主席に就任した。当選したときには中国共産党から届いた祝電が、今回は届かなかった。
前主席だった洪秀柱氏は「中台統一」を前面に打ち出し、中国との和平協議も進めると親中を掲
げた。しかし、呉敦義氏は92年コンセンサスを認める点では洪氏と同じだが、洪氏が「一中」を強
調したのに対し「一中各表」を唱えて従来の国民党の立場を強調し、また馬英九・前総統と同じく
三不政策(統一せず、独立せず、武力を使わず)を唱え、中国との和平協議も行わないとしてい
る。つまり、中道路線へ転換したことで、中国は祝電を送らないことによって警戒感を示したようだ。
だから、蔡英文政権にとっては洪秀柱氏より厄介なのだ。蔡政権との違いは、極端に言えば92年
コンセンサスを認めるか認めないかだけで、「現状維持」という点では同じだ。
中国との距離が台湾の命運を左右する。離れれば離れるほど、台湾は自立化に向かう。停電問題
で支持率が下がる蔡英文総統にとって、呉敦義氏の存在は不気味だ。与党の民進党も野党の国民党
も、来年11月に行われる六大都市の首長を含む統一地方選挙に生き残りを懸けている。
台湾の国民党大会、中国共産党から祝電なし
【日本経済新聞:2017年8月22日】
【台北=伊原健作】台湾主要紙の自由時報は22日付で、20日に開かれた台湾の最大野党・国民党
の党大会に中国共産党からの祝電が届かなかったと報じた。党大会で主席に就任した呉敦義氏は、
中台統一志向が強かった洪秀柱・前主席の路線を修正。中国との距離感を前総統の馬英九氏と同程
度に戻した。共産党は民主進歩党(民進党)の蔡英文政権を切り崩すため国民党を活用する構え
だったが、呉氏の国民党に不満が生じているとの見方がある。
これまで主席が交代する節目の国民党大会では、共産党は必ず祝電を送ってきたという。呉氏が
党内の主席選に当選した際には祝電を送ったが、従来のように敬意を表する二人称を使わず、洪氏
との扱いの差が目立っている。