされるとし、就任以来、両岸関係改善に
力を尽くしてきたことを強調した。また、現時点で補償基金会では195億台湾元分、二二八
基金会では72億元分と、すでに合わせて2万人余りについて補償が行われていると説明した。

                               (編集:谷口一康)


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