者会見し、その意義について「常態化の第一歩」となることを強調、また、会談の目的は現状維持
だと述べた。さらに「会談は次の選挙のためではなく、次世代の幸福のために行う」と耳障りのい
い言葉を並べた。
しかし、元中日新聞論説委員で台北支局長をつとめたジャーナリストの迫田勝敏氏が指摘するよ
うに「馬政権は会談で協定を結んだり、共同声明を発表しないとしているが、中国側の求めで台湾
の針路を拘束するような密約などをすれば、来年の政権交代後に大きな問題となる」(11月5日
「中日新聞」)心配がある。
そこで、迫田氏は「中国が密約を盾に実行を迫れば、台湾人の反中感情がさらに高まることも予
想され、会談内容によっては、国民党にとっても中国にとっても一つの賭けになる」と指摘してい
る。正鵠を射た指摘だろう。馬氏は「会談の目的は現状維持」と平穏を装っているものの、やはり
これは台湾の将来を左右しかねない危険な「一つの賭け」だ。
迫田氏が指摘する「台湾の針路を拘束するような密約」を突き詰めると「台湾を中国に売り渡
す」という表現にもなる。王明理・台湾独立建国聯盟日本本部委員長がそれを杞憂し、以下の一文
を表明している。
国民党よ、ついに台湾を売り渡すのか 王 明理(台湾独立建国聯盟日本本部委員長)
【台湾の声:2015年11月4日】
11月7日に総統・馬英九と中国の国家主席・習近平がシンガポールで会談すると台湾総統府が発
表した。
日本のメディア報道が言うような、“首脳会談で「一つの中国」を中台交流の基礎として確認
し、これを認めない民進党をけん制するとみられる”というような甘いものではない。
1895年から1945年までの日本統治下で、未開発の台湾島は近代社会へと変貌を遂げた。その宝の
島を、わがもの顔に占領したのが中国国民党で、台湾人は我が家を乗っ取られた被害者である。
中国人による虐殺、戒厳令下の行動と言論の自由剥奪、「中国人化教育」に対して、台湾人は少
しずつ努力して民主化に成功し、やっとの思いで、台湾人が政権を担えるまでにもって来た。来年
の総統選挙で民進党の蔡英文女史が総統に選出されれば、台湾は新しい歴史の幕を開ける。
それを嫌う中国国民党の馬英九(総統)と中国共産党の習近平が、民主選挙の前に強引に台湾の
運命を決めようと考えている。
台湾に70年間お世話になっておきながら、中国国民党は、相変わらず、台湾民衆の幸せを考えて
いない。彼らが一番に考えているのは、党の利益、中国人の幸せなのである。
どう考えても、国民党の生きていく場所は、もはや台湾にしかないはずである。他者を排除する
中国人の激烈さは、国民党なら一番分かっているはずである。かつての内戦の折の容赦ない殺戮、
文化大革命の時の大虐殺、チベット民族、ウイグル民族を殲滅しようとしている現在の共産党の狡
猾な手段。国民党よ、それらを見てもなお、まだ、中国に未練があるのか。なぜ、温厚で優しい台
湾人をこそ、自分たちの同胞として大切にしないのか。
台湾を中国に売り渡す権利は今の馬英九にはない。あってはならない。4年前の総統選挙の際、
多額の賄賂と言葉巧みな表現で当選を果たしたが、現在では、馬英九を自分たちの代表として外交
を任せる気持ちは台湾人には皆無である。むしろ、台湾人の利益に反する行動をしてきた馬英九に
大反対するものである。
なお、各メディアは「1949年の分断後初の歴史的中台首脳会談」と書いているが、分断したの
は、中国人同士の話であり、台湾人とは関係のない話であったことをもう一度、主張しておきた
い。