国軍歴史文物館  傳田 晴久

【台湾通信(第82回):2014年3月5日】

◆はじめに

 ちょうど1年前、「台湾の歴史と日本統治時代の文化遺産」(2013年3月1日〜4日)というタイト
ルのツアー(主催:日本エアービジョン社)に参加し、最終日に「国軍歴史文物館」を見学する予
定でしたが、あいにく展示物の入れ替え中とのことで閉館、見学できませんでした。その後1回訪
問したのですが、カメラが不調で不満足。秋に再び訪問したのですが、またまた閉館中。どうも相
性が悪いようですが、今年(2014年)2月の中旬に訪問叶いました。意外に“面白い”展示物をい
ろいろ見ることが来ましたので、ご紹介させていただきます。

◆パンフレットによれば・・・・

 国軍歴史文物館は1961年に創立され、中華民国軍(陸軍軍官学校)設立から東征、北伐、抗日戦
争、台湾海峡防衛などの各時期に関する文物史跡および現在の国軍の状況などを紹介しています。
3階建て、総面積450坪、6つの展示室があります。

 第一展示室は「黄埔建軍と北伐統一」と銘打ち、中華民国建国当初の軍閥割拠の状況から北伐、
中国統一までを展示しています。

 第二展示室の「八年にわたる苦難の対日抗戦」では、抗日戦争を中華民族が民族の存続と国家独
立をかけて戦った聖戦と謳い上げています。

 第三展示室の「反乱鎮定と台湾海峡戦」では国共合作、抗日戦勝利後、中共に追われ、台湾に移
り、古寧頭の戦いに勝利し、中共の台湾進出を阻止し、台湾の安定繁栄の基礎固めをしたとしてい
ます。

 第四展示室は「軍備の整備」で、国軍は将来の有事に備え、軍事武器の研究開発、国防制度改革
に力を注いでいる姿を展示しています。

 第五展示室は「国軍兵器室」で、ライフル銃、機関銃、重兵器、刀剣などを展示し、射撃体験
コーナーも設けています。

 特展室という展示室があり、現在「飛虎薪傳−中美混合團成立70週年紀念特展」(「フライン
グ・タイガースの伝承―中米混合空軍団成立七十週年記念特展」)が開催されています。

◆フライング・タイガース

 ウィキペディアではフライング・タイガースを「日中戦争時に中国国民党軍を支援したアメリカ
合衆国義勇軍(American Volunteer Group; AVG)の愛称であるが、戦闘機(100機)やパイロット
は米国政府が用意しており、実質、義勇軍の名を借りた米国の対日戦闘部隊であった。また、実際
に戦闘に参加し始めたのは日米開戦後であり、「義勇軍」の意義もうやむやになった」と紹介して
います。

 当展示では米国陸軍航空隊を退役したシェンノートが蒋介石と宋美齢に請われて中華民国空軍を
育成し、フライングタイガースの「永遠不朽」の精神は中華民国空軍に引き継がれていると称して
います。

◆興味ある展示(1)竹林遺書

 この「竹林遺書」は冒頭に述べたツアーの目玉の一つでありました。2階の第二展示室の片隅、
ガラスケースの中に、直径10センチほど、高さ20センチほどの古びた竹の筒が展示されており、そ
こには、「終有一天將我們的青天白日旗飄揚在富士山頭」と彫られています。訳せば、「何時の日
か我々の国旗青天白日旗を富士山頂にはためかせる」ということ、日本を征服するという意味で
しょうか。

 そういえば一昨年(2012年9月末)、ある中国人が軽装で、食料も持たず、幼い2人の子供に「釣
魚島は中国領」と書いた横断幕を持たせて登山し、危うく遭難しかけた事件がありましたね。世界
文化遺産「富士山」は日本の象徴ではありますが・・・・。

 この竹筒は、1940年中華民国の「広西学生軍」が日本軍の「南寧作戦」で玉砕したが、戦闘終了
後日本軍が戦場処理をしているときに、竹林の中に文字が刻まれている竹を発見した。そこに上記
のような文句をきざまれており、これは学生軍の誰かが刻した遺書であると判断し、その忠誠心を
観じ、竹のその部分を切り取り、日本に持ち帰った。そして26年後、日本神道国際友好代表団が台
湾を訪れた際に、この「竹林遺書」を台湾に返還したと言います。

 私は書かれている内容に少々違和感を持ちますが、まぁ、見方によっては、この展示は学生の精
神を讃えているということも出来るでしょう。

◆興味ある展示(2)100人斬りの軍刀

 2階の第二展示室に大きなパネルが、例の日本兵が軍刀を振り上げ、正に捕虜の首を刎ねようと
している写真がありました。いわゆる「南京事件」に関心ある人であれば必ず目にしたことがある
写真です。

 この写真について、電脳日本の歴史研究会のHPに「単なる現地の苦力(クーリー)に頼んで記
念撮影。右後ろの人はスリッパはいてまして、ヤラセと解っているから笑ってます」と解説してい
ます。

 国軍歴史文物館の展示室のパネルは次頁の写真の様になっています。私がこのパネルを見た瞬
間、何か違和感を持ったのですが、刀の構え方が人を斬る姿かと思いました。左利きのバッターの
ようです。映画やテレビドラマで切腹の介錯をする人は確か右に立つのではなかったでしょうか。
パネルの軍人は左に立っています。改めてよく見ますと、このパネルの写真は左右が逆になってい
るのです。さぁ、どちらが本物でしょう。

 真偽はともかく、問題はこの刀ですが、展示室の音声ガイドでは次のように解説しています。
「この刀は日本軍の九八式軍刀で、刀の刃を柄に固定する銅板に『南京の役 殺 107人』と刻印
されています。日本の仮名文字『の』の字が書かれていますから、この刀は日本の物であるという
重要な証拠です」。写真の振り上げた軍刀に合わせて、実物の軍刀がぴったりと貼りつけられてお
り、刀の柄の部分にレンズがセットされ、銅板の文字が読めるようになっています。

 私の感覚では、戦前の記念刻印であれば、「の」ではなく「之」、「ノ」を使うのではないで
しょうか。将校たるものが軍刀の記念に平仮名の「の」はいささか考えにくい。

 さらに「殺107人」とは書かないのではないでしょうか。当時の東京日日新聞の記事(1937年12
月13日)には「百人斬り“超記録”」の見出しがありますから、「百人斬リ」、あるいは「一〇七
人斬リ」かと思います。

 もう一つ解せないことがあります。音声ガイドは「日本軍の九八式軍刀」と解説しています。九
八式とは皇紀二五九八年すなわち昭和13年制定と言うことです。「南京の役」は昭和12年12月です
から、翌年制定の軍刀を使用するのは不可能です。何ということでしょう。(この軍刀について
「草莽崛起―PRIDE OF JAPAN」というサイトに藤田達男氏の詳細な、専門的な分析・解説が載っ
ています)

◆どう考えたらいいのか

 「フライング・タイガース」の特別展示で中米の協力関係を謳い、「フライング・タイガース」
の精神が中華民国空軍に引き継がれていると説明するのは、中華民国国軍の事ですし、「竹林遺
書」は戦前(1940)の学生軍の一員が祖国への忠誠心を表現したものでしょうから、いろいろ異論
があることは承知しておりますが、それはそれでよろしいかと思います。しかし、「100人斬りの
軍刀」の展示はいただけません。

 写真をあべこべに使い、存在し得ない刀(制定年度)を実物として展示し、後から刻印したと言
われても仕方ない代物を平仮名が使われているから日本の物と決めつける、このような誰が見ても
「いい加減な」展示を以って、日本人、日本軍が残虐非道なことを行った歴史的証拠と言われて
は・・・・・。

 時あたかも「慰安婦像」を海外に設置する国があるのです。恐ろしい事です。

◆おわりに

 たまたま「国軍歴史文物館」を覗いた時に、「トンデモ展示」に出くわしたのですが、これがも
し素通りしてしまったり、肝心なこと(あべこべ写真、制式年度、刻印の文字)に気づかなかった
らと考えると空恐ろしい気がいたします。

 只今、台湾では「課綱」(学校の指導要領)が問題になっています。高校の歴史、地理、等の教
科書の指導要領を“微調整”(改訂)しようという教育部(日本の文科省に相当)の方針ですが、
多くの台湾の人々が反対しています。知らないうちに少しずつ変えてしまいますと、いつの間にか
とんでもないものに変わってしまうかもしれません。嘘も百回言えば……心しましょう。


【日本李登輝友の会:取り扱い本・DVDなど】 内容紹介 ⇒ http://www.ritouki.jp/

●書籍お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px 【PC用】
https://mailform.mface.jp/m/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px【携帯用】

・宗像隆幸・趙天徳編訳『台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂』(会員:1,300円 一般:1,500円)
・小林正成著『台湾よ、ありがとう(多謝!台湾)』(会員:1,600円 一般:1,750円)
・喜早天海編著『日台の架け橋』(会員:1,100円 一般:1,260円)
・李登輝元総統対談掲載の『月刊「MOKU」9月号』(会員:1,500円 一般:1,700円)
・荘進源著『台湾の環境行政を切り開いた元日本人』(会員:1,500円 一般:1,700円)
・石川公弘著『二つの祖国を生きた台湾少年工』(会員:1,400円 一般:1,500円)
・林建良著『中国ガン─台湾人医師の処方箋』(会員:1,300円 一般:1,400円)
・盧千恵著『フォルモサ便り』』[日文・漢文併載](会員:1,200円 一般:1,500円)
・廖継思著『いつも一年生』(会員:1,000円 一般:1,200円)
・黄文雄著『哲人政治家 李登輝の原点』(会員:850円 一般:900円)
・井尻秀憲著『李登輝の実践哲学−50時間の対話』(会員:1冊=2,000円 一般:2,500円)
・李筱峰著・蕭錦文訳『二二八事件の真相』(会員=1,000円 一般=1,300円)
・李登輝・中嶋嶺雄『The Wisdom of Asia(『アジアの知略』英語版)』(会員:2,200円 一般:2,400円)

● 台湾・友愛グループ『友愛』お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/hevw09gfk1vr 【PC用】
https://mailform.mface.jp/m/frms/ritoukijapan/hevw09gfk1vr【携帯用】

●映画DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za 【PC用】
https://mailform.mface.jp/m/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za【携帯用】

・『セデック・バレ(豪華版)』(会員:6,500円 一般:7,000円 送料:1枚290円)
・『セデック・バレ(通常版)』(会員:4,700円 一般:5,200円 送料:1枚160円)
・『海角七号 君想う、国境の南』(会員:4,000円 一般:4,500円 送料:1枚160円)
・『台湾人生』(会員:3,150円 一般:3,360円 送料:1枚160円 5枚セット:無料)
・『跳舞時代』(会員:3,500円 一般:3,980円 送料:1枚160円)
・『父の初七日』(会員:3,100円 一般:3,300円 送料:1枚160円)

● 映画「台湾アイデンティティー」全国共通「前売券」お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/u1nyi0fpku01 【PC用】
https://mailform.mface.jp/m/frms/ritoukijapan/u1nyi0fpku01【携帯用】

●講演会DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/fmj997u85wa3 【PC用】
https://mailform.mface.jp/m/frms/ritoukijapan/fmj997u85wa3【携帯用】

・「集団的自衛権の確立と台湾」渡部昇一先生講演録(2013年3月24日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)
・「台湾の将来と日本」中嶋嶺雄先生講演(2003年6月1日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」盧千恵先生講演(2004年12月23日)
・「台湾の現状と日台関係の展望」許世楷先生講演(2005年4月3日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・許世楷駐日代表ご夫妻送別会(2008年6月1日)
・「二二八記念台湾問題講演会」阮美妹先生・西村眞悟先生講演(2009年2月28日)
・「台湾からの再出発」野口健先生講演(2010年12月23日)

●美味しい台湾産食品お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex 【PC用】
https://mailform.mface.jp/m/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex【携帯用】

・『台湾産うなぎセット』5,250円(税・送料込)
・『台湾飲茶6袋セット』4,200円(税・送料込)
・『台湾産天然カラスミセット』4,200円+送料600円(共に税込)
*同一先へお届けの場合、10枚まで600円
・『パイナップルケーキ』2,300円+送料500円(共に税込)
*同一先へお届けの場合、10箱まで500円

●「台湾フルーツビール・台湾ビール(金牌・瓶)」ご案内
http://www.ritouki.jp/news/distribution/2013-taiwanbeer.htm


◆日本李登輝友の会「入会のご案内」

入会案内 http://www.ritouki.jp/guidance.html

入会お申し込み【PC用】https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/4pew5sg3br46
入会お申し込み【携帯用】https://mailform.mface.jp/m/frms/ritoukijapan/4pew5sg3br46


◆メールマガジン日台共栄

日本の「生命線」台湾との交流活動や他では知りえない台湾情報を、日本李登輝友の会の活動情報
とともに配信する、日本李登輝友の会の公式メルマガ。

●発 行:
日本李登輝友の会(小田村四郎会長)
〒113-0033 東京都文京区本郷2-36-9 西ビル2A
TEL:03-3868-2111 FAX:03-3868-2101
E-mail:info@ritouki.jp
ホームページ:http://www.ritouki.jp/
Facebook:http://goo.gl/qQUX1

●事務局:
午前10時〜午後6時(土・日・祝日は休み)

●振込先:

銀行口座
みずほ銀行 本郷支店 普通 2750564
日本李登輝友の会 事務局長 柚原正敬
(ニホンリトウキトモノカイ ジムキョクチョウ ユハラマサタカ)

郵便振替口座
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)
口座番号:0110−4−609117

郵便貯金口座
記号−番号:10180−95214171
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)

ゆうちょ銀行
加入者名:日本李登輝友の会 (ニホンリトウキトモノカイ)
店名:〇一八 店番:018 普通預金:9521417
*他の銀行やインターネットからのお振り込みもできます。



投稿日

カテゴリー:

投稿者: